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前略 中内様(No.16)
非上場子会社と上場子会社の合併推進を

 さる10月1日、合併法の改正法が施行されました。ご存じのように、大きな改善点は報告総会の廃止にあります。これにより、従来は12ヶ月は必要でしたが、合併が6ヶ月程度で可能になりました。このことは非上場子会社を新規上場させるよりも、上場子会社と合併させる方がキャピタルゲインの回収が容易であるということです。

 例えばセイフーを上場させるよりもマルエツと合併させる方が早いわけです。ただし、セイフーの資産状況が悪化している場合は、マルエツの株価をも下げてしまうので注意は必要ですが、現在はマルエツ株も値下がりしているので問題は少ないかと思います。また合併比率は第三者機関が決定しますから、非上場会社の資産状況等のガラス張りとすることが必要です。とりあえず合併した上で株価の回復を待ち、マルエツ株に転換したセイフー株の一部を売却すればキャピタルゲインが得られます。さらに御社株主には理解を得られないかもしれませんが、秀和保有のいなげや株を買収し、三者合併することも可能かと思います。関東近郊での市場シェアが大いに増大します。

 またフォルクスと他の外食子会社との合併も有効かと思います。持株会社制度が来年施行されますが、外食統括会社フォルクスを統括会社とし、他を子会社に分割すれば経営の効率化が図れます。まず合併によるキャピタルゲインの回収を図るべきかと思います。異なる外食店を統括する会社としては、セゾングループに吉野屋D&C(牛丼とドーナツ店)、西洋フードシステムズ(カーサ、藩を展開、また吉野屋D&Cを統括)が先例としてあります。効率のほどは分かりませんが、チャイナロード、りきしゃまん、らんぷ亭等は対象として適すると考えます。

その他、プランタン銀座十字屋、各種不動産管理会社とイチケンなども相性がよろしければご検討下さい。なお、主な合併事例としては、昭和石油とシェル石油の合併(昭和60年)、日鉱と共同石油(平成4年)、住金物産とイトマン(平成5年)があるそうです。とくに、日鉱と共石の事例では共石持株の日鉱株を消却して減資差益を得た可能性があるそうです。

 ともかく、関係子会社を統合し、営業規模を拡大し、経営基盤の強化を図ることはグループのイメージ向上に繋がります。またキャピタルゲインの早期回収を目指すのでなければ、株価上昇による資産価値の向上が望めますし、一時的ながら子会社に対する支配権を強めることになります。
 またイチケンに関しては、イチケンの第三者割当て増資の実施、その資金と御社の遊休不動産の時価売却の実施により、資産圧縮とイチケンに対する出資比率の向上が可能です。まず昨年の6分の1という株価低迷を利用して安価で大量の株式が入手できること、簿価を下回る物件を売却すれば利益圧縮・含み損の圧縮が可能であること、が御社側の利点であります。対して、将来の含み資産の増加、遊休地の自主デベロップメントと転売を行えること、がイチケン側の利点であります。イチケンをダイエーグループの中核企業とされるのであれば、出資率の向上、体力強化をご検討下さい。

このように、子会社を統合・整理し、グループ経営の透明性を高めることにより、信用力を大きく回復することが可能となります。子会社の数が多すぎることは目が届かない企業が増えるということであり、それが不祥事を起こした場合は新社長の大きなイメージダウンとなります。市場の噂では遊休会社やペーパカンパニーもあると聞きます。来年早々(註:正しくは1997年12月)の持株会社創設の際には、是非ご検討を頂きたいと思います。

[参考文献]山一証券経済研究所資本市場調査部編
「いよいよ実現する合併法制の改正」

 海外では派手なM&Aが展開されていますが、我が国では企業風土の問題があって安易な会社合併はできません。また子会社や一部部門の競合他社への売却も我が国では馴染まない話です。自社グループ内で業務統合を行うのがよさそうですが、代表取締役を始め役員ポストが減少することを懸念して、合併に踏み切れない事例も少なくないと言います。
 ダイエーグループの300社という企業数はあまりに多いです。実働100社前後でしょうが、他の流通グループと比較しても多すぎる感は否めません。これらを整理統合しつつ財務体質の強化に踏み切るためには、重複部門の廃止と不採算部門の切り捨てが欠かせません。
 ダイエーグループは、設立したばかりの持株会社を活かして上場会社を増やす計画のようですが、これは市場の理解が得られないばかりでなく、極めて不効率な話であります。既存の上場会社に未上場会社をくっつける方が効率的で市場の理解も得られやすいと思うのです。

総 括
 せっかく純粋持株会社DHCを設立してまで不採算事業を移管したものの、連結決算の影響で整理されることに成りそうです。本業回帰のかけ声の下で、ファミリー企業の整理も進むことでしょうが、いずれも精算ということでは勿体ない話です。外食事業やレジャー事業も大胆に整理されるのでしょうが、新経営陣はどう踏みきることでしょうか。

01.01.28
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