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前略 中内様(No.10)
カートが小さくなったということ

 買い物用のカートが大きくて不便を感じたことがありました。Kou’s品川店において、大きいカートは使いにくいという指摘があり、小さいカートが採用されたと聞いています。Big−Aでもカートが小さくなりましたので、利便性が向上しました。

 日本人の買い物スタイルとアメリカ人の買い物スタイルは違うと聞きました。恥ずかしながら私は海外へ出た経験がありません。そこで経験者の話を総合しますと、アメリカでは家族で買い物に出かけること、大きな冷蔵庫を満杯にするほど大量の食品を1回の買い物で購入すること、彼らの食材の品種は極めて少なく、食品の購入はステレオタイプ化されていること、などが特徴だそうですね。
 これに対して、日本では主婦が1人か子連れで買い物に出かけることが多いです。核家族化が進んでいるので、老人1人で買い物に来られることもあります。いずれにせよ、都心部のスーパーでは大きいカートを満載するほどの買い物はできません。まず店外に運び出す作業が大変であること、大量の食材を買っても使い切れないこと、そして店内でのカート操作ができなくなること、がその理由だと考えています。
 また日本では食材の種類が豊富だと聞きます。和洋中の食事スタイルを使い分けますし、食卓に並ぶ品数もアメリカより多いでしょう。ですから購入する食材も少品種大量購入でなく多品種少量購入であります。購入する食材の種類は買い物の度に違いますからステレオタイプ化されていません。非効率であるようですが、食事のバリエーションを楽しむ国民性を反映しています。

 したがって、日本人の買い物は行きつ戻りつのスタイルになります。例えば、すき焼き肉が安いことに気づいたら、野菜売場に戻りすき焼き用の野菜を買わなくてはいけません。ポン酢を買うために、通路を曲がり調味料売場へ行かなくてはいけません。それから肉売場に戻り、買い物を続けなくてはいけません。ですから、小回りの利く買物カゴの方が日本の主婦向けではないかと思います。もちろんカートが便利であることも事実です。商品を両手で取って選ぶことができますし、手が疲れないという利点があります。
 しかしながら、カートの小回りが利かなければいけませんので、通路を広く取ること、カートを小さくすることが、必然かと思います。その結果、売場面積に対して通路面積が大きくなりますので、商品の陳列点数が絞られてしまいます。また、カートを押して歩く場合は、視点が高く成ります。天井が低い場合はお客様に威圧感を与えますので、天井を高くする必要が出てきます。
 小規模な店舗では、カートを使うほど買い物をされるお客様をあまり見かけません。お買い物カゴで十分であれば、通路面積、天井の高さの制約を考慮して、お買い物カゴを採用されてはいかがでしょう。社長も是非お忍びで試買してみて下さい。

 ひところのダイエーがアメリカナイズを意識しすぎたことがあります。ハイパーマートやBig−Aの展開、Kou’sにみる会員制スーパーなどです。ハイパーマートではその品揃えが大味のアメリカ的で消費者の理解を得られず、Big−Aでは段ボールの野積みとショッピングバックの有料化による省人力スーパーが駅前スーパーとして馴染まず、Kou’sでの大ロットでの売上げ不振などいろいろ問題がありました。カートの改善でさえお客様の意見を吸い上げておけばすぐにでも改善できたはずの話でした。ローソンミルクと提携した当初のローソンでもしたはずの失敗が全く活かされなかったことが、ダイエーグループには散見されます。イトーヨーカ堂グループとの大きな違いとも言えるでしょう。

総 括
 中内会長が引退して経営陣が一新されました。これで中内氏のファーストネームを音読みしたKou’sの立場も微妙です。引き続き運営していくのか、総合スーパー路線に相乗効果を与えないとの理由で、閉鎖や業態転換を行っていくのか、動向に注目されます。
 昨今の消費者動向をみる限り、Kou’s業態が今後も成長するとは考えにくく、日本への進出を狙っている外資への売却などを選択肢に入れるのが良さそうな気がします。いずれは新業態として定着していくかも知れませんが、新経営陣に課せられた課題の重さを考えると、売却して目先の負債返済に充てるのが無難だと考えます。

01.01.28
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