前頁へ  ホームへ  次頁へ
政治の研究No.68
軍国化への崖っぷち

 新ガイドライン関連法案・・・恥ずかしいことに、労働組合が騒ぎ始めるまで特段の注意を払っていませんでした。そして愕然としました。こんな重大な法案が充分な議論もされないままに、今国会で成立しそうであるとは・・・信じられません。とくにマスメディアの沈黙は素晴らしく、国会での動きを淡々と報道するばかりで、大した議論も起こしていません。一体、どんな秘密取引があったものなのでしょうか。

 日本の政治家さんは軍隊を持つことに憧れているようです。軍隊を持つということは、武力を行使する権利を有すると同時に、武力を行使せざるを得ない義務を生じます。武力を保持することによって自衛の権利が生じますが、場合によっては交戦の義務を負うわけです。武力を備えることによって近隣諸国との緊張が高まり、軍拡競争を招くことも多々あります。不必要に仮想敵国と見なすことによって、不必要な緊張を招くこともあります。武力を保持することには勇気が必要であり、それを行使することには一層多大な勇気が求められます。
 さて、日本は二度同じ過ちを冒しています。日清・日露戦争は自衛の戦争ではありませんでした。明かな対外侵略でした。当時の日本以上にロシアの方が侵略精神旺盛であったとしても、日本軍が踏み荒らしたのはロシアと関係のない朝鮮・満州だったのですから言い訳にも成りません。そして、全くの我が儘から太平洋戦争を引き起こしました。自己肥大化の進んだ関東軍の独断専行という形で始まり、結局は陸軍全体が暴走を拡大した戦争でした。結果はアジア諸国を戦渦に巻き込んで、アメリカによる太平洋支配を確定させるという役割しか果たしませんでしたが・・・。

 ともかく多大な犠牲を内外に強いてしまった代わりに、日本は軍隊を持たない平和国家に生まれ変わるはずでした。武力を持たないと言うことには勇気が必要です。武力を保持・行使する勇気よりも膨大な勇気が、です。日本にも米国にもその勇気がありませんでした。米国は必要に迫られて日本に駐留軍を置き、日本の国防を引き受けることになりました。全くの義侠心で始まったことです。
 ところがアジアでの緊張が高まったことから、駐留軍の増強と、日本国内での物資調達の必要に迫られました。朝鮮戦争での話です。やがて日本にも固有の武力を持たせる必要が生じ、自ら押し付けた日本国憲法第9条の解釈を曲げさせてまでも、警察予備隊、のちの自衛隊を創設させました。そして東西冷戦が訪れ、自ら世界の警察を買って出た米国は、駐留軍を日本の国防のみでなく、アジア全体の国防を担う前線基地と位置づけました。自ずと自衛隊にも後方支援の役割を担わせる必要を生じ、米国は度々その機会を狙ってきました。幸いにも日本の政治家さんは軍隊を持ちたがっていたので。

 これまでの米国の政策としては、自国分だけでは回収できない兵器開発費を捻出するため、他国に合法的に兵器輸出をするというものでした。それは同盟国に援助をするという名の下に、欧州ではNATO軍に、日本では自衛隊に高い兵器を買わせてきました。それによって自国の兵器産業を育成し、より強力な兵器を手に入れ、より強力な軍隊を保有することに専念してきたと言えるでしょう。ところがソヴィエト連邦の崩壊が大きく目測を誤らせました。一極の離脱により平和ムードが漂い、軍縮の方向へと各国が動き始めたためです。各国ともに重すぎる軍事費に耐えかねていたのですから当然です。また米国のみ肥え太ることに不満もあったのでしょう。
 ところが呑気者が一人ありました。東アジア諸国全体が費やす軍事費の過半数を出費し続ける日本という国があったのです。米国自身、多額の財政赤字を抱えて軍事費は削減したいところです。その不足分を自発的に埋めてくれると言う親切な国が見つかったのです。自国領土を以て米国の浮沈空母と称し、後方支援と称しながら駐留軍の経費の大半を負担し、なおかつ地域紛争には大金を拠出する頼りがいある国だったのです。
 しかし日本には、憲法第9条という、自ら填めた足枷がありました。何度か嗾けて改憲させようとしましたが、大多数の国民に阻まれて実現できませんでした。政治家は戦争バカでも、国民はバカではありません。そもそも日本の政治家は戦争の悲惨さを知らな過ぎます。彼らの何人が出征をし、彼らの何人が戦争で親族を亡くしたのか調査が必要でしょう。国民平均よりもはるかに少ないことだけは断言できます。悲惨さを知っていれば、ここまでお人好しには成れないのですが・・・。

 そこで新ガイドライン法案の出現です。あくまで後方支援を目的とした・・・との触れ込みですが、とんでもない内容です。これについては後日に検証しましょう。注意が必要なのは、民間徴用と自衛隊の海外進出です。それから後方支援は事実上の戦争行為ということです。日本が米軍の補給線を支えるならば、間違いなく敵国と認定されて攻撃対象となります。日本国土にミサイルが降り注ぎ、民間航空機や民間船舶が潰される日も遠くありません。ともかく、阻止をしなくてはいけません。とりあえず、日本の国会議員全員を前線に送り込んで見ましょうか、国会ごと。

99.05.01
前頁へ  ホームへ  次頁へ