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前略 中内様(No.22)
中堅スーパーとの合従連衡を

 グループでのバイイングパワーを強化するためには、さらに店舗を増やす等経営努力が必要です。しかし短期間での実現は難しく、新たな資金負担が生じます。前回までに述べましたように、マルエツを核としてグループ内SMの統括をさせることは、仕入れロットの拡大、運送の効率化を可能としますので、バイイングパワーの強化に役立ちます。
 しかし、直接の資本関係のない中堅スーパーや地方スーパーとの共同仕入れが拡大すれば、新たな資金負担を無くしてバイイングパワーを強化することが可能です。さらに付随効果として、仕入れ原価の低減、新たな商品開発の要請、商品ノウハウの吸収、商品流通動向の把握量拡大、などを享受できます。

 問題は提携先ですね。イトーヨーカドー、ジャスコあるいは西友と提携できればバイイングパワーは非常に大きくなります。しかしながら、競合店舗が多く、盗まれるノウハウが多いため、不利は免れ得ません。そこで複数の候補を挙げてみます。
 一つ目の提携先は、ニチリウです。ヤオハンの脱落によりバイイングパワーが弱まるとともに、一部業者はニチリウとの取引を再検討していると聞きます。ニチリウと御社グループとの提携は、ニチリウはバイイングパワーを従来以上に拡大することとなり、活気付くことは間違いありません。ただし規模の関係で、ダイエー本体との提携は拒否されると思います。取り敢えずセイフー、可能ならばマルエツを参加させましょう。ニチリウから格安に得られる商品は御社側が供給を受け、御社が安く提供できるものは逆にニチリウ側に商品を流せばよいでしょう。ニチリウ系のスーパーは地域ドミナントを実現していますので、OMCカードの提携も期待できます。
 二つ目の提携先は、マイカルです。競合店舗が少なく、とくに業態での競合も少ないように見受けます。必要に応じて競合店舗の交換、譲渡を行うことも良いでしょう。中堅上位ですから、バイイングパワーの拡大が望めますし、他大手3社との競争でも優位に立つことが可能です。子会社レベルでの提携・統合を行えば相乗効果は増大します。また、エグザスやビブレの業態からは学ぶべき点があると思います。さらにショッピングセンターの共同開発が可能になればリスク分散の利点も生じます。
 三つ目の提携先は、丸井です。業態の違いは多少ありますが、相互で融通することが可能な商品は多いと思いますし、提供し合えるノウハウも多いと思います。丸井の家電・OA機器関連は弱く、御社と共同仕入れすることでバイイングパワーを上げることが可能です。またクレジットカードは丸井に一日の長があり、単なる顧客情報交換、システムの共有化だけでも十分な価値が得られると思います。ダイエー本体との提携が難しければ十字屋やプランタンとの提携であっても宜しいかと思います。
 四つ目の提携先は、生協です。生協のPB商品にはヒット商品が多く、OEM供給を受けることでPB商品を一層充実させることが可能でしょう。組織の問題、競合店舗の問題は残りますが、提携には大きなメリットがあります。

 大手4社が勢力争いが激化する一方で、地方スーパーのドミナント化が進んだエリアへの進出も難しい状況にあります。今後は中堅・地方スーパーを自陣営に取り込み、彼らの支配エリアに御社グループのSM、コンビニ、飲食店を平和的に展開することが必要でしょう。結果的に、総合的なバイイングパワーを高めることが可能となります。他陣営に追いやってしまうよりは、現段階から自陣営に取り込んだ方が宜しいかと思います。是非ともお考え下さい。

 中国の戦国春秋時代の末期に提唱されたのが合従策連衡策であります。前者は劣勢な勢力が団結して強者に対決するという弱者が強者に対する蘇秦が唱えた策であり、後者は劣勢な勢力を一本釣りして提携し、他の劣勢な勢力を併呑するという強者が弱者に対する張儀が唱えた策であります。
 現在の流通業は、イトーヨーカドーが収益面でダントツのトップであり、売上げ規模だけがトップのダイエーを脅かしつつあります。そのダイエーがジャスコ、西友といった大手と合従するのも有効ですが、企業風土の問題と対抗意識の問題とがあるため、この策は採りがたいです。そこで中堅以下のスーパーに対する連衡策を唱えたのが今回であります。これまでにもダイエーは連衡策を採用してきたのですが、ここへ来て連衡策にも限界が見られるようになっています。やはり問題は資金力なのです。

総 括
 流通業全体が沈滞化してしまいました。西友は食品スーパーへの特化を打ち出し、マイカルも事業売却による縮小均衡を目指しています。イトーヨーカ堂でさえ、既存店の売り上げ減少に頭を抱えています。オーバーストアな状況を打開し、業界全体が縮小均衡を図る必要に迫られているとも見えます。既存店舗の整理は急ピッチですが、それでも追いつかないだけの景気低迷です。大胆な事業提携が欠かせません。
 ダイエーは本業回帰を打ち出すと共に、系列スーパーの整理も始めています。ダイエーの中小店舗を分離し、マルエツ他に集約する方向性を打ち出しています。事業売却も含めて、総合スーパー特化の途を模索するように見えます。しかし、大型店舗による旗艦経営の時代が終わっており、時代に逆行しているのではないかという懸念も浮かんでいます。やや先行き不透明です。

01.01.28

 DPEやドラッグストアで合従連衡が進んでいるようです。結局の所、スーパー業態全体が低迷しているため、規模の追究はあまり進まないようであり、変わってカテゴリー単位での合従連衡が図られるようです。DPEでは、マイカルが大手2社と提携を発表しています。ドラッグストアでは、ジャスコが全国11社の提携先と連合を組み、総店舗数1,336店(2001年3月末)という国内最大のネットワークを構築した模様です。
 肝心のダイエーは、相変わらず独自でカテゴリー立ち上げをするのに必死ですが、そろそろ効率的な合従連衡を視野に入れてはいかがでしょうか? ダイエーは「ディーファット」という名称でドラッグストアの出店を始めています。ダイエーのルーツは薬局でしたが・・。

01.06.30

 ダイエーは、プランタン銀座のMBOを決めたそうです。当初は株式公開による資金調達を考えていたようですが、市況の冷え込みやダイエー連想株の低迷が懸念されるため、現経営陣が設立する新会社に全株式を譲渡するようです。確かにスーパー本体との相関性が薄くシナジー効果が働きにくいですが、目先の債務圧縮で優良子会社を手放すことに成りました。
 話は変わりますが、マイカルもダイエーと同様のスパイラルに填り込んで、優良子会社の手放しに躍起です。多角化路線と債券を使った資金流動化は悪くなかったのですが、借金ヅケ体質と消費不況による見通しの甘さが響いた形です。

01.08.12
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