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政治の研究No.03
行き詰まりの「株式会社神戸市」

 かつては開発王国神戸市とも株式会社神戸市とも呼ばれた兵庫県神戸市です。そこは、安い土地を買い占め、あるいは新たな土地を創り出し、その土地を開発・売却して多額の利益をもたらしてきた手法で知られていました。

 まず西部です。山を切り崩して横尾団地や名谷団地を生みだして地下鉄を作りました。駅前には巨大なショッピングモールを作り、都市機能を整備して膨大な人口流入を促しました。その後学園都市を開発して地下鉄を延伸し、いくつかの大学や高専を誘致してつくばにつづく学園都市街を目指してきました。その後西神ニュータウンを切り拓き、新たな観光スポットを併設して西部開発の集大成を成しました。

 次に南部です。名谷や妙法寺付近の山々、六甲山系の北区側を切り崩した土砂を使い、神戸の海にポートアイランドという人工島を創り出しました。ここではポートピア’81という都市博覧会を開催し、都市博覧会ブームの先駆けとして多大な成果を収めました。そして数十億単位の黒字金を残したのです。全国の諸都市がこれに習ったが、比肩するほどの利益が出た博覧会はありません。ポートアイランドはのちに、団地とアパレル企業向けビルディングと海運倉庫が建設され、一大都市が整備されました。同島の大動脈であるポートライナーは今ひとつ不人気ですが、同島の開発も成功といえるでしょう。その後六甲アイランドが作られましたが、こちらは計画通りの開発が進んでいません。

 さらに北部です。地下鉄で長いトンネルをぶち抜いて北区谷上まで北神急行鉄道を作りました。これは阪急電鉄系ですが、市営地下鉄も乗り入れています。北区から神戸中心部までの通勤が便利になったことので、並行して開発した藤原台団地ほかの住民が神戸に流入することを期待しました。しかし、立地条件の割に価格が割高であり、神戸勤務であって北区団地に移り住む酔狂な人は少なかったようです。むしろ三田経由で大阪通勤する人が増えて、大阪のベッドタウン化してしまいました。しかも人口は大幅に増えませんでした。北神急行は相対的に交通費は高いので、北区区民の多くは山岳電鉄の神戸電鉄を利用しています。あまり便利には使われていません。

 株式会社神戸市の実績はまだまだあります。かつて神戸市内に乗り入れていた4つの鉄道を相互に接続する神戸高速鉄道を作りました。駅はわずか4つです。自前の車両は一切持たず、各社車両に乗り入れさせてショバ代を掠める鉄道です。神戸市の外郭事業の一つで未だにドル箱です。また新開地と高速神戸を結ぶメトロ地下街を作り、多くのテナントから賃料を稼いでいます。上記の団地群の動脈は地下鉄とバスですが、いずれも市営です。とくにバス系統の網の目状整備は東京都営バスよりも優れています。また一時は新長田にスーパーを経営していました。その他観光地の新設に余念がなく、異人館街、中華人街(南京町)、メリケンパーク、ハーバーランド、神戸ハーブ園、ワイン城とチーズ園を整備しました。加えて貨物取扱量が日本一の神戸港は、そのショバ代が高いことでも有名です。その手法はまさに株式会社でありました。

 ところがこの経営手法にも綻びが生じています。まずインフレの失速です。かつてのように10年前の土地が二倍三倍に値上がりが見込めなく成りました。逆に開発費は予算の数倍に膨れ上がることが多く成りました。つぎに税収の減少です。阪神大震災を境に10万人以上が流出し、数万人が仮設住宅に暮らしています。このため当初見積もった開発予算が確保できなくなりました。そして住宅需要の減少です。新たな団地住宅が整備されても働き口がないため人口が増加しません。旧市街地でも住宅の高層化が進んでいますが、入居者不足に喘いでいるようです。
 そんな神戸市が起死回生を狙ってぶち上げたのが神戸空港構想ですが、これは次回に譲ります。

98.01.28
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