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経済の研究No.125 |
ディスクロージャー誌を拝見 |
銀行法第21条は「銀行は、営業年度毎に、業務及び財産の状況に関する事項を記載した説明書類を作成して、主要な営業所に備えおき、公衆の縦覧に供するものとする」と定めています。お客様が銀行の中身を知りたいと言えば、即座にディスクロージャー誌を見せられるように常備しておきなさい、という意味です。
■ 調査の目的
さて、そのディスクロージャー誌ですが、開示内容は各行横並びで面白みがありません。本当に客の要望通りにディスクロージャー誌を見せてくれるかどうか、が今回の目的です。今年度分が発行されていない6月中旬に調査してみました。
職場近くの各都銀の支店を一つずつ巡って行ったもので、複数の支店は調査していません。しかし対応がまずい支店があるということは、その銀行の指導が徹底していないという証左でもあります。
■ さくら銀行の場合
お客様用のロビーソファーに、週刊誌と混在した状態で常備してありました。店頭用なので必要なお客様は係員にお声掛け下さい、と書いてありました。ちなみに店頭用はビニール製カバーが掛けられ、痛みにくくしてあります。
早速フロア係を捕まえて「これを下さい」と言いますと、2分ほどで渡してくれました。その際、「お客様はお目が高い」とお追従も言われました。対応は今回の調査対象では一番優秀でした。
■ 三和銀行の場合
結構店内が混雑していましたが、フロア係を捕まえてディスクロージャー誌が欲しいと伝えました。フロア係は即座に窓口のテラーに頼みましたが、テラーはディスクロージャー誌を知らないらしい(オイオイ)。仕方なく役席に頼みましたら、「昨年度のものしかありませんが」とロッカーから取り出してくれました。
フロア係は役席から渡されたディスクロージャー誌を、両手で添えて渡してくれました。ひょっとして見て帰れと言うのかと思って聞き返すと、わざわざ銀行の袋に入れて渡してくれました。時間は5分ほど掛かりましたが、対応としてはまずまずです。しかし、テラーの教育をしておきましょう。
■ 東海銀行の場合
都内の支店ということもあるのか、店内はガラガラです。一角に資料スペースがあるので覗いてみると、5冊ほどディスクロージャー誌が積み上げてあります。注意して見ないと分からないので、お客様に見えやすい工夫が欲しいところです。
念のためにテラーに許可を求めましたら、「どうぞお持ち帰り下さい」と言われました。可もなく不可もなくという感じでした。
■ 住友銀行の場合
資料コーナーを覗いたところ、英語版ばかり置いてあります。中身は同じですが、英語版ではちょっと困りますね。フロア係を捕まえて日本語版が欲しいと言いましたところ、一緒に探して貰っても見つかりませんでした。
相談窓口の行員にも尋ねてくれましたが、在庫切れとのことでした。仕方なく「ミニ・ディスクロージャー誌」というダイジェスト版を呉れました。銀行のサービス内容や金融商品の一覧が出ているもので、Q&Aに応える形で財務状況などを開示しています。一般顧客にはダイジェスト版の方が便利ですね。
■ 富士銀行の場合
店内を物色しても見つからなかったのですが、「こんにちは、富士銀行です」と書いたダイジェスト版を発見しました。これを持ってフロア係に「ディスクロージャー誌が見たいのですが」と言ったところ、「それです」とダイジェスト版を指されてしまいました。
違うだろうと思いつつ、フロア係の不勉強を指摘しても仕方がないので、そのままダイジェスト版を貰ってきました。中身は住友銀行と同様で、サービス内容や金融商品の紹介があり、主要な財務情報が開示されていました。サービス内容は、手数料や個別の問い合わせ先など詳細で、これは便利かも知れない、と感じました。
■ 東京三菱銀行の場合
国道沿いの角地にある小さい支店です。昼時だったので、ATMの利用客でフロアが混雑していました。この支店は、ATMの行列がそのままカウンターの前まで並んでしまう構造です。お客様用のソファーも少ないです。暫く資料コーナーを物色したものの、数多い資料の中にダイジェスト版も見当たらないのでした。
フロア係も不在のため、カウンターのテラーを捕まえて要望を伝えました。回答は「ただいま大変混雑しておりますので、午後に改めてお越し下さい」とのことです。結局めんどうだったので午後には行かず、ディスクロージャー誌が在ったのかどうかも不明でした。しかし、後から来いというのは・・・どうなんでしょう。
■ 第一勧業銀行の場合
