6月1日に組織犯罪対策法が衆議院で可決されました。本法案は昨年の国会で継続審議となった曰く付きの法案でありまして、昨年は公明党が反対派サイドだったため継続となりましたが、今年は賛成派に寝返ったことで衆議院での可決に至った次第です。まさにパワーバランスによるコペルニクス的転回に成ったわけです。
昨年の自民党は散々でした。民主党の躍進によって参議院で過半数を割り込んだため、随分と不本意な制約を受けました。その巻き返しとして打ち出したのが、自自連立であり、自公提携でありました。
もともと自由党と公明党を繋ぐパイプは太く、新進党時代に蜜月時代を演出したことは記憶に新しいですね。自民党と公明党のパイプもありましたが、どちらかというと細い上に非主流派とのパイプが主でしたので、なかなか提携を模索できなかった様子です。
そこで自民党主流派は、同じ根っこの自由党を連立というスタイルで吸収し、そこへ「木に竹を接ぐ」ような自自公連合を構築することを意図したわけです。天下の愚策と呼ばれた地域振興券を実施した布石もようやく生きてきました。他の野党と公明党の関係が険悪に成ってきたことも理由にあります。
組織犯罪対策法は、公明党のバックにある創○学会にとっても危険な法律です。それでなくとも公安のマークは強く、同法の施行に伴い様々な圧力が増すのは間違いありません。もしも年内に解散総選挙となれば自民党が大躍進して独力で過半数を占める危険があったため、適用犯罪を限定するという譲歩を引き出して、法案成立に荷担する途を選択したようです。与党サイドに身を置けばとりあえず安心ですし、いくつかの裏取引が成されている可能性があります。
いずれにせよ組織犯罪対策法を一つの象徴として、自自公連合が進んでいくことは間違いないでしょう。注目されるのは今後の動向です。自由党は連立を組みましたが、公明党は閣外協力に徹してくると思われます。自由党を連立で取り込んだ理由は、自由党議員が閣僚ポストを欲したからに他なりません。
もともと自由党議員が小沢党首に従ったのは、いずれ小沢内閣で閣僚ポストを得るためでした。それがいつの間にか弱小野党に転落してしまったため、議員達は慌てて自民復党を考えたわけです。しかし復党しただけでは冷や飯を食わされるのは確実で、当選も期しがたい。だからこそ、名分上は連立として吸収される途を選んだのです。いずれは新自由クラブや新党さきがけと同じコースを辿るでしょう。
それに対して公明党議員には連立のメリットがありません。閣僚になってネームバリューを上げなくても組織票があるので困りません。小選挙区制はネックですが、自民党候補と選挙協力というバーター取引が可能です。敢えて自民党と運命を共にしなくとも、必要な公約だけ必要なときに果たせれば良いわけです。○価学会とは関係のない有権者の人気を集め、国政・地方行政で一定の勢力を保持できれば要求は満たされるのですから。
自民党にとっても、自由党とは根が同じでいずれ同化することが可能ですが、公明党は異質に過ぎます。党内で拒否反応が出ないとも限りません。何しろ支持母体には創○学会と対立する組織を抱えていますし、反発を抱く党員も多いのですから、閣外協力が一番望ましい形でしょう。
自民党には、今期国会で通しておきたい法案がまだまだあります。来るべき参議院選挙へ向けて来期以降の政略も練る必要があります。そのために、かなりの譲歩を行いつつも強引な国会運営を演じていきそうです。果たして利用しているのはどちらで、利用されているのはどちらなのでしょうか。少し不安を感じますが、しばらく静観して行くしかありませんね。
99.06.02
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