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雑記帳No.152
チェリッシュ 〜 愛蔵

cherish:(他動詞)大事にする、可愛がる
     (語 源)仏語「cher(親愛なる)」


 本来の英語では、名詞的な意味は無いようですが、和製英語なのか「愛蔵」という訳が当てられています。子供時代、誰でも宝物を持っていたはずです。男の子は、昆虫とかロボットとか。女の子は、押し花とか人形とか。汚らしくても、見窄らしくても、お気に入りを肌身離さず持っていたりしたでしょう。長じるに従って、多くは捨てたでしょうが、まだどこかに大事に残っているかも、知れませんね。

 その後は、学生時代の写真とか、ラブレターとか、映画の半券とか・・・コレクションしていたりしませんか? 意識してはいないけれど、段ボールに想い出がぎっしり詰まっていたりするのでは、ないでしょうか。「ロマンティシズムは女性の特権」と言いますが、男性も結構ロマンティストであったりするのです。
 やがて社会人となり、お金が使えるようになれば、愛蔵の対象は、金の掛かるものに変わります。女性は洋服やクツ、男性はネクタイや腕時計。歳を取れば、さらに金の掛かるものに変わっていくようです。結局、私たちは何かを愛し、何かを大事にすることで、暮らしています。家族も愛し大事にする対象でしょうが、モノへの執着も濃いようです。
 もう少し昔の世代になると、お金に苦労してきた世代であるので、愛蔵にも金の掛からないものが選ばれています。お父さんの盆栽(けっこう掛かるのですが)、お母さんのガーデニング(同じく)、お祖母ちゃんの綺麗な包装紙・・。粗末な中に、一反の大島紬や、味わいあるグイ呑み、銀細工の簪などなど。少しばかりの贅沢が、隠された楽しみであったりもします。

 最近の若い世代にとって、愛蔵の対象は何でしょうか? 一人っ子が増えて、子供の頃からモノに不自由しない彼らは、あまりものを大事にしないのかも知れません。高級なゲーム機やソフト、あるいはゲームセンターに通う小遣い。有り余る金を娯楽に費やすことができる彼らにとって、愛蔵の意味は薄いかも知れませんね。友人を作ることが苦手で、上辺の付き合いが増え、親友を得難い中では、彼らとの想い出も大事にはしないのでしょうか。
 少子化の時代と言われて久しいです。高齢人口も増える中、多くの家族から愛され大事にされてきた子供達は、多すぎる愛情にウンザリし、実際は十分な愛情を受け取れないと言われています。自らが愛蔵品である一方で、自らは愛蔵する対象を持たないとも言われます。何かを大事にすること、何かを愛すること。それはモノでも、人でも・・良いと思うのです。

 チェリッシュ。それは、いつか受け継がれなくなる、悲しい習慣なのかも知れません。せめて、私だけでも、チェリッシュしておこう。
01.02.03
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