TRCの旗揚げ公演「アイルビー・オン・マイウェイ」でのお話です(作品紹介第80回を参照)。公演案内には90分と書かれてあったはずが、160分にまで膨らんでいました。シーンシーンの出来は良かったのですが、テーマが絞り切れていませんでしたね。
何が主題なのか
この作品。一番に訴えたいのは上海リルと呼ばれた女性の話です。歌謡曲でも歌われる彼女は謎の多い女性ですが、体を張って助けて貰った多くの人達の間で伝説になっているようです。本作ではリルと行動を共にしたホームレス達と、そのホームレス達に接触を持った女子高生たちの話がメイン(だったはず)。
パーツが多すぎる
女子高生たちがコントのオーディションに出たり、仲間割れをしたり、落ち込んだり・・・というシーンで長い時間を費やしています。またホームレスの一人が実は横浜の金持ち息子で、彼が市議会選挙に出るとかで長々とたわいない選挙運動の話が出てきます。そして人類の希望P250とやらの話を報道する無免許放送局の話、昔リルに救われたという高校教師の話なども登場します。
個々のパーツが一つの伏線という枠組みを越えて膨らみすぎているため、肝心のリルの姿が霞んでしまいました。勿体ない話です。
欲張らないで
もともとのベースは、市川東高校の演劇台本という触れ込みでした。しかし、当日のチラシには、さらに数本のベースが追加されていましたので、何か考えがあってエピソードを大幅に書き足したものと見えます。「旗揚げ公演」ということで、力みがあったのかも知れません。
何度か言ってきたことですが、どんなに個別のパーツが素晴らしくても全体として纏まりを欠いてしまうと、作品の質を下げてしまいます。とくに訴えたい点が分散してしまうと意味不明になってしまいます。欲張らないで主題に合わない部分はバッサリと切り捨ててくれることを望みます。
TRCに限りませんが、小劇場系では自己満足気味の脚本や演出が散見されます。仲間内はともかく部外者が観に来ることも計算して、分かり易く簡潔な作品作りを手掛けて欲しいと思っています。
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