ミュージカル の 勲章

ミュージカル作品に与えられる著名な賞と言えば、トニー賞ですね。これまで作品の受賞歴云々に触れる機会が無かったので、ここに書いておこうと思います。

トニー賞

映画界で言えばアカデミー賞に匹敵するのが、ブロードウェイのトニー賞です。発足は1947年、ブロードウェイの演劇関係者が集まって毎年6月に選定しています。近頃では授賞式の模様がTV放映されたりもしていますので、ニュースでご覧になった方もあるでしょう。トニー賞は、いくつかの部門ごとに授与され、現在は「作品賞」「主演男優賞」「主演女優賞」「助演男優賞」「助演女優賞」「演出賞」「リバイバル賞」「振付賞」「衣裳賞」「舞台美術賞」「照明賞」「脚本賞」「スコア賞」「特別賞」という感じになるようです。

12人いる選考委員が受賞候補をノミネートし、これをブロードウェイ関係者の数百人が投票することで決定されます。大人数での選定ではありますが、そこに劇場関係者の恣意性が入るのは仕方なく、かつて有名作品でも無視されたモノが結構あるそうです。豊作の年と不作の年のギャップも激しいと言われますが、選定作はそれなりに佳作であるようです。

トニー賞は元々、演劇界の発展に寄与した女優の名を取って「アントワネット・ペリー賞」と名付けたものの、親しみにくいこともあってか、彼女の愛称「トニー」を冠するように変わったそうです。ニューヨークには、トニー賞のほか、オビー賞(オフ・ブロードウェイ作品が対象)、NY演劇評論家協会賞、ピュリッツァー賞(演劇賞)など権威のある賞が多いようです。

オリヴィエ賞

ロンドンのウエストエンドにも同様の賞があり、こちらはオリヴィエ賞です。バレエやオペラも対象に含み、ウエストエンドで上演される全パフォーマンスが対象です。受賞部門はトニー賞と似たような感じですが、いくぶん少な目のようです。業界が広いこともあってか、ミュージカルファンの評価とは異なるケースが多いと聞いています。芸術的価値と面白さは違いますから・・。

オリヴィエ賞の起こりは、1976年の「ウエストエンド劇場協会賞」で、トニー賞よりは歴史が浅く、1984年に名優ローレンス・オリヴィエの名を冠することに変わったそうです。選考委員の半分に、一般の劇場ファンが加わるというユニークさもあります。

日本は・・?

翻って日本では、どうでしょう? 劇場街が無いという理由もありますが、都内だけでも年間1,000を越える演劇作品が上演されているのですから、何らかの賞があっても良いような気がします。新聞社などが授与する賞はありますが、ミュージカル界を代表する賞は見あたりません。ミュージカルで言うならば、観客動員数の大部分が大手劇団に独占されていることも理由にあるでしょうし、スポンサー達の思惑も大いに働くことでしょう。

トニー賞やオリヴィエ賞並みとは言いませんが、日本のミュージカルにも業界を代表する賞が作られても良いのでは無いでしょうか? とりあえずは業界人を広く集めた団体を作り(恣意的でないものを希望)、そこにスポンサーを募り、色々と試みてみても良いのでは無いでしょうか? 賞の権威が高まれば、日本でもTV放映されるでしょうし、多くのスタッフやキャストにも励みになると思います。

今回のコラムを書くに当たっては、西日本新聞社の萩尾さんの「ミュージカルに連れてって!」(青弓社発行)を参考にさせていただきました。ミュージカルに興味を持ち始めた方に適した入門書ですので、ご一読をお奨めします。

  • 演劇界で権威のある賞に「菊田一夫演劇賞」があります。2000年までに25回授与されてきました。菊田氏は、東宝で初めて輸入ミュージカルを成功させた演出家ですね。
  • 平成13年4月に、「日本映画批評家大賞・ミュージカル大賞」が新設されたそうです。同大賞は10周年を記念し、映画を原作としてミュージカルにも賞を与えることにしたそうです。第1回受賞作品は、劇団四季の「ライオンキング」でした。
  • 平成13年3月に、「松尾芸能賞演劇優秀賞」を劇団四季の加藤敬二氏が受賞したそうです。ミュージカル分野での受賞は珍しいそうです。