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経済の研究No.124
長銀株式は、紙屑以下

 7月中に決定と言われていた日本長期信用銀行(以下、長銀)の売却先は、依然として決まらない様子です。手続上の問題などと金融当局は語っていますが、おそらく買収条件の折り合いが付かないのでしょう。長銀の清算を望まない政府としては、多額の引当金を持参金にしてでも売却(とは言わないでしょうね、売却は名目で持参金付きの丸投げですから)したい様子です。

■ 際限ない国有化の代償
 長銀の国有化は、多大な代償を国民に強いました。国有化当時の債務超過か否かという議論が空しいほどに、ダミー会社などに封印されていた巨額の不良債権が明るみに出て、兆円単位の血税がそそぎ込まれています。しかし行員には他人事、辞職した役員も何処吹く風、あまり自覚がないようです。
 こんな惨状の中で、劣後ローンの全額返済を実施した行政判断とやらは、訂正されないのでしょうか。第104回長銀国有化の結末」で指摘したとおり、片手落ちな投資家責任の問い方は納得できません。株主責任を問うた以上は、劣後ローンの出資者責任を改めて問うべきでしょう。役員退職金も返還請求ではなく、正式な刑事・民事責任を問うた上での賠償請求をするべきです。それでも発生した損失の1%も戻らないでしょうが・・。
 この上、持参金付きで売却する必要性は認められません。すでに健全な融資先は他行へ逃れており、流通やゼネコンなど問題融資先は債権放棄などで対応して清算してはいかがでしょう。リスクがあるから引当金という論法は意味不明です。リスクが回避されたら、引当金相当額は全額譲渡になるのですから、トゥーレイト・トゥービッグを怖れる時代では無くなっています。

■ 旧株主の権利は何処へ
 さて、長銀の旧株主が反攻の狼煙を上げるようです。勝手に国有化され、しかも弁済は一切なし、株主への説明さえもありませんでした。実は株式の弁済額ゼロ査定は官報で告示済みです。しかも告示と同時に株主の権利は失われたとして、株主名簿の閉鎖、つまり名義書換の停止さえ行われました。保管振替機構に株券を預けていて機構名義に書き換えられた株主は、名義さえも自分のものに変えられません。
 果たして、本当に株主の権利は消滅したのでしょうか。形式だけですが長銀の国有化は、長銀経営陣が金融監督庁へ金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(以下、金融再生法)に基づく申立をしたことにより始まりました。その経営陣の申立行為は、株主の利益に反する明確な背任行為です。背任行為によりされた申立は、法的に無効であるはずです。とするならば、国有化の事実を無かったことにできます。
 国有化が無かったことになっても、長銀の巨額損失は揺るぎなく存在しますから、残された途は自己破産だけです。唯一の選択肢である自己破産は旧来の株主の総意によって実現されるべきです。経営破綻の原因や責任をうやむやにしたまま、外資などへ売り払おうとする政府の暴挙を食い止める権利はあります。
 ところが今更、経営責任問題を蒸し返されて困るのは、政府です。ようやく長銀処理の目途が着き始めた中で、国有化無効などと騒がれるのは大変です。最終的に政府が勝訴するとしても、裁判となれば売却交渉は遠のいて清算に追い込まれるでしょうでしょう。是が非でも旧株主の訴訟提起は封じたいはずです。

■ 旧株主に権利放棄を迫る
 普通に破綻した企業の株券は、紙屑でも旧株主の所有物です。10割減資が確定している、三光汽船・東洋端子・リッカー・山一證券の株券は、すでに無価値ですが、形は留めています。ところが行政は長銀株主に権利放棄を迫っており、株券交付を含む一切の権利を放棄させる承諾書を書かせようとしているそうです。
 その承諾書のタイトルは「旧株主証明書・発行請求書」だそうです。私は現物を見ていないので「長銀株主の掲示板」から引用させていただきますが、「金融再生法第41号第1項に規定する旧株主であること並びに公告時に有していた旧株式数は下記のとおりであることを証明願います。なお、私は同法第39条第2項の規程により無効とされた同行の旧株券について、今後いっさい交付請求をしません」と書いてあるそうです。
 ものすごい文面ですね。紙屑となった株券を受け取る権利さえも、放棄させようという強権発動です。ちなみにこの承諾書への記名・押印を拒否することは可能でしょうが、当局の指導を受けた証券会社は、株券の引き渡しを拒否するでしょう。場合によっては、顧客の口座解約も辞さないのではないでしょうか。
 こうすれば大半の株券を塩漬けできますから、旧株主の権利確認の訴訟が提起されても勝てるという読みなのでしょう。しかし事実であれば、あまりに恥ずかしいことです。そもそも金融再生法が商法違反、民法違反、いや憲法違反である可能性が高いです。その議論をすっ飛ばして、株主が本来の権利行使をするのを妨げようと動くなど、まさに論外です。

 長銀の株式はほとんど旧来の大株主の手元に残っていません。大株主には、上場廃止直前に持株を処分するよう通達されていたそうです。それは2円まで急落した株価が証明しています。おそらく劣後ローンの償還は保証するとの裏取引もしたのだろうと思います。大株主である機関投資家による訴訟提起は回避されましたが、小口株主が集結し始めると牽制を始めたわけですね。名義書換の停止とも歩調が合っています。しかし、国民である株主の財産権をここまで踏みにじる権利が、行政には有るのでしょうか?
 上述の承諾書が実在するならば、それを作成した人間(組織)と、それを実行させている組織(人間)とを、明らかにする必要があるでしょう。いつから日本は資本主義であることを止めたのでしょうか・・・?

99.08.02

補足1
 本文で紹介した掲示板で、第104回の内容をご紹介いただきました。コメントも頂ければ幸いですが・・・。

99.08.02

補足2
 2日の衆議院予算委員会で、ようやく長銀と日債銀破綻の行政責任を認めたそうです。護送船団方式からの転換が遅れた金融行政の犠牲にしたことを深く反省している、と宮澤蔵相がコメントしたものです。金融機関を潰すのは国益でないと考えた行政をした、しかし個々の公務員に違法行為や故意があったとは思わない、ともコメントしたそうです。
 遅すぎるコメントにしては、今ひとつはっきりしないコメントでした。日債銀へ奉加帳方式での出資を求めたことについても、行政側の失政を認める形になったようですが、当時の関係者が出席しなかったため、うやむやのままに成った模様です。しかし謝るだけなのでしょうね・・・。

99.08.02
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