前回へ  ホームへ  次回へ
前略 中内様(No.23)
スーパーにも独自のシンクタンクを

 アメリカには業種毎のシンクタンクが数多くあると聞きます。日本では証券会社系と銀行系のシンクタンクを除いては、綜合的シンクタンクがありません。企業グループを形成する上では戦略の要となるシンクタンクが必要です。自由に幅広く情報収集を行い、これを定量的に分析し、積極的な提案に結びつける戦略部門としてシンクタンクを作りましょう。
 とくに純粋持株会社においては良質な戦略部門が必要です。御社が流通業界のリーディングカンパニーである以上は、単なる戦略スタッフの配置に留めず、流通業界全体を見渡し、そのニーズとウォンツを満足させるシンクタンクを創設することが必要でしょう。長期的利益を確保し、健全な業界の発展を図るために、シンクタンクの創設を是非お考え下さい。

 外部に開かれたシンクタンクとは別に、グループ内で閉じたシンクタンクも必要です。いわゆるブレーンですが、何度も申し上げますように社内よりも社外のブレーンを確保すべきだと思います。社外からブレーンを迎える方策の一つとして、社外非常勤取締役の活用があります。可能で有れば同業他社から迎えることが必要ですが、異業種からも集めてみましょう。相互に提供し合う場合は報酬を抑制することも可能ですし、負担はあまり大きくないと考えます。
 社外取締役は、ノウハウを盗む危険性があるものの、逆に良い提案・指摘をくれる可能性があります。社外取締役が加わることで取締役会の透明性を図る必要が生じ、結果的に市場に対してオープンな姿勢を示すことにもなります。形式だけの非常勤取締役が未だに多いですが、全取締役の取締役会への出席状況や、会での発言状況などを公開し、努力の足りない取締役を積極的に解任することにより、内容のある活発な取締役会が期待されます。

 外国では、直接の資本関係がない関係会社から非常勤取締役を受け入れる企業が多いと聞きます。会計制度を欧米の基準に合わせる企業が増える傾向にあり、情報開示についても欧米並の開示が求められ始めています。情報開示は重要ですが、その情報は厳選されなくてはいけません。その情報を開示した場合の市場への影響、競合企業への影響を正確に分析できるシンクタンクの育成は必要急務です。また社外非常勤取締役によるチェックとアドバイスを受けることも必要です。
 シンクタンクと社外非常勤取締役の創設を是非ご検討下さい。

 我が国は単一民族国家であることから、欧米に比べて人を疑うということが少ないです。そうしたことが、調査機関の普及を妨げ、調査手法の大幅な遅れを生んできたといえます。太平洋戦争でも情報に対する考え方の甘さが無謀な開戦と底なしの消耗戦を招いたのです。我が国ではシンクタンクもあるにはあるものの、数が少なくて、その能力も低いです。外資金融機関やコングロマリットのシンクタンクとは正面から太刀打ちできません。
 流通業は顧客情報を管理し、分析し、戦略を組み立てることが欠かせません。POSシステムはその第一歩として役立ちましたが、まだまだ集まる情報の分析力は素人の領域です。まず専門のシンクタンクを作り、国内外から膨大な情報を収集することから始めるべきでしょう。
 幸いにもダイエーグループは1997年12月に持株会社を設立しました。持株会社は単に株式による金融支配を行う者でなく、グループ全体の頭脳として戦略や戦術の思考機能を果たすことを要求されます。逆に言えば現業から切り離される分だけ純粋に情報収集と分析に取り組めるということです。あとは正式にシンクタンクを設立することと、その機能をグループ外にも利用を開放することでしょう。そうすれば社外との関係も緊密になるし、非常勤取締役たちを広く集めやすくなるのです。

前回へ  ホームへ  次回へ