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雑記帳No.089
お気に入りのベンチ

 「私にはお気に入りのベンチがあるんです」と知人に話をしたら、怪訝な顔をされました。某サッシメーカーのが好きだとか、営団地下鉄ホームのが好きだとか、そういう意味ではなく、「私の好きなスポットにあるベンチ」がお気に入りなのです。

 それは2年ほど前、霞が関ビルのテラスに設けられました。職場から歩いて行ける距離に霞が関ビルはあります。最近は内装・外装の改修に余念がないようですが、殺風景なテラスにグリーン(鉢植えの樹木)やテーブル&椅子、分別用ゴミ箱、そしてベンチを集中して設置しました。ちょっとしたコーヒースタンドも出ていますので、憩いの場ですね。
 春秋の昼休みにはポカポカ陽気で良いスポットなのですが、この時分はビジネスマン・ウーマンで一杯で、1人でベンチを占有できません。それに私が好きなのは、今時分の夕方なのです。少し寒さが増してきて、普通の人はベンチに座ったりしないような時間帯に、1人で占有するのが好きなのです。良い風が吹いてきますし、照明もほどほどに落ちてきて星空が綺麗です。髪を風になぶらせてボーッとしていると、頭がすっきりします。

 それと、ここの風は特別なのです。新宿や池袋にあるようなビル風だろうと言われるでしょうが、違うのですよね。前回に書きました皇居から湧き出る風なのです(笑)。なにか得体の知れない力が漲っているようで、見えないパワーが得られる気がするのです。皇居から桜田通りを吹き抜けてきた風は、大蔵省と文部省の間、教育会館の駐車場、そして外堀通りなど複数の経路から集まって、テラスに吹き溜まりを作るのです。都会にあって珍しく、清涼な空気が良いのですよ。
 お気に入りのベンチは、テラスの正面階段の踊り場にあるベンチです。左右の階段と正面階段から吹き込んでくる風がカクテルを作って、得も言われる力が感じられるのです(まあ、半分冗談に聞いて下さい)。四大元素論や五大元素論に基づけば、風は力の源なのだそうですね。普通だと「風は寒い」と感じますが、ちょっと感じ方を変えてみると「風は気持ちいい」と成りますよ(これは本当)。そして何となく元気になります。

 このベンチに座っていると、一日あったどんな悩み事も疲れも、全部洗い流されて、新しいエネルギーが補給されるように感じるのです。近頃調子の悪そうな内臓の疼きも、もう1年以上続いている原因不明の微熱も、就職以来改善しない万年肩こりも・・・このベンチに座っていると、症状が軽くなるような気がするのです。
 でも、自宅に持って帰ったら、意味の無くなるベンチですものね。毎日通うわけにも行きませんし、どうしましょうか。

99.12.04
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