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前略 中内様(No.30)
私信(H09/11/07)から

′獅V日の金曜日。ついに日経平均株価指数は1万6000Pを割り込みました。株式市場、債券市場の低迷・悪化は、そのまま日本経済に大きな打撃を加えています。とくに高級飲食店への打撃は大きく先月末から社用族の利用が落ち込み、売上げが立たないそうです。また企業の当期業績が下方へ向かうため、当初予定よりもボーナスが減額される可能性もあり、個人消費の低迷が拡大する恐れがあります。お歳暮を中心とした年末商戦にも影響が出ることでしょう。

 お客様の消費傾向を分析し、最もお客様が興味を示している分野に人材・資材を集中することは重要です。その消費傾向の収集はPOSやカード利用のデータから分析することができます。できることならグループ全体のデータを集約し、解析する必要があります。現在はPOSデータをどのように利用されていますか。グループ各社での分析と合わせ、ダイエーOMCにPOSデータを供与して消費傾向の分析を担当させてください。

 またお客様の消費傾向のベクトルは分散しがちです。そこで積極的な情報発信を行い、ある程度ベクトルの方向を誘導することも重要です。新たな生活スタイルや流行を創り出すことにより、手持ちの人材・資材を有効に活用することが可能です。できることならグループ全体でベクトルの方向を集約することが必要があります。現在はグループ全体の経営戦略をどのように決定されていますか。グループ各社での方針決定と合わせ、ローソン等にグループの行動方針を研究させることをご検討下さい。

 グループにおける各社の分担を明確とし、責任の明確化を図ることは重要だと考えます。300社近いグループ会社では各社の特徴付けが明確になりません。まずは統合整理を行い、各社の自律性を高め、総合力を養うことが必要です。今回はダイエーOMCとローソンを核とすることを提示しましたが、その役割を持株会社に負わせることも可能です。持株会社の方が視野が広く、実施権限が大きいためにリーダーシップを取りやすいことが言えます。
 しかしながら、同じ機関、同じ人員が情報の収集分析と、情報の発信を行うことは危険です。得てして独善に陥りやすく、大きな判断ミスを招くためです。まず情報分析と情報発信は別々の機関に担当させ、その上に決定機関を据える組織スタイルが望ましいと考えます。

 積極的なグループ会社の統合と、グループ各社の性格付けと、グループ内での分担の明確化を是非ご検討下さい。残念ながら、転換社債については研究成果がまとまりませんでしたので、次回とさせて頂きます。

′�17日の純粋持株会社設立というニュースを前提とした私信だ。純粋持株会社の設立に際して、ずいぶんと意表をつく裏技を駆使して多くの子会社を傘下に収めてしまいました。中内氏の錬金術はいまも衰えずというところでしょうか。中内氏には個人会社が多く、実体のないペーパーカンパニー的なものも随分と含まれています。
 そうした会社がダイエーやグループ企業の上位株主に名を連ねています。例えば「中内インターナショナル」「中内興産」「マルナカ興産」「サカエ薬局」などが該当します。現在の中内氏は名目株1,000株を持つのみで、他は上記の各社が握っています。大株主が中内氏個人で有れば800億円を越えるはずの相続資産も、この方法では7億円前後に圧縮されています(田中角栄氏の錬金術にも勝るものです)。詳細は「日経ビジネス」2月16日号pp74−79を参照してください。

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