今期国会では、信書郵便の扱いに関して随分と議論がありました。子供の喧嘩のようなシーンもあったようです。しかして、さほど進展があったように見えません。確かに郵政事業庁による独占には無理があるようですが、果たして、民間運送業者に参入する能力があるかどうか気になります。
いつかの経済コラムにも書きましたが、運送業者は長い間C2Cに慣れてきたために、大雑把です。早くから、C2BやB2Bに浸透してきた宅配便でも、同様です。確かに、配達時間の指定や、再配達の簡易受付などきめ細かいサービスを投入していますが、顧客との接点になる配達員の教育が十分でありません。「荷物を届けてやるんだ」という横柄な配達員が依然として多く見られます。
一つには、過剰なサービス競争、極限へのコスト削減などによる配達員処遇の悪化や、それに伴う優良配達員の調達・維持が困難なことが理由でしょうか。職務や顧客への愛着心が薄く、職場への忠誠心も薄く、配達員の定着率も悪いと聞きます。長く同じエリアを担当すれば地域とのコミュニケーションも拡大し愛着心や忠誠心が増すかと思うのですが・・。
最近はそうでも無いようですが、昔の郵便局員は、地域への愛着心が多くありました。とくに地方部でしょうが、住民一人一人をよく把握し、情報を交換し、地域コミュニケーションの担い手でもありました。行政効率の観点から見ると「不効率の塊」です。しかし、郵便屋さんには他の公務員にはない、暖かさが期待されてきたと思います。警察官に比肩する地域の要ではないでしょうか。
配達員と住民との間で、相互の信頼感を持てることが、そのサービスへの安心感を与えます。ダイレクトメールや小包であれば、民間運送業者で問題ないでしょうし、かつドライな彼らの方が付き合いやすいです。しかし、知人の手紙や重要文書(クレジットカードや有価証券など)は、ドライな業者では心配です。法律や規制がどうこうという前に、まず民間運送業者が自分自身を変えられるか・・が大事だと思います。
例えば郵便局員は、一軒一軒をよく調査しています。ポストの無い家では、どこに配達すれば良いのか指示を求めてきますし、不明な配達先があっても近所で聞き込みして届けてくれます。細い路地もよく調べて定まった配達ルートを構築しています。一昔よりサービス低下の懸念はありますが、それなりに真面目な姿勢が見られます。
偏見を含んだ意見でありますが、実話として書きます。対する民間運送業者は、ドアベルも鳴らさずにドアを開けて入ってくる、毎回携帯で呼び出して客を1階まで呼びつける、電話で不在確認をするだけでドア先まで来ない(無言の留守電ばかりになる。世の中にはオート居留守の人もあるのだ)、間違った家に毎回不在通知を入れる、平日の不在が多くて迷惑だと配達員が愚痴る、脆弱な荷物も手荒く扱う・・等々の課題があります。
さて信書と言えば、極めて大事なものです。遅配、誤配、不配は論外です。宅配における本人確認は極めていい加減ですから、大事な信書が紛失・盗難・毀損すると極めて危険です。とくに配達員の離職率が高い業者では、配達員が何を起こすか分かりません。配達員の責めに帰せて、会社側が責任を負わないなどのリスクもあり、安易には委ねられません。
知人の話で恐縮ですが、某クロネコ便と数年間の取引拒否をしている人があります。配達員の職務怠慢を指摘したところ、怒って帰ってしまったそうです。そして、その後二度と配達に来なかったそうです。結果、営業所にクレームを入れたものの解決せず、一切の受け取り拒否を続けているとか。今は通販商品などが主なので、先方の理解を得て他の業者に切り換えて貰っているそうです。面倒な上にカネが掛かりますが、これが信書になれば、本人の信用問題にもなり、先方が運送業者の変更に理解を示してくれるか心配だと話しています。
結論。郵政事業庁の独占云々の前に、個人のプライベートに関わる信書について、民間運送業者に扱う資質があるかどうか真剣に議論していただきたい。これに加えて、今は送付側に選択権のある運送業者を、受取側にも選択権を付加して欲しいです。公衆電話などと同じように、「自分はA社が嫌いなので、信書は必ずB社から受け取りたい」という極々当たり前の選択権を要求したいです。そうでなくては、うかつに信書を預けることなどできません。
02.11.17
|