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雑記帳No.170
書籍の万引き防止タグ

 「究極の万引き防止」として、書籍の背表紙に磁気タグを埋め込む技術があるそうです。出版界では、書店での万引きを抑制するのに有効であるとして、導入に積極的であると報道されています。

 ビデオパッケージ等に取り付けられているものの応用で、より小型化して持続期間も長くなるように調整されているらしいです。ビデオやCDの場合は単価が高いために、面倒でも手作業でタグ付けしています。そのタグを機械で無効化するか、妨磁シールで無効化するかしているのが現状です。パソコンソフトの場合は、機械で無効化する方式が多いですが、それだけに出力が大きい(つまりシールで無効化できない)らしいですね。
 書籍でも、タグを付けている店があります。写真集や美術全集など、単価が高い商品を中心に扱う場合です。書籍を硬質のビニール袋に入れて、その内側にタグを滑り込ませるのが、見掛けるケースです。多くはレジで回収される方式になっています。たぶん、タグの値段が高いのでしょう。

 さて、背表紙に埋め込まれるとなると、どう変わるのでしょう。おそらく磁気で無効化する方式になるはずです。万引き防止が目的ですから、簡単に引き抜けない作りに成っているでしょう。妨磁シールは見苦しいです。どれだけハンディな機械を使うのか分かりませんが、一般書店で無効化する作業は面倒でしょう。コンビニや駅販売店等では、手が回らないかも知れません。
 しかし、小型店舗などで無効化をしない書店が出ると、大きな混乱を生じます。その書籍を持って、別の大型店舗に立ち寄った客は、万引きと間違われて捕まります。駅販売店のように剥き出しで買わされた書籍は、場合によって申し開きができない可能性もあります。大型書店でも、単品管理の徹底していない書店では、自店舗の書籍でないと証明することが難しいです(スリップと呼ばれる販売管理カードでは、無理です!)。お客様を不愉快にさせるのは、間違いありません。
 規格の問題もあります。書籍卸しは複数の業者がありますから、規格タイプが違ってくる可能性があります。取付位置や解除装置が違ったりすると、レジで混乱が生じます。統一規格や一社独占になると、タグの単価が高くなる問題があります。また年を経て改良されるでしょうが、売れ残り旧刊と新刊での違いも吸収できるかどうか、不明です。

 何よりも、価格の問題が大きいです。タグが導入されると、タグの価格や解除装置・検知ゲート等の設置費用が付加されます。もちろん全額顧客負担です。返品分のタグ代金も、販売分に載せる必要がありますから、相当額の上乗せになるはずです。解除装置や検知ゲートの費用を店舗負担とする場合は、中小規模店舗の経営が危うくなります。いずれも難しいです。書籍卸しの負担とは考えにくいです。
 コミックや文庫は、平均的な物価上昇以上に年々価格が上昇しています。上昇スピードが速まっている理由は、返本数の増加にあります。ろくに出版社で判断もしないで、玉石混淆の書籍を発刊しています。良本であっても、タイミングで売れ損なうことも多々あります。ブーム本を不必要に大量印刷してしまって、ブーム後に大量の返品を受けることもあります。悪本を減らし、在庫調整を柔軟に行い、返本を無くすることが先でありましょう。

 現実問題として、万引きによる被害額はバカになりません。しかし、その万引きを織り込んで商売が成立していることも、事実です。単価が安いから面倒なことをせず、とにかく売るというスタイルができあがっています。粗利も安くありませんので、顧客に面倒や負担を強いる前に、今の出版のあり方などを真剣に考えて欲しいと思います。
 万引きを防止するのは、ハードウェア充実でなく、モラル確立だと思うのは、私だけなのでしょうか。

01.05.15
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