古くからの言葉に、「由らしむべし、知らしむべからず」という台詞があります。色々調べてみましたが、その起源は判然としませんでした。「依らしむ」や「頼らしむ」「寄らしむ」と書かれることもあるようですが、一応の正解は「由らしむ」のようです。「由」は、拠り所、出所、よる、したがう、という意味だそうです。
現代語に直すと、「したがわせるべきだ、知らせるべきではない」ぐらいですか。要するに、「愚民に知らせて混乱を招くよりは、知らせぬまま従わせるのが良い」ということですか。長年、こうした台詞が繰り返され、事実が明るみに出る度に、言い訳として使われてきました。
さて、ところが最近の日本政府は、上記方針を改め始めています。例えば、不良債権。これまでは包み隠していたものを、精緻かつ迅速に公開するよう努めています。これは、公開することで国民に危機を訴え、金融機関支援を正当化する意味合いがあると思います。各省庁の発行する「○×白書」も、公式ネットサイトで積極的に公開されるなどしています。カラーグラフを多用し、解説を添えるまでの丁寧さです。これも、閉鎖的とされる行政情報を積極的に開示し、施策をPRするのが狙いです。
各自治体も趣向を凝らして、様々な情報提供を進めています。紙で宅配していた公報を、縮小したり廃刊したりする事例が増えています。ネットで情報発信を行えば、同じコストでもっと充実した内容をリアルタイムで伝えることができ、市民の評判も良いようです。大都市では、非ネット人口に配慮しているようですが、いずれ同じ方向に進むことでしょう。問い合わせ件数の減少、問い合わせ内容の具体化、においてネット発信は効果があるようです。つまり、初歩的な問い合わせを市民にさせる必要が薄れたことを意味します。
このように、国地方ともに行政は、「知らしむべし」に動きつつあります。まだまだ公開したがらない内容も多いようですが、利用者のニーズに応えるうちに、開示側も積極的に開示を行い、できるかぎり「由らしむべし」を減らしています。行政コスト面を考慮すれば、当然のことでしょう。公報センターなどにカラーパンフを積み上げるよりも、実に効果的なのですから。国民がインターネットを介して情報を収集する以上、行政も同じ土俵に情報を載せる義務があります。情報開示せずして、ネットのコンテンツに意見するのも、問題でしょうから。
情報公開法が整備された甲斐もあって、かなりの行政文書が公開されることになります。一方で、公開したくない事柄を文書化しない動きもあるとか、メモや覚え書きは積極的に破棄に動くとか、批判もありますが・・自ら公開に動けば、事実はどうあれ国民の理解が得られようというものです。ミスリードせず、事実をありのままに、公開して欲しいものです。
公式サイト上で、アンケートを実施するケースも見られます。行政に対する意見や提言を、フォームやメールで受け付けるケースも増えています。従来の手紙投書に比べれば、裾野が広がり率直な意見も増えていると聞きます。とくに、レスポンスの良さも評価されているそうです。まだまだ後進の官庁・自治体もありますが・・一層の拡がりを見せてくれることに期待しています。
どうか、「知らしむべし、由らしむべからず」が定着しますように!
02.06.23
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