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前略 中内様(No.05)
信用維持には正しい情報開示と
理解される説明を      

 株式市場には魔物が棲んでいる、などと語られます。出所不明の噂のために株価が乱高下することは茶飯事ですが、近頃は株価下落が先行してから、噂が理由付けをすることが多いようです。大手証券会社が不在で、弱気な相場であることも原因かも知れません。昨年1,250円の高値を付けたイチケンが160円の値を付けたのも、週刊ダイヤモンドが危険度ランキングの上位に乗せたからに他なりません。
 こういう時は、正しい情報を分かりやすく説明するスポークスマンが必要です。借入金の返済を前倒しで実施したためだとか、退職金の支払い負担が大きかったとか、説明が成されたのは後日でした。しかも、後日に業績の下方修正があり、再度売り込まれた感じの相場がありました。住友信託の保有株放出があったようですが、市場を無視した凄まじい投げ売りが連日続きました。この時も特定法人の投げ売りなのか、信用不安での個人を中心とした投げ売りなのか不明でした。すばやく情報を収集し、正確に情報を開示することは上場会社の義務だと思います。
 一方で情報開示はするものの、虚偽で強気の発言を繰り返したヤオハンには問題がありました。連日のボーナス支給見送り、強気の記者会見、そして会長自らが流す怪情報など、無意味で実のない記者会見が多かったように思います。先日ボーナス支給どころでなく会社更生法の適用申請に踏み切ったことはご存じのとおりです。あのような情報開示ならば、ない方が良かったでしょう。

情報開示はするものの、分かる人だけに分かれば良いというスタンスは問題があります。ここ2年間で株価の急落と企業イメージの低下とは連動してきています。新聞においても経済面でなく、一面に書かれることが多くなりました。建設会社や銀行の信用不安も相変わらず消えていません。今後の信用維持・拡大のキーポイントは、正確な市場情報の収集、適切な情報分析と対応の検討、迅速で積極的な情報開示、に集約されることと考えます。

 流通業界のリーディングカンパニーである御社には、業界に先立ち正確な情報開示を行うシステムを構築する義務があります。とりわけ、副社長が情報を大事にすることを公言されれば、堅実な経営スタイルを内外に印象づけるとともに、一定の評価を得ることに繋がるかと思います。
 市場での資金調達には市場信用を取り返すことが必要です。積極的な情報開示と、それを誰にでも分かりやすく解説できるスポークスマンの育成を期待します。

 実質赤字決算を招いた1996年度決算の発表、ヤオハン店舗の買収とその後の資金計画の発表、いずれにおいても中内社長の強気の発言がマスコミの批判を浴びました。楽観的にすぎた1997年度中間期の利益予測が裏切られたことも株価低迷の原因となりました。ところが1997年12月の持株会社設立に関する発表では、中内社長自ら飛び回ってマスコミへのサービスに努めたそうです。詳細な資料の配付、主要銀行の応諾についても発表し、多少の甘い読みは批判されたものの、かなり好意的な記事が書かれていました。良い傾向だと考えますが、社長自らスポークスマンを務めるのは、大変な話です。

総 括
 ダイエーの経営の不透明さは、中内氏の退陣まで続いてしまいました。その行き着いた先が御家騒動とは、実に不幸な話です。1980年代の再生に尽くしたメンバーを棚上げや放出した結果といえば、それまでですね。経営陣に建設的な提案のできる人材が枯渇したこと、折からの不況で正直な情報開示ができなくなったこと、債務圧縮計画が見込み通りに進捗しなかったこと、そうした阻害要因が生まれたことが、最大の敗因でしょうか。

01.01.28
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