札幌へ出かける機会があり、夜の薄野(すすきの)を彷徨ううちに、聞き覚えのある劇場を発見しました。札幌道頓堀劇場、通称「道劇」であります。当コラムにはそぐわない●トリ×プ劇場ですが、ダーティなイメージを持っていたス▲リッ★が、意外にエンターテイメントであることを知りました。
キャッツを巡るトラブル劇場
道劇は、10日サイクルで演目を変えるそうです。ポン太が観たのは、20世紀最後のサイクルで、クリスマス調。女優が入れ替わり立ち替わりステージショーを観せ、息抜きにバカバカしくて可笑しいショートコントがありました。終盤の二本がストーリー物で、「キャッツアイ」と「竹取物語」と題する作品でした。
11月には「ザ・キャッツ」という作品を上演したそうです。昨年にも「猫たち」というパロディーを出し、劇団四季と物議を醸したと聞いています(いつかのコラムで書きましたね)。四季はキャッツのイメージが下がることを懸念して申し入れしたそうですが、結局スケジュール通り演じきった強者劇場でもあります。
今回観た作品は、いずれも無言劇でした。それだけに女優の質を問われるわけですが、とくに竹取物語の方は、優れものでした。まず目線が定まっていて真剣、ポーズもよく極まり、演技が半端でありません。何よりも女性が裸を見せるのは一瞬で、大部分が芝居に割かれているのが驚きです。主役は、全国区のコンテストで優勝したほどの演技派であるとのことでしたが、相方も良い芝居でした。
体を張った名演技
ストーリー物とは別にある、ショーもなかなか面白いです。こちらも女性が裸を見せるのは終盤の一瞬と言って良く、いろいろな衣裳で踊りを披露してくれます。大体が4〜5曲で20分程度のステージですが、モダンダンス・パントマイム・日本舞踊・ピエロの手品・バトン技と多種多彩な出し物です。曲が代わるたびに衣裳を代えたり、ダンスを変えたりする女優もあり、ぎこちない人もありますが、上手い人は非常に上手いです。
何しろ、カネを稼ぐためにステージに上がっているため、演技に妥協がありません。衣裳は自前持ちで作るそうで、おそらく芝居や踊りの練習も自腹でしょう。足は高く上がりスラッと伸び、体は柔軟で弾力性のある動きを見せます。正直に言えば、中堅クラスのミュージカル劇団の作品で、主役が張れるかも知れないレベルです。変に媚びるようなところもなく、それでいて拍手は上手に受け、スケベなオヂサン達を盛り上げる努力を見せます。
やはり体を張って見せるショーというのは、違うのでしょう。芸の上手下手よりも先に、真剣さという要素が大きな意味を持つのだと思います。ステージから外されてしまえば、食いっぱぐれるわけですから、大変ですよね。道劇はプロパーの女優を中心に組んでいて、独力でステージを作っているそうです。競争も激しいのでしょうが、楽しそうに元気良くいい味がありました。
アングラに、エンターテイメント
とはいえ、やはりアングラの世界であります。多くのお客様から観れば、ステージの大部分は客を焦らせる手段に過ぎません。裸ばかりを延々と見せられても食傷気味になるでしょうから、敢えて芝居やダンスが挟まれているのでしょう。その付け合わせ的なところに妥協を示しておらず、エンターテイメントとしての価値を追求する努力は高く評価できますが、陽の当たるショービジネスとは違っています。
あえて難を言うとすれば、バックミュージックの選曲でしょうか。ミュージックは聞き慣れたジャズやポップスが使われていましたが、ダンスや芝居とマッチングしていませんでした。さらに言えば、ダンスのリズムとミュージックのテンポは全くリンクしていません。ミュージカルと違って歌唱はありませんが・・・やはり演目とミュージックはリンクして欲しいものです。
そうそう。お客様には若い女性も何人かいました。ビール片手のオヂサンも多かったのですが、カップルで来て真剣な眼差しでダンスを見ているお兄さんもありました。大入り袋を置いて帰ったお爺さんもありました。え、ポン太は決まってるじゃないですか。えへへ・・。
何はともあれ、20世紀も終わりに差し掛かった師走の最中に。偶然とはいえ、面白いエンターテイメントを観ることができたのは幸せです。夢野様、楽しいクリスマス色紙をありがとう!
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