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政治の研究No.65
どうするの? 神戸空港

 いよいよ統一地方選が始まります。注目されるのは、神戸市議会議員選挙の動向です。昨年11月17日市民30万人の署名で直接請求された住民投票条例案を圧倒的多数で否決した議会に審判が下されます。前回の選挙は震災直後でもあり、争点は震災復興と空港建設反対でしたが、反対を口にしつつ当選した議員の多くが、その後賛成に票を投じ、条例案を一蹴したことを有権者がどう受け止めるかが見物です。今回も空港建設反対を主張して当選できる現職が多いとは考えられず、今回は震災復興の実績や21世紀へのビジョンを掲げて勝負を挑んでくるものと思われます。
 世論調査では神戸市民の60%が反対しているという神戸空港ですが、これが事実だとすると空港建設に賛成した議員の半数は落選するはずです。しかし市民の政治への関心は薄れつつあり、投票率が60%程度に留まるなら概ね現職が当選し、神戸空港建設は既定の路線として確立されるでしょう。本件については週刊ダイヤモンドが精力的なレポートを不定期で掲載しており、3月13日号にも「全国へ波紋「神戸新空港」問題、推進市議会と民意のズレ拡大へ」と題するレポートがあります。

 神戸商法を確立した宮崎辰雄前市長は1989年に引退しましたが、その際「(1972年の)空港誘致に反対したのは一世一代の不覚」と発言したのだそうです。1970年代に関西新国際空港の建設予定地に挙げられながら、騒音公害や環境汚染を理由に議会が反対決議をし、宮崎氏も選挙を意識して空港反対を表明しました。この結果、新空港は泉州沖に建設されて関西国際空港となりました。。。ところが、技術革新で騒音公害や環境汚染が改善され、あわてた神戸市は神戸空港計画をブチ上げたということだそうです。
 当初、神戸空港構想は不味い計画でも無かったようです。バブルの絶頂期に差し掛かった1990年当時、関西国際空港の発着処理能力が16万回で、大阪(伊丹)国際空港は閉鎖される予定だったため、関西国際空港の一部機能を肩代わりする計画は妥当に見えたのでした。しかし、大阪国際空港の閉鎖は撤回され、関西国際空港は二本目の滑走路を整備して発着処理能力を大幅に向上させることが決まりました。当てにしていた地方空港はいずれも奮わず、相互に路線を開設しても利用客が望めないことや、現在の過当競争によって採算性の良い航路が確保できないこと、が明らかになってきました。しかし既に第3回第4回で指摘したように、一旦計画した事業は必ず実施する神戸市の体質から考えて、このまま邁進する可能性が高いのです。
 しかし需要面での環境悪化に加えて、事業費負担の過大さ、事業維持費の重い負担などが指摘されています。「計画を立てた以上やる」などという理屈は認められません。市民一人当たりの起債額は200万円を超えて全国ワースト1だそうです。これに総事業費が1兆円近い空港建設及び周辺整備事業を実施するのは狂気の沙汰です。神戸市は値下げできず売却できていないポートアイランドの公用地が高値売却できると読んでいますが、もはや企業誘致の時代ではなく、まして本来の海運が大幅に犠牲になる以上、計画倒れとなる可能性が高いところです。ツケが市民に回されるのは確実です。

 なぜ空港建設を止められないのか。「政治の研究」でも何度か検討してきました。政治家へはリベートを含む利権、財界には短期的経済波及効果、そして雇用対策なのでしょうか。神戸市の開発事業は依然として山を削って海を埋め立てて平地を生み出すことです。ある意味では海に土砂を捨て続けなければいけない宿命を負っています。このためポートアイランドや六甲アイランドが造られたのですが、次は空港用地でも造らないとやっていけない訳です。仮に空港建設が中止されても、ポートアイランド沖の埋立事業は継続されるでしょう。
 しかし神戸市にこれ以上の平地は必要でしょうか。震災の余波で減少した人口は戻らず、すでに北区や西区で開発した団地もまだまだ余裕があります。しかも海岸部でも空室の目立つ住居ビルが多いところです。とにかく埋立事業そのものを止めるべきです。そして事業費用を起債の繰上返済に充てて財政再建に取り組むことが必要急務です。雇用問題を楯に取ることは許されません。公共事業で雇用を支えることは正しい行政の姿勢でありません。事業そのものの採算見通しを欠き、事業立ち上げ後も黒字化が見込めない物は造るべきではないのです。

 以上のような点は既に議論され尽くしているようです。空港建設反対派は着実に勢力を増しているようです。あとは「市民の声」を「市民の行動」へと変え、まずは市議会に、ついで市長に不信任を突きつけることが必要でしょう。ともかく来る4月11日、お為ごかしの政策に惑わされず、口先だけの空港建設反対を唱えるような現職は引きずり下ろして頑張って欲しいと思います。神戸市を市民の手に取り返すことは、元市民であるポン太の願いです。そして震災で死んだ家族達の願いでもあります。

99.03.25

補足1
 神戸空港と同様に必要性が問われている空港計画に「びわこ空港」があります。滋賀県では空港建設の是非を問う住民投票条例案が県内の市民団体から提出されましたが、県議会はあっさりと否決しました。選挙の時だけ有権者に頭を下げる姿勢は相変わらずです。

99.04.02

補足2
 国土交通省は、2003年度から地方空港の新規建設や拡張を停止する決定をしました。新規建設では、びわこ空港(滋賀)、播磨空港(兵庫)、小笠原空港(東京)、新石垣(沖縄)の4つが対象です。空港建設費の財源である空港整備特別会計は、各空港の収入である着陸料から経費を引いた利益が計上されるため、赤字になる地方空港が増えれば資金繰りができなくなります。
 実に当たり前のことながら、地元建設業界に利益誘導を行いたい政治家の暗躍もあって、補足1のような事態もありました。同様の理由で滑走路延伸などを計画していた7空港の事業も白紙になりました。いずれも利用予想が甘く、実現達成つまり黒字化が難しいという判断です。国土交通省は、今後の新設・拡張などの要望は、地元住民の同意を事前に得ることを義務づける新制度も導入したいそうです。

 非常に残念なことながら、神戸、静岡、能登(石川)、百里(茨城)の4空港の新規建設は続けられるそうです。着工済みであるが理由ですが、更地だけ作って売却等をするだけでも、随分と無駄は削減できると思うのですが。
 なお、神戸空港については国土交通省が伊丹空港の規模縮小を打ち出したことにより、少しは恵まれるようです。利便性の高い伊丹を縮小し、関西空港を救済するのが狙いですが、神戸中心部からバスで50分程度の関西空港を利用せず、神戸空港を利用する奇特なユーザーが多くあるとは思えません。

02.11.30
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