近くに2店舗ありますが、いずれも雑然とした感じです。資料コーナーも資料がバラバラで整理されていない状態でした。これは行風なんでしょうね、きっと。経済情報誌とか業界誌とかが見つかったので貰ってきました。あんまり資料を貰いすぎたので、ディスクロージャー誌も下さい、とは言えませんでした。
お陰で有用な情報をたくさん頂きましたが、良い資料も埋もれてしまえばゴミです。そのディスクロージャー誌がなかったのは、無くなったのに気付かなかったのか、それとも最初から置いていなかったのか、不明です。
■ あさひ銀行の場合
大手機械メーカーの本社ビルに入居している支店です。お客はいないので、フロアは広々としています。資料コーナーを物色するためにウロウロすると、カウンターから行員の好奇の目が向けられている感じで居づらいです。そのうち警備員が後ろに付いてきましたので、資料をいくつかガメただけで出てきました。
誰も並んでいないカウンターに直行しない客が怪しく見えたのでしょう。ちなみに資料は平凡な商品説明などでした。有用な情報は少なく、ディスクロージャー誌の類も見つかりませんでした。ディスクロージャー誌はカウンターに売れ残っていたかも知れませんね。
以上で今回の調査報告は終了です。株主総会も終わりましたから、9月頃には今年度版が出回ることでしょう。そうしたら、改めて各銀行を巡ってみようと思います。そのとき合わせて、銀行の対応なども再チェックしてみる予定です。
99.08.07
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補足1
独自の奇抜な商法で有名な城南信用金庫は、ATMの上にまでディスクロージャー誌を積み上げる大盤振る舞いぶりです。グラフや表・写真を駆使したもので、若干文字数が多いのが残念なところです。
またディスクロージャー誌には、「マンガでわかる城南信用金庫の経営内容」という付録が付いています。本文中のダイジェスト版に相当するものですが、Q&Aと合わせて1テーマごとにA4サイズ1頁に文字の詰まったマンガがあしらってあります。不良債権の債権分類やコンプライアンス業務の中身などがイメージで面白く描かれています。
99.08.07
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補足2
信用金庫大手の巣鴨信用金庫(東京都豊島区)は、ディスクロージャー誌を約5万の取引先へ配布するそうです。多くの金融機関が本文で紹介したように顧客の求めがない限り配布しない姿勢を示している中で、画期的であると紹介されています。
誌面はQ&Aや図解を多用したカタログ情報誌的な構成であるといい、1万円相当の景品が50人に当たる懸賞付きだという話です。しかし、そのコストは膨大です。1冊当たり500円のコストとしても2,500万円・・・いくら信用金庫大手でもこの低金利の時代に許されることなのかどうか。何となく経営陣の自己満足であるような気がします。
99.08.14
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補足3
#N度版も調査しようと思いましたが、読者の皆さまの反応が良くなかったので、調査は行っていません。その代わり、凸版印刷さんが、社内向けのIR資料用に作成したという面白いレポートを見つけましたので、ご紹介します。
(TOPPAN IR情報:http://mr.topica.ne.jp/ir/info/info.html)
00.03.25
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補足4
近頃はネットバンキングなども主流になり、銀行のホームページに開示される情報が豊富かつリアルタイムに成っています。都市銀行は、概ねディスクロージャー誌をPDF形式で公開しており、もはや本文にあるような調査の必要性も無くなったようです。投資家も預金者も、積極的にインターネットを使うように変わってきましたものね。
後は、無味乾燥で分かりにくいディスクロージャー誌を、どう工夫してごく一般の庶民にも分かる内容に変えていくかでしょう。紙資料を単にPDFで作るのでなく、用語解説を含めたリンク情報の充実や、統計等のデータのカスタマイズ・分析支援なども進めて貰えると良いと思います。「投資家様へ」というコーナーにディスクロージャー誌を置いているのでは、まだまだ不満です。
01.01.07
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