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弁理士報酬制度に関する調査と考察
要 約

 弁理士に特許出願等を依頼をする場合には,出願人は弁理士の労働量に見合う報酬を支払う必要がある.この弁理士報酬が適正な水準でない場合は,明細書や中間手続の質を低下させる可能性が高い.したがって,現行の弁理士報酬制度がどのように運用されているかを調査し,現行制度に問題点がある場合は弁理士会や行政側が何らかの改善策を講じる必要がある.本研究の目的は,上記問題点の調査と改善策の検討である.
 現行制度における最大の問題点は,特許事務標準額表に基づく定額料金制を弁理士の大多数が採用していることである.近年の明細書は技術内容が厚みを増す傾向にあり,定額料金制の採用は,弁理士事務所の健全な経営を阻害する危険がある.弁理士会は定額料金制に代わる報酬制度として従量又は時間チャージ料金制の導入を検討しているが,新制度導入に対して危惧を抱く弁理士は少なくない.
 本研究では,弁理士会及び複数の弁理士事務所を取材して意見を収集し,弁理士会報告書等から統計データを収集した.上記意見及びデータに基づいて,事務所の収支に基づいて報酬単価を決めるべきだという議論と,報酬単価を引き下げるべく経営努力をすべきだという議論とを展開する.さらに,弁理士事務所が将来も適正な利潤を確保し,弁理士業界の質を向上させるための方策について検討をする.これにより,明細書や中間手続の質が向上するならば,行政側が受ける利益も大きくなると期待される.

【目 次】

1.弁理士報酬制度とは             ・・・・  1頁
2.現行の弁理士報酬制度の課題         ・・・・  2頁
3.新しい弁理士報酬制度のあり方        ・・・・  3頁
4.弁理士事務所の収入             ・・・・  4頁
5.弁理士事務所の支出             ・・・・  5頁
6.将来の弁理士業務を確保するために      ・・・・  6頁
  まとめ                   ・・・・  7頁
  参考文献・インタビュー           ・・・・  7頁
  別表1:特許事務標準額表          ・・・・  8頁
  別表2:経営形態別の弁理士事務所比較    ・・・・  9頁

 なお,本報告は平成9年1月時点での弁理士制度に関する研究報告であり,その後の制度改正,制度改正提案については一切考慮していない.

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