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政治の研究No.156
小泉改革 の 曲がり角

 小泉内閣の支持率が急速に低下しています。マスメディアの支持率調査は、近頃メディア世論に引きずられている感があり、本当に真面目な調査をしているのかな、と疑問を感じるところです。本来では考えがたい80%以上の支持率を弾いてきたりするのは、やはり変ですよね。それでも、露骨に低下しているのは、事実でしょう。

 小泉改革が、頓挫の危機に瀕しています。特殊法人改革が数合わせに終わるのは確実で、廃止という法人が別名の法人に看板掛け替え・・という例が大部分を占めるそうです。道路系公団の見直しさえも満額回答が引き出せずにいます。郵政改革も手が回らず、経済誌等の援護射撃も無駄にしています。今回の特殊法人改革を横目にみて、郵政族は安堵していることでしょう。
 小泉氏は、歴代首相を見渡しても、かなりの理論派です。改革の意志は強く、そのためのアイデアも持っています。切り口も鋭く、指示も的確なようです。それでも、それを押し通すだけのノウハウとスタッフがありません。人脈は薄そうですし、敵も多い。かつてのニューリーダーとの連携も図らず、守旧派にも寄り切られがちです。内閣総理大臣として権能は当然、自民党総裁としての権力も十分に発揮できないようです。

 そんな小泉氏の非力ぶりを象徴したのが、支持率低下の主要因である田中外相更迭でした。確かに、田中外相の失策は多すぎました。しかし、失策の主たる原因は、外相と足並みを合わせない外務官僚にこそあります。対内的にはともかく、対外的にも無茶苦茶な悪戯・悪あがき。日本を代表する官庁のエリート官僚とは思えない・・醜態を晒しました。数々の不祥事が露見しても悪びれず、大臣の行動をあざ笑い、外交の機能不全を招いたのは外務官僚にこそ責任があります。
 しかし、何をしでかすか分からない人・・田中女史の不気味さです。こういう人は、味方よりも敵の方がやっかいです。官僚お得意のカタに填める戦術が使えないと見るや、スキャンダルを撒き散らして無能を強調しようという戦術は、幼稚ながらも効果的だったと言えます。小泉内閣の「切り込み隊長」は、いつも小泉氏を悩ませたでしょうが、それ以上に反対勢力を悩ませたことでしょう。

 結局は「ケンカ両成敗」という理屈の通らぬ理由で、外相と外務次官を更迭しました。ケンカ両成敗ならば、相当数の高級外務官僚が更迭されるべきでしょうが、結局は次官のみ。事務次官は余人を以て代えられるので、外務官僚の圧勝です。新しく着任した川口女史も大変でしょう。外務省改革は大きく遠のいた印象を受けます。故事に喩えるなら、小泉首相は「諸葛亮」で、田中外相は「馬謖」。泣いて「馬謖」を斬ったものの、小泉改革の限界を露呈する結果に終わりそうです。
 さて、経済危機を抜け出すどころか、出口への方向性さえ明確に成りません。大手流通を形ばかり整理しましたが、総合電機が次なる爆弾になり始めています。昨年までは絶好調であったはずの総合電機各社。半導体・通信・コンピュータの急ブレーキにより、日本を代表する優良企業から、日本を揺るがす不良企業へと・・急降下中です。まもなく年度末決算を迎えますが、その動向次第では経済危機の深化が進みそうです。

 さて、血の出る改革どころか、皮膚さえも削れない小泉改革。かけ声とは裏腹に、もう限界線が見え始めています。米国ではアフガニスタン紛争を逆手にとって、経済の浮揚を始めているにも関わらず、日本では何一つ改革できないままです。このまま小泉内閣に対する国民支持が下がっていけば、さらに改革は困難になるでしょう。その先に守旧派が謳歌する時代はなく、日本経済の破綻、大量の失業と治安悪化、経済三流国への転落・・が見えてきます。
 そんな時代の足音が、そろそろ聞こえてきませんか?

02.02.11
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