前頁へ  ホームへ  次頁へ
経済の研究No.142
サムライ商法・内職商法

 本当は優先して書くべきレポートが溜まっていますが・・・少し寄り道して「サムライ商法」と「内職商法」について書こうかと思います。

■ サムライ商法
 一時期、強引な販売手法が問題化して、悪名を高めた商法です。サムライとは「○○士」と名付いた資格を指します。弁護士・税理士・司法書士・公認会計士など公的資格が中心です。
 この商法の特徴は、手紙や電話による勧誘です。手紙の場合、「貴方の経歴なら一部の試験が免除になる」などの売り文句で、同封の登録申請書などを送付させます。その申請書の送付を以って契約が成立したとして、身に覚えの無い教材が大量に送られてきて、巨額の請求書が回されてきます。また電話の場合、相槌での「はい」とか、断りの「結構です」とか、電話応対でのキーワードを契約成立の根拠だとして、教材などを送りつけてくるケースが多いです。
 サムライ商法の場合、業者は勧誘相手の職業や学歴を正確に把握しており、ある程度の地位や身分を持っていることを見透かしています。そのため、返品や契約解除を申し出ると法外な違約金を請求するなど、代金回収は容易と見ています。また、代金が支払われない場合は職場などに談判するなどと脅すこともあり、泣く泣く代金を払ったケースが多かったのです。
 現実問題として代金を払う必要は全くなく、そもそも契約自体が存在しないこと、所定の期間内に商品の引き取りを行わないなら勝手に処分すること、などを内容証明郵便で業者に通知すれば足ります。詳しい手続きは消費者相談センターなどへ問い合わせると教えてくれます。業者は返送して欲しいなどと求めてきますが、返送の義務もなく、最後まで引取りを要請することで足ります。しかし、後々の面倒を避けるには着払いでの返送には応じても良いでしょう。
 サムライ商法が賑やかだったころは、商法に嵌った顧客(つまり代金を支払った客)の名簿が業者間に流通し、第二第三の勧誘が来たりして多重被害を被るケースも目立ちました。要するにカモである名簿が高値で売買されていたわけです。その名簿から名前を消してあげると加入して金を巻き上げるケースもあったようです。怪しい手紙には応じないこと、電話ではあいまいな返事をせず毅然とした態度を取ること、など自己防衛が求められます。

■ 内職商法
 こちらは少し違いますが、副業を勧める怪しげな商法です。古くは、造花商法があります。造花作りは儲かるとして勧誘され、高い授業料を払って造花作りのノウハウを習ったものの、実際の受注量が少なかったり、手間賃の単価が極端に安かったりで、結局授業料分の回収がさえ覚束ないというものです。類似のケースでは、封筒作りや楊枝作りなどバリエーションがありました。
 その後、高い道具を押し売りする商法が出てきました。たとえば高級編機を買わせるものがあり、主婦や高齢者に売り逃げしてしまい、仕事を回さない悪徳商法です。造花商法同様に自宅でできることを売り物にしたもので、何人かの自殺者も出しました。少し前ならワープロ、最近ならパソコンを買わせるのが主流になってきています。型落ちしたパソコンに高価な周辺機器やソフトを抱き合わせ、さらに教材一式で100万円などという悪徳なケースも耳にします。
 その他、家庭教師の登録商法も内職商法の一種でしょう。貧乏学生をターゲットにして、「登録料を支払えば、自動的に家庭教師先を紹介する」という商法です。一科目あたりウン万円の登録料でも、高いバイト料に釣られて支払ってしまうケースが目立ちましたが、結局紹介の話は来ないでブッタクリでした。さらに悪質な業者は、提出させた履歴書を名簿業者に転売したそうです。お人良し学生の名簿は高値で売れますから。また、ホスト登録なんて商法もあったそうです。
 またスクール設立商法もあり、ビルオーナーにスクール設立を持ちかけ、生徒やスタッフを業者が集めると称して巨額の手数料を掠めるケースです。とりあえず塾などを開設して体裁は整えるものの、生徒が集まらなくてもオーナーの努力不足だなどとして手数料を返還しない強引なケースが目立ち、泣き寝入りを強いられた事例も多かったようです。
 甘い勧誘や美味い話には必ず落とし穴があることを意識すれば大丈夫です。勧誘業者の話をよく聞いて、そんな良い話がなぜ成り立つのか、支払う手数料等は妥当かどうか、を冷静に考えるべきでしょう。

