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政治の研究No.79
大人に成れない民主党

 組織犯罪対策法案の衆議院審議に入る前段階である衆院法務委員会は、衆院本会議への送付を可決しました。5月28日のメディアは、こぞって自自公による強行採決を非難するコメントを掲載しましたが、メディアの報道姿勢に関わる法案だったとはいえ、野党に対する贔屓の引き倒しでしょう。自自公連合は委員の過半数を占め、法的に認められた方法で可決したのですし、反対に票を投じるべき野党委員は「審議が尽くされていない」として、委員会を欠席したのですから。
 さて、同法案は6月1日に衆院本会議で可決されました。やはり民主党と社民党は欠席し、議員としての責任と義務を放棄しました。同じく反対野党の共産党は、出席して反対に票を投じました。欠席と反対票といずれが選良として大人の行動なのか、説明するまでもありませんね。

 民主党は二大政党制の一極として期待された責任政党であったはずです。しかし本会議を欠席するようでは無責任政党ですね。第37回で「問われる政権担当能力」というレポートを書きましたが、これで政権担当能力の欠如も曝してしまいました。今回は社民党と同一歩調を取ったことにより、民主党は55年体制における社会党路線を歩むのではないかと思われます。つまり万年抵抗野党路線です。
 たしかに今期国会では充分な審議がされないままに可決されていく重要法案が多いように見受けられます。自自公連合の成立により政府・自民党案が通りやすくなったという背景もあります。しかし、それ以上に民主党の頼りなさが前面に出ているのが問題です。

 自分の言い分が通らないからと言って集会に欠席するのは子どもと同じです。かつてなら、座り込みやバリケード、掴み合いのケンカをしてでも採決阻止に挑んだものです。こうした戦術が有効であり大人の行動であるとは言えませんが、欠席よりは大人でしょう。そこまでの努力が出来ない民主党は、あまりにも幼稚であります。
 政治は一種のパフォーマンスです。それは選挙活動に限りません。有権者は、日々の議場や会議室における議員の活躍に期待しています。たとえ多数決では勝てない野党議員でも、精一杯有権者の地位向上に活躍してくれることを願っています。与党支持の有権者でも野党議員の活躍によって健全な国政が行われることは歓迎しています。
 今は数多くのメディアもあり、議員や政党の活躍は逐一有権者の前に曝されます。その最大のチャンスに責任放棄、敵前逃亡などとは恥ずかしくないのでしょうか。本会議には出席し、反対票を投じる。国民からは虚仮にされましたが、牛歩戦術だってありますし、長演説をうつ方法もあります。議長のマイクを奪うことも、ヤジを飛ばすことも、野党は少数でも手強いと言うところを行動で示すべきだったのです。

 日本の政治は少しずつ異常な方向へ進んでいる気がします。国民の権利を制限しかねない法律が次々に可決されています。憲法に違反するような条文も罷り通りつつあります。いずれ政治は翼賛化されて、再び暗い時代を迎えるのかも知れません。それを正せるのは、責任能力のある健全野党だけです。民主党に健全野党たる資格がないのなら、賢明な有権者達の手で新しい野党を育成する必要があるのでしょう。

 野党議員の方々に申し上げます。早く大人になりましょう。責任の持てる健全政党へ脱皮すべく、何事も自分たちで考え行動できる知恵を身につけましょう。行動とその結末を見通し、価値のある行動を取りましょう。有権者は何を求めているのか、広く国民はどのような生活を送るべきか、政府・与党は正しく国民のための政治を行っているか、それを見据える目を持ちましょう。
 メディアを味方に付け情報を発信しなさい、広く理念を公開し常に理念に従う行動を示しなさい、それがあなた方の責任と義務です。

 対する与党議員の方々にも申し上げます。有権者に顔向けできる政治活動をしていますか? 党の判断に従うという口実で有権者を裏切っていませんか? 今自分が投じる一票一票が特定の誰かのためだけになり、自分の大多数の有権者のためには成っていないかも知れませんよ。
 政治はゲームでありません。単なるショーでもパフォーマンスでもありません。政治とは「国家の主である国民さま」の権利行使を代理する崇高な行為なのですから、代行者としての責任と義務を果たして頂きたい。

99.06.02
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