前頁へ  ホームへ  次頁へ
政治の研究No.107
デノミネーション

 デノミネーション・・・正しくは「通貨の呼称単位」のことを指すそうです。日本的には「通貨呼称単位の変更」というニュアンスで使われ、「デノミ」と縮めた表現も使われています。一応は日本的な意味合いで、デノミと書きますね。

 日本の政界ではデノミ待望論が強いようです。ニセ円札が出たり、珍五百円玉が出たりする予定ですが、それに加えてデノミを実施する意向のようです。自自公の中で一番に熱心なのは自由党です。しかし自民党の金融問題調査会でも議論されているようです。大蔵省も研究を始めていると聞いています。しかし、今本当に必要なことなのでしょうか?
 政治家さんは、日本のステータスに興味津々です。1ドルは約1ユーロです。なのに日本円は約100円で、桁数が多いのは負い目に感じるようです。でも、1セントは約1円ですから、決して負い目を感じる必要など無いと思うのですよ。最近はロシア(3桁)や旧ユーゴスラビア(4桁)で大幅なデノミが実施されましたが、これは紙幣の重さで取引が行われる現実を是正するためのものでした。1923年のドイツでは、12桁のデノミが実施されています。しかし、日本はそんな状況にありません。
 もし仮に100円を新1円に切り替えたとしても、新1円未満の通貨単位は必要になります。新1円=新100銭とするか、新1円=新10銭とするか、いずれにせよ新しい通貨呼称が必要になり、不便なだけだと思います。円未満の単位は省略して諸税を取らない方法もあるかも知れませんが、便乗値上げなどを生んでインフレを引き起こす危険が高まります。

 デノミが経済にプラスに働くなんてことを平気で言っています。しかし第100回二千円札に未来はあるか」で書きましたように、デノミで潤うのは一部の業界だけです。印刷業界、端末業界、ソフトウェア業界、販売機業界・・・でしょうか。これらの業界でも、技術開発費ほどの旨味を得られるかどうかは難しいところだと書きましたね。そして金融機関や流通が著しい打撃を受けるとも書きました。
 またデノミが導入されると、会計回りが大きな混乱を生じます。これは事業会社全体に大きな問題を引き起こします。何より会計制度の不連続性が発生することはハイリスクです。まず簿記会計が基礎根底からひっくり返ります。00なんて表記が登場するかも知れません。当然ながら会計ソフトなども総入れ替え、有価証券報告書も一新して、デノミ前の財務諸表もデノミ後は読み替えが必要で、面倒ですね。
 それよりは、新通貨オブチでも作って、「1オブチ=100円」などとしてみましょうか(ニセ円札は20オブチ札、珍五百円玉は5オブチ玉となります)。これなら簿記会計の大きな混乱も回避できます。何より通貨オブチを使いたくない人は、引き続き通貨円を使えば良いのですから、安心ですよね。新通貨誕生で気分が一新され、関係業界もまずまず潤い、人望ある首相の名前が21世紀の日本に生きるわけです。

 まあ、冗談はともかく。政府・与党が真剣にデノミの研究を始めているとすると、別の意味での心配があります。通常、デノミはインフレの最中に行いません。インフレが終息してから実施されるのが普通です。1920年代のソ連では一時期、インフレ中に3度もデフレをやり直すことになりました。市場の混乱が拡大したことは想像に難くありません。しかし、未だインフレの兆しが無い日本でデフレを検討するとは・・・?
 日本国の借金は、今年度も来年度も増え続ける模様です。際限のない赤字国債と国税の無駄遣い・・・巨大な国家債務を抱える危機は過去にもありましたが、いずれも強烈なインフレの発生によって、乗り越えて来ました。インフレの結果、国民は高度成長という贋夢を手に入れました。国家債務は相対的に小さくなり、国家の財政破綻は回避されたのです。しかし結局は、貧乏人の小金が価値を失い、金持ちの資産が価値を拡大しました。政府・与党は再び、インフレを招いての国家債務圧縮を狙っているのかも知れません。
 近頃は聞かれなくなりましたが、財界では調整インフレが待望されました。ポン太個人としては、毎年低率のインフレは必要だと考えていますが、政策的に急激なインフレを招くような、調整インフレには反対です。しかし調整インフレを行えば、多くの赤字体質企業が息を吹き返す余地があります。残っているカードでは、魅力的な選択肢の一つなのかも知れません。何よりも政治家たちが生み出した放漫経営の不利も解消できるのですから・・・万々歳ですね。

