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雑記帳No.081
完全まにゅある

 ちょっくら遠征したついでに、古本屋で太田出版の「完全自殺マニュアル」(鶴見済・著)と「完全失踪マニュアル」(樫村政則・著)を買ってしまいました。話題の本ということで、半額でした。以前の安相場のときに買っておくべきでしたね。東京都が発禁処分(までは言ってないか)にしたばかりですから。

 自殺マニュアルの方は、とても記憶にあります。初版は1993年7月で、当時つくば市内の書店でアルバイトをしていたのです。それにしても、よく売れましたね。入荷すれば速攻で無くなりますし、書籍注文もビシバシで、学生さんの人気が高かったのを憶えています(注文・入荷予約には氏名・住所・電話番号を聞くのですが・・)。また内容が内容なのでビニール本として売っていましたが、それでも口コミで売れていくのですねぇ。
 ちなみに増版に次ぐ増版・・・私の手元にあるのは、1996年1月の第61版(!)であります。世間にあふれるトンデモ本の中でも、超人気ロングセラーです。本書が問題化したのは、当時相次いだ自殺学生の多くが携帯していた事実が明るみに出たためです。青木ヶ原樹海の近辺で、多数の自殺願望学生が捕獲されたとも聞きます。タイトル通りの完全を期して、購入した学生が多かったのでありましょう。
 しかし書店での売れ行きほどに、つくば市内で自殺者が出たと聞いていません。多くの人は、興味本位で買われたのでしょうねぇ。クスリ・首吊り・飛び降り・飛び込み・ガス中毒・入水・焼身etc.と多種多様な自殺方法が書かれています。統計も交え、過去の事例を詳細に分析し、著者の博識に驚かされます。

 でも果たして、悪本なのでしょうか。巷には、犯罪のマニュアル本が溢れています。いわゆるサスペンス系・ホラー系の類も問題とするべきなのに、本書だけ指弾されています。よく内容を読んでいない人が、タイトルと自殺学生の多寡とで、批判を行っているように見受けます。
 このマニュアルは、実のところ「首吊りが簡単で確実」という結論を提示しています。それなら書籍にして売る必要がありません。実際のところ、多くの事例を引きつつも、それらの問題点を挙げています。また後遺症などについても触れており、正しい意味でのマニュアルではなく、専門書でしょう。この一冊を読み尽くすころには、自殺する気は失せてしまいそうだと感じます。変な話ですけどね。
 現実にマニュアルを携帯しながらも、飛び込みや樹海徘徊を試みた学生がいるようです。ハウトゥー本よろしく摘み読みをし、全部を読まなかったのかな、と感じます。せっぱ詰まって時間がなかったのか、読みこなす能力に欠けていたのか。最後に読む書籍なら、是非とも熟読して欲しかったところです。

 いじめや脅迫で自殺で追い込まれたり、些少な問題で死に逃避したり、不幸な少年少女たちに共通するのは、あるようで中身のない画一的教育システムにあるのではないでしょうか。著名な小説家が自殺を止めようとする名作を著しておられるようですが、それが少年少女の目に触れていないことも事実。自殺マニュアルを読みこなしたり、名作を手に取れたりする時間的余裕と読解力を与えるのが必要な気がします。興味本位で買っていった大人達に自殺者が少なかったことも、この辺に関係があるのでしょうか。
 ただ自殺マニュアル・・・コラムはダメでしたね。どう読んでも自殺を助長するような書きぶり。自殺願望者を嘲弄するように、行間が読めます。また1章設けて、読み手を冷静にさせるような設定があっても良かったのでは? 名著でありますから、中身を厳選して生き残って欲しいです。

99.11.21

補足1
 先日雑誌を整理していましたら、自殺マニュアルの特集がありました。何でもマニュアルは延べ130万册も売れているそうです。もうミリオンセラーなんですね。また著者の鶴見さんは、最近生きることをテーマにした著書を書かれているとか、少し反省があるのでしょうか。
 また太田出版は、書籍に18歳未満は買っては行けない(ちょっと違うな)という帯を付けて販売しているとのことです。またビニールを掛けるようにしたとも紹介されています。ウチのバイト先は自主的にビニールを掛けていたのかな〜。

00.01.02

補足2
 青木ヶ原樹海での自殺者が絶えないことから、警察は署員7名から構成する移動交番を開設すると3月3日に発表しました。1999年は樹海内で68名の遺体が発見されたほか、58名が保護されたそうです(人数的に重複数があるかどうかは不明)。不況というキーワードもあるのかも知れませんが、「完全まにゅある」が悪者に見られるのも仕方がないのでしょうか。

00.03.25
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