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前略 中内様(No.15)
オピニオンリーダーになりましょう

 数あるスーパーの中でも、御社はプライスリーダーの役割を守ってこられました。しかしながら、最近では没個性化ではなく、個性化が言われています。いかに素晴らしい商品でも、常にお客様の「ニーズとウォンツ」に答え続けなければ飽きられてしまいます。量産体制を整え、安くできる環境を整えたとしても、いざ安く提供できる段階では、お客様の関心が失われていることも少なくないでしょう。
 お客様のウォンツを実現することに取り組むならば、量産化が実現した時点で多数のお客様のニーズを満たすことになり、メガヒットと成ります。このことは100%バレンシアオレンジの事例などで勉強させていただきました。しかし、折角のPB商品であってもNB商品の値下げが出てくれば、割安感が薄れてしまい売上げは頭打ちになるとも聞いています。
 やはりPB商品のヒット商品を次々に開発し続けるシステム作りが必要かと思います。お客様のウォンツを引き出す手段として、お客様を集めて意見を頂くことは有効でしょう。しかし自主的に協力されるお客様は限られますし、そのお客様方が全ての主婦の意見を代弁しているとは言えないと思います。

 ところで、イトーヨーカ堂の戦略は遺憾ながら見事という他に言葉が見つかりません。グループ中核会社を、海外や地方の有力企業とタイアップして設立して、成功企業からノウハウを引き出し、単品管理を主体とした自社ノウハウとを武器にウォルマートらとの国際提携を実現する恐ろしい企業です。自ら道を切り開くことは少ない企業グループですが、彼らの戦略に習うべきことはたくさんあると思います。
 特にチームMDともグループMDとも呼んでいる製販同盟は協力であり、数々のヒット商品を生み出す原動力になっています。新開発商品のヒットは製販同盟の一層の強化に直結しており、バイイングパワーのみではメーカーを引きつけることが難しくなりつつあるかと思います。御社も遅蒔きながら同じ手法を用いることが可能かと思いますが、相手から人材とノウハウを引き出すためには、お客様のウォンツとニーズという交換条件が必要でしょう。POSから拾う情報量がイトーヨーカ堂を越えられない現状では、全く違った方法でのウォンツの吸収手法を考える必要があるのではないでしょうか。

 この点は後述するとして、お客様に接するだけの担当社員を増やすことを考えなくてはいけません。あるスーパーでは店長や次長の席をバックヤードに設けず、彼らの業務は店内のカウンターで処理するようにしていると聞きました。社員は店長や次長に限定するものではありませんが、まず管理職からお客様に接する時間を増やす工夫をしてみてはいかがでしょう。
 また従業員には「遊び」を持たせましょう。店内作業のみに専念するのでは、お客様への接客が手薄になりますし、自主的な建設意見を集めることも難しくなるでしょう。また店内の埃やチリへの関心も低くなり、クリンリネスをはじめ店全体のサービスを低下させることになります。お客様にとって声を掛ける店員がいない店ほど不便なものはないと思います。

今年は「お客様サービス見直し元年」などと銘打ってみましょう。そして目に見える場所にどのようなサービス改善・点検を行っているかをお客様にお見せしましょう。4年ほど前には西武百貨店が店内掲示や新聞広告でヒットを出しましたし、ローソンにもあります。サービス向上を積極的にアピールすることにより、お客様へのイメージアップになりますし、結果的に来客数・売上高ともに向上すると思います。
 プライスリーダーであることは勿論、オピニオンリーダーを目指しましょう。お客様と対等な立場で意見を交換し、お客様のウォンツやニーズそして満足度を吸収しましょう。それが御社の大きな蘇生力へと繋がると考えています。

 流通小売業界の顔としては中内氏が最も説得力があります。イトーヨーカ堂、ジャスコ、西友は既に創業者社長でなく、ジャスコを除いてサラリーマン社長です。イトーヨーカ堂社長の鈴木敏文氏もセブンイレブン=ジャパンの実質創業者ですが、小売業者からのたたき上げではない点で、発想そのものが流通小売業とは異なっているように見受けられます。
 中内氏の発言が流通小売業界のリードオピニオンとなって良さそうですが、最近は少し視点がズレてしまっているようです。中内氏がお客様の視点に立ち戻ることを望むものの、現在の同氏の地位からはそれが難しいでしょうか。

総 括
 中内会長は、御家騒動で晩節を汚し、退陣に追い込まれてしまいました。ダイエー社内に影響力は残るものの、もう看板として以上のものでも無いようです。今となっては「敗軍の将、兵を語る」と成りますが、むしろ自由に発言できる立場を得たとも見えます。これまで経営者として、グループ総帥として、口にできなかった流通業界への夢を開陳するのも、良いのではないでしょうか?

01.01.28

 イトーヨーカ堂では、8月から大胆な店舗改革を行うと発表しました。ある店舗では、店長を含む全員を40歳未満(平均年齢は34歳の予定)とし、若手による店舗運営を行わせるそうです。別のある店舗では、衣料品部門の全従業員を女性に入れ替えるそうです。いずれも試験的なもので、成果を見て他店にも拡げるとしています。若手や女性の意見で店舗を運営させることで、今のジリ貧状況を打開したいようです。

01.08.12
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