 調整インフレによって勢いづくインフレ、それに伴う通貨価値の相対的低下を調整すると称して、デノミの実施。現在の政府・与党が狙っているのは、そんなところでは無いのでしょうか。果たして調整インフレとデノミを併用して、日本経済は立ち直るのか。そんな暴挙を果たして、国民や諸外国は黙っているかどうか。官僚や政治家の地位は安泰か危機か・・・そんな打算を抱きつつ、予防注射のようにデノミ論をバラまいているのが、現状なのかも知れません。

99.12.27

補足1
 親愛なる小渕首相。新通貨オブチはジョークです。面白いからと採用しないで下さい。それから新通貨ブッチ・新通貨ノボルとかも二番煎じですので、使わないで下さい。

99.12.27

補足2
 週刊「ダイヤモンド」2000/1/1号によれば、2000年度3月末の国債発行見込みは、建設国債9.4兆円、赤字国債23.2兆円、借換債53.3兆円の合計86兆円の見込みだそうです。これによる累積残高は344兆円にも成ります。1998年3月末の国債発行額は、合計57.9兆円だったので、2年間で28兆円も増加する計算です。国内総生産(GNP)に占める国債発行額の割合も6.3%から7.8%へ急増し、一層の国家債務拡大になりますね。
 以上は国債に限っての話ですが、広義での国家債務は2000年3月末で501兆円にも達し、1998年3月末の395兆円、1999年3月末の438兆円から比べてもハイピッチな伸びであることが分かります。現在のところ景気対策に投入している多くの見せ金がありますが、これらの見せ金が無事に戻ってくる可能性は微妙で、債務返済能力にも陰りがあります。やはり調整インフレ→デノミを狙っているのでしょうか・・?

99.12.27

補足3
 読売新聞99/12/17夕刊によれば、デノミの目的は(1)高インフレで損なわれた単位通貨の価値の回復[ロシア・旧ユーゴ・中南米諸国]、(2)通貨価値への信認の回復[1920年代のドイツ]、(3)自国通貨を他国通貨よりも高く設定し直すことによる国威の発威[1960年代のフランス]、(4)デノミ後の単位通貨価値の再調整、の4つに大別できるそうです。日本の場合、(3)を目指しているという話に成っています。
 またデノミの実施の前提は(1)為替相場の安定、(2)物価の安定、(3)企業の収益状況が極端に悪くないこと、(4)政治社会情勢の安定、(5)国民的理解の浸透、の5つになるそうです。今の日本は(2)ぐらいしか充たしていませんが、これさえも先行き不透明ですね。

99.12.31

補足4
 補足3に紹介した新聞記事によれば、硬貨や札の変更費用を含む総コストは2.4兆円で、生産の誘発効果は7.4兆円に達するそうです。またGDPを0.8%押し上げ、雇用を40万人分創出する効果もあるそうです。いずれも試算は和光経済研究所によります。7.4兆円の負担を政府がするのなら良いことですが・・・。

99.12.31

補足5
′獅Q日にユーロは、1ユーロ1ドル割れを起こしました。1月には1ユーロ1.18ドル台でしたから、大幅な下落です。欧州経済は上向いてきているのですが、米国の経済成長の方が顕著であり、ユーロの安値振れを招いているようです。その後、1ユーロ100円割れが瞬間的に記録され、混迷の度合いを深めました。年末に向けては、日本の金融当局のコメントなども好感された、若干切り返しているようです。

99.12.31

補足6
 補足2の補足です。朝日新聞99/12/20の夕刊が面白いデータを載せています。歴代首相の国債発行額比較で、小渕氏が84兆円でトップ、中曽根氏が65兆円、橋本氏が64兆円、福田氏が37兆円、村山氏・鈴木氏が23兆円、宮澤氏が21兆円と続きます。意外にも田中角栄氏は4兆円。
 一番の戦犯は100兆円未満だった残高を一気に倍増させた中曽根氏、赤字国債の引き金を引いた三木氏・・・ということになるでしょうか。連年の積極型財政などと発表されていますが、完全な借金依存型財政です。ここで減税議論も盛り上がっていますが、果たしてどうしたいのでしょう。やはり借金棒引きを狙っているのでしょうか。

99.12.31
前頁へ  ホームへ  次頁へ