バブル時代を境にして、女性の外国ブランド志向が高まったと言われます。とくに化粧品・皮革製品・衣類ですが、これを外国かぶれなどと揶揄する人が少なからず存在します。果たして、正しいでしょうか?
「高級志向」はともかく、「ブランド志向」は良い傾向であります。外国ブランド志向は、内国ブランド低迷の裏返しです。舶来品という理由で外国ブランドを重視するのではなく、品質・付加価値を考慮した結果として、外国ブランドが選択されたというのが正しいでしょう。
化粧品は、「再販売価格維持制度」という規制によって、長らく少数企業による寡占市場が形成されてきました。1997年3月の規制解除後も、販路を独占し安売り店を閉め出すなどして、価格維持に努めました。平たく言えば、定価販売を維持するために奔走し、消費者利益を高める努力を怠ったと言えます。ラインナップが豊富で、品質も良い外国ブランド化粧品に、若い女性が群がるのも当然でしょう。
皮革製品は、国内に大きな企業が育たなかったこともあり、割高で低デザインという評価が定着しました。良質の製品は量産ベースに乗らず、悪貨は良貨を駆逐するのとおりに、悪質の製品が量産されてきました。皮革製品は、外観や価格で品質を評価するのが難しく、デザイン性の好みも難しいことから、高デザインで良質の外国ブランドが売れるのは仕方ありません。また、輸入品が極めて割高になることも、国内市場に対する不信感を植え付けています。
衣類は、大手アパレルも誕生したものの、規模拡大に伴い品質を落としたブランドが多く、消費者の信頼を長く保ち得ることが難しいです。ファッション雑誌が、意図的なブームを煽ったり、流行サイクルの短期間化を図ったこともあり、安かろう悪かろうのイメージが定着しています。幸いにして、中小アパレルに良い企業が育ちましたが、あまりに非力です。スーパーマーケットも、プライベートブランドは「ドル箱」に位置づけ、消費者からの搾取を継続しました。ようやくユニクロブームで、良心的な大手国内ブランドが出現したと言えるでしょう。
海外の大手メーカーが次々に上陸しています。都市部の一等地に店舗を構えて、上得意客である日本人に攻勢を掛けています。百貨店の借家住まいから自社ビル取得へ動いているメーカーもあります。国内メーカーが消費者の信頼を取り戻し、国内ブランドの良さを強調していかない限り、外国ブランドに蹂躙される日は遠くありません。イメージ戦略が短期的効果しか生まなくなっています。従来型宣伝の賜ですが、この方針を転換しない限り、価格や品質面での消費者訴求は不可能です。
日用品を見るならば、やはり同様に国内メーカーの消費者軽視が原因でした。化学洗剤の原価は、きわめて安い事実を知らせず、海外商品の流入により原価を裸にされたことがダメージです。医薬品も同様で、代わり映えしない新薬で食いつなぎ、応用薬ばかりに専念したしっぺ返しが訪れています。
本テーマを「政治」で扱ったことは、国内メーカーが消費者軽視に走った理由が、日本の保護行政にあったためです。数多くの規制を施し、海外メーカーに参入障壁を構築してきました。規制に守られたメーカーは、高コスト体質のまま競争も十分にせず、安穏としたぬるま湯経営を続けてきたのです。消費者による選別の目が厳しくなっていますが、依然として規制により守られることを欲しているメーカーが多々あります。
政府が真に国内メーカーの存続を望むのであれば、まだ体力のある現段階で、国内企業に活を入れ、奮起を促すべきです。規制は必要最小限とし、寡占状態を利用した横暴には、不正競争防止法等で応え、適正なペナルティも課しましょう。我々国民が、安心して国内メーカー製商品の消費者となれるべく、市場改革を進めて欲しいと考えます。
02.06.23
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