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ミュージカル作品紹介(第202回)
ミュージカル 出島
■鑑 賞 日 平成12年11月26日(土) マチネ
■劇 場 名 アートスフィア(天王洲アイル)
■料  金 全席指定S席�,600円(JCB貸切料金)

■原  案 小説「夢暦 長崎奉行」(市川森一作)
■脚  本 中島 かずき     ■演  出 鵜山 仁
■美  術 妹尾 河童      ■音  楽 甲斐 正人,渡辺 忠士
■作  詞 竜 真知子,渡辺 忠士■振  付 前田 清実
■殺  陣 渥美 博       ■照  明 山口 暁
■音  響 山中 洋一      ■衣  裳 牧野 純子
■ヘアメイク 直江 広武     ■音楽監修 仲條 富美男
■歌唱指導 楊 淑美       ■方言指導 湯屋 敦子
■邦楽指導 本條 秀太郎     ■監  修 池田 道彦
■舞台監督 津田 光正      ■制  作 小池 義圓,須川 晴夫
キ ャ ス ト
お陽    (木の実ナナ)    りん    (一色 紗英)
遠山金四郎 (山本 太郎)    権之助   (石井 一孝)
ドゥフ   (渡辺 忠士)    ワルデナール(三木 敏彦)
速水    (若松 武史)    服部    (山谷 初男)
貞助    (植本  潤)    たみ    (山本カナコ)
遠山影晋  (近藤 正臣)    彭城    (本田 修司)
浮舟    (植田 チコ)               ほか
ス ト ー リ ー
 長崎にやってきた無頼人金四郎。薩摩藩士に絡まれたりんを助けたことから、りんの兄権之助と彼の語学塾生や、遊女お陽らと関わりを持つようになった。長崎の出島には、もう三年間もオランダ船がやって来ず、代わりに薩摩藩が抜け荷をやっているという噂だった。苦悩を抱えるオランダ商館長ドゥフを元気づけようと、金四郎達はオペレッタを見せて元気づけようとする。そこへ外国船が2隻やってきたが、実はオランダ船を装うイギリス船だったのだ。
 オランダ以外の外国船は打ち払わねばならない法度であり、その場合は長崎を戦禍に巻き込むことになる。金四郎はイギリス船長を恫喝して、最後までオランダ船と偽るよう策を巡らした。そこへ薩摩藩士服部らが暗躍し、長崎奉行影晋も動き出す。金四郎は影晋の息子だが、家を飛び出して4年も経つ・・。
コ メ ン ト
シナリオ 少し唐突な展開もありましたが、テンポよく進む分かりやすいストーリーでした。娯楽性も盛り込んであり、見疲れしません。劇中劇は、もう少し何とか成ると良いのですが。
原案は商館長の残した記録に基づいたといい、推測を交えながら整理されているようです。
キャスト 子役に至るまで演技派が揃っています。TV系・映画系・芝居系・ストレートプレイ系・ミュージカル系と多種多彩なキャスティングであります。
ナンバー 賑やかで面白いナンバーがありました。フィナーレと「夢・日本・長崎」がお奨めです。「長崎ぶらぶら節」は民謡だとのことですが、少しインパクトが弱かったと思います。
ステージ 後方に障子をイメージしたような半透明のスクリーンがあり、常時は長崎の絵地図ですが、後方のカラーイメージと重なって色々な絵が投影されました。手前の紗引きには出島の絵があり美しいです。舞台手前が少し張り出して欄干風になっており、役者が腰掛けるなど見せ場に遣われていました。巨大な桜が圧巻で、遊郭部屋や宿屋・商館・権之助宅・イギリス船などが舞台を走り回り、素早い転換をしていました。
衣裳は総じて派手で、随分と金を掛けています。セット全体でも掛かっているでしょう。オペレッタの衣裳など多彩で目を楽しませて呉れます。バックミュージックが大きすぎ、マイク音声が相対的に小さいのが唯一の難点でしょうか。
演 技 力
木の実は、若々しい動作でキビキビ動いていました。ちょっと遊女らしさに欠け、啖呵の迫力も今ひとつだったのが残念です。一色は予想よりも幅のある演技で、よく計算のできた芝居を見せます。舞台では心持ち存在感が不足した印象です。植田山本の演技も輝いていました。
近藤は文句無しに上手いです。トンガリヘアーが何とも言えませんが、険しい目つきから優しい眼差しに切り替わるなど絶妙です。存在感があり、惚けた演技も良いです。若松の毒がある演技や、見事な表情作りに味があります。山谷の飄々とした悪役も楽しいです。石井は珍しく体当たり演技でしたが、少し目線が泳ぎ気味。植本の女形も愉しめました。
舞台は初経験だという山本は、何となくぎこちなさが目立ち、オーバーアクションや間の悪さが目に付きました。かなり惜しいです。
歌 唱 力 木の実は、もっとパワーのある歌い手だったはずですが、少し弱々しさがありました。女声では真樹が目立ちましたが、他とのバランスで悪目立ちしました。子役達のコーラスは綺麗なハーモニーでしたが、全体での混声コーラスは調和が保てていませんでした。石井は「長崎は今日も雨だった(英語バージョン)」で熱唱し、違ったキャラクターが見えました。
ダ ン ス 色々なバリエーションは愉しめましたが、全体としての纏まりは今ひとつの印象です。木の実の舞踊はそう誉めるほどになく、遊女達のダンスは技にバラツキがありました。山本の絡んだチャンバラは、間合いとテンポの悪さが目立ちました。腰が引けていた印象で、これも惜しいです。
総合評価 キャストやセットに金を掛けている割には、お得な作品でした。長崎弁や薩摩弁を駆使していましたが、本場長崎で10回公演を打って来たという珍しい作品でもあります。和洋折衷という大胆な演出で、娯楽性も前面に出て面白かったです。
一番気になったことは、スニーカーを履いているキャストが多かったことです。いくらダンスを踊るとはいえ、遊女の着物に蛍光色スパッツやナイキシューズはいかがなものでしょう。木の実らベテランは草履でしたが・・。
上記コメントはポン太の主観&独断に基づいています
なお、評価ランクはポン太の五つ星を参照ください
ア ク セ ス

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