第175回の続きです。二度目の「異国の丘」を観てきました。石丸さんと保坂さんの歌唱は抜群で、芝居も良いです。NYの回想シーンでは、楽しいダンスシーンがあって、心楽しく成りますが・・。
伸びないチケ販
予想以上にチケット販売の成績が良くないようです。さすがに年内の販売は順調で、売り切れている公演もありますが、年始のチケットは売れ残りが目立ちます。さすがに危機感を持ったものか、「ご紹介キャンペーン」なるものを始めています。
観客に配られるチラシと一緒に、「ご紹介カード」があります。このカードを記入して知人に渡し、その知人が2枚以上のチケットを購入してくれると、紹介者と購入者にもれなく「図書カード」を呉れるというものです。ロングランと宣伝した手前、チケットのディスカウントもできずに、苦肉の策というところでしょうか。
たしかに戦争物を扱った作品としての劇評などは良いようですが、これまでのブロードウェイ系の四季作品に親しんだ客層からは、期待はずれとの声も聞こえてきます。慶太さんの思い入れがある戦争物ですが、どこまでお客様を繋ぐことができるか・・。
回想シーンは面白い
NY時代の回想シーンについては、華やかさがあります。石丸演じる九重、保坂演じる愛玲は、ともに見事な歌唱力を持ち、力一杯せつないラブソングを歌い上げます。演技力も抜群にあり、見応えのある芝居が展開します。またアンサンブルによるダンスにも、当時のアメリカらしさを印象づける楽しいものがあります。
しかし主題であるシベリアは・・暗くて重たいストーリーです。冒頭から始まる重い重いシナリオは、終始圧迫感を与え続けます。重苦しいストレートプレイが淡々と綴られていますが、ここに伝えたいメッセージがあるために、容赦なくエピソードが繰り出されます。少しは世の中に知られたシナリオであれば別ですが、なかなかTV等でも取り上げられなかった「事件」が題材であるだけに、厳しいです。
おそらくは重いストレートプレイでは保たないと配慮しての回想シーンなのでしょうが、あまりに空々しく繋いである上に、作り物めいたシナリオとのミスマッチが引き立ちます。普通はラストで帳尻を合わせるものですが、わざわざ九重の殺害(死亡)シーンを入れてあり、フィナーレの一曲では埋め合わせできていないでしょう。
観劇レポートは追って掲載しますが、ミュージカルとしての評価は厳しくなります。まずシナリオは実在の人物を題材としていますが、そこで現れるエピソードほかは寄せ集めの感があり、事実に忠実ではありません。九重の死についても臆測の面が強く、作為的な結末が気になります。
ストレートプレイとしてはともかく、四季のミュージカルレパートリーに加えてしまったことには失敗があるような気がしています。
|