■ むすび
 サムライ商法は、合格の難しいサムライ資格から、あまり耳にしない準公的資格や民間の認定資格へとシフトしているようです。強引な勧誘は少なくなりましたが、それだけに勧誘の技も洗練されつつあり、巧みな話術と法外ではない教材料で釣り上げる手法に変わっています。こうなると欺瞞だ詐欺だと言えなくなりますが、それだけに一層の冷静な判断が求められます。
 内職商法は、この不景気に割の良い商売があって、かつ自分に御鉢が回ってくることを怪しむべきで、まず疑って掛かるのが正解です。パソコン商法などは、素人の人間にプロ並み、あるいはプロ以上の労賃を払う相手がいるかどうか考えるべきです。また、安易に家族構成や収入・就職先などを教えないことです。さらにいえば、知人の紹介などもしないことです。金に成る商売に業者は飢えていますから、あの手この手を使ってきますが、欲に目を眩まされないで、そろそろ身を守ることに真剣になるべきでしょう。

99.10.05

補足1
 本文でご紹介した「サムライ商法」ですが、最近は対象となる資格が拡がっているため、「資格商法」と総称されるそうです。とくに「サムライ」と呼ぶ場合は、社会問題化した強引な勧誘商法に限定するのだとアドバイスを頂きました。
 ところで、資格商法については月刊誌WEDGE6月号が特集をしていました。その中で紹介される悪徳なセールストークとして、「○○審議会では優秀な人を優先して資格を取得して貰う特別枠を設けていて、貴方が選ばれました」「当社は試験出題者とつながりがあるので、不合格なし。合格すれば人材登録して高収入のアルバイトを紹介する」「○○講座が継続になっています。更新するなら×万円、終了するなら△万円です。どちらかに決めて下さい」「○○商法被害防止会です。入会金×万円でしつこい電話勧誘が止められます」など。出典は岐阜県警ホットラインだそうです。
 これらのトークに該当する場合は「悪徳とはお付き合いしません」と断りましょう。その前に、相手の住所や氏名、名簿の入手先などを問うことも有効です。

99.10.08

補足2
 サムライ商法や内職商法が横行するのは、この不況のせいですよね。一つでも有利な資格を取得しよう、小金でも良いからコツコツ貯めようと考えている善良な国民を食い物にしているのです。
 ただ注意が必要なのは、本当に公的資格が取得できたとしても、その資格で食えるかどうかは別ということです。合格率が低いことと、その資格が収入に結びつくこととには大きなギャップがあります。宅建・行政書士・弁理士・中小企業診断士・電気主任技術者などは、その人気に反して、直接仕事を得ることが難しいと聞きます。逆にクライアントを多く抱える事務所になら、無資格のままスタッフに採用される方が確率が高いとも聞きます。それでは、せっかくの資格が泣いてしまいますよね。

99.10.08

補足3
 類似の商法で就職商法というのがあるそうです。第151回第152回のネットワークビジネスとも関係がありますが、販売員という形にして商品を抱かせて、結果的に販売員に商品を買わせてしまう商法です。
 最近問題化した事例には「藍染苑山久」の和服モニター事件があります。主婦を「外交員」と称して高額の着物や貴金属を買わせ、ローン金利相当額を「給与」名目で支払っていたものの、その給与は実質的に主婦が支払う代金から自転車操業的に支払っていたもので、行き詰まって給与ストップと成りました。主婦側には巨額のローン債務が残っているようです。着物好きの主婦を当て込んだ商法で、300万円以上の残額が多く、1人で1,000万円という被害者もあると公表されています。
 価値が見合わない着物を掴まされたほか、着物現物さえ受け取れなかった被害者もあり、集団訴訟の方向へ向かうそうです。しかし、すでに経営的に破綻しているため損金の回収は難しく、クレジット会社との交渉に成るかも知れません。

99.12.17

補足4
 補足3に書いた「藍染苑山久」は、2月29日に自己破産を申請して、3月8日に破産宣告を受けた模様です。昨年12月8日から事実上の活動を停止していましたが、法的に破綻認定を受ける形になりました。
 負債総額は15億円と発表されましたが、未払いの「給与」は負債総額に含まれておらず、巨額の資金がどこに流れたのか全く解明できなくなって様子です。

00.03.25

補足5
 少し内職商法と違ってしまいますが、係争中だった「ココ山岡商法」で和解が成立したようです。ココ山岡宝飾店は、ダイヤモンドなど貴金属の「買戻し保証」と派手な宣伝で主婦の人気を集めて事業を拡大させていました。しかし不況に伴って、大量の買戻し要求が殺到して、宝飾店の経営的が行き詰まったものです。宝飾店は返済能力を無くしましたが、ローン契約は引き続き残ったために信販会社の責任が問われました。
 被害者のウチ8,800人が原告となった訴訟では、宝飾店と二人三脚でローン契約を奨めていた被告の信販会社9社が和解に同意しました。信販会社はローンの未払い金88億円の請求を放棄するとともに和解金18億円を原告に支払う条件で、裁判の原告に入らなかった被害者にも同条件で和解する意向を示しました。信販会社側は、法改正に伴うローン契約への向かい風を回避するために、和解を急いだ模様です。

00.03.25
前頁へ  ホームへ  次頁へ