随分と昔の話なので、どれくらい普及していたのか分かりません。バブル華やかなりし頃、企業が有給休暇を買い上げてくれる制度があったそうです。通常、新入社員の有給休暇は15日、これが年を追う毎に増えて、最大20日であります。ところが、定期的に有給休暇を消化させてくれる職場などなく、まして突発的長期の休暇など許されません。そのために休暇を使い余す社員が多かったようです。
銀行や証券、それなりの大手企業では、労働組合などの手前もあって、休暇を取得させられない社員の休暇を、金銭で贖うことを始めました。単価はバラバラだったようですが、1日1万円としても10日で10万円です。年末にちょっとした海外旅行が楽しめたそうです。ところが御用組合が「けしからん制度だ! 止めてしまえ」と騒いで、廃止になった企業が相次いだとか。おかげで休暇が取りやすくなったとは聞かない、陰謀であります。
我が社は、前年の休暇を20日まで繰り越せるようになり、数年が経ちます。繰り越せる休暇が増えたと喜んだのもつかの間、翌年以降多くの休暇を捨て続けています。週末にはスキーやテニスを口実に、早退や休暇を取得する同期を後目に、ブツブツ残業生活です。せめて、買ってくれれば良いのになぁ、とぼやいてみたり。
後輩のB君。年次繰り越しゼロで、夏も終わると休暇残り5日ばかり。少ないことを嘆くものの、それが周囲に与える影響には気が回らないらしいです。居ても居なくても損得無い彼に、私の休暇を使わせるのは無理なのかな、と思案してみました。
例えば、私が休んだことにして、彼の仕事を代理でこなす。彼からは1日1万円を貰って休ませてあげる。休暇を20日売れば20万円。もう一発NYへ遊びに行ける金が転がり込みます。B君としても、見栄があるから1日3,000円なんかに値切れませんし・・ちょうど良いかもね。休養か金か、社員は好きな方を貰って、仕事に励むと。
いっそ大規模な売買を手がけてみるか。企業は、食券のように毎月限りの休暇券を配布する。月1枚で12枚。あとは夏期休暇とGW休暇で5枚。残り3枚は年間フリーとする。無記名の休暇券なので、ある月に集中的に休みたければ、同僚に別の月の休暇券と変えて貰ったり、フリー券と組み合わせて休める。休まないような月の休暇券は、あらかじめブローカーに売却してキャッシュにする。夏期やGWシーズンは、家族のために、相場の高い休暇券を買ってくる。。。
ブローカーは、チケット屋として社内で取引に応じ、適正な価格でお客の要望に合った休暇券を提供する。在庫券は期限切れもあるので、見切り売りもする。利益の出そうなシーズンは、事前に安値で買いあさる。かくして社員は休暇を有効に利用し、企業の懐も痛まない。月に半分も出勤しないバカもいるが、実績を上げなければクビにするだけ。SOHOも可。
うんそうだ。休暇券の先物取引も導入しよう。5月物の休暇券を1枚7,000円で信用買い。好天気が続いて値上がりすれば30,000円の高値で売り抜ける。元手もわずかでボロ儲け。でも換金に走る社員が増えると暴落し、1枚3,000円の安値で破産。サラリーマン人生は冒険だ。
でも、それは空想。結果的に、B君が遊び回っている最中、ポン太一人で仕事をするほど虚しい話はない。やはり休暇は、自分で使ってこそ価値がありますね。
00.10.17
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