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政治の研究No.54
やる気のない少年教育(2)


 では、続編です。地方行政が本気で少年教育をする気があるのかどうか検証したいと思います。

 一例で恐縮ですが、神戸市における少年教育を考えたいと思います。まず神戸市には青少年課という部署があり、市内の青少年活動を統括する権限を与えられています。その極めて少ない予算の内から、青少年育成事業の自主展開と補助支援を行ってきました。
 まず自主事業は、「神戸市青少年会館」の運営、宿泊施設「若者の家」の運営、青少年参加イベントの開催などがあります。しかし、青少年会館のイベントで予算を喰うものは禁止、宿泊施設は老朽化を理由に閉鎖を決定、青少年参加イベントは参加者減少を理由に年々減少・・・と散々なものです。
 つぎに補助支援事業は、青少年団体の弱体化を理由に充分に機能していません。もちろん補助金などに割ける予算が小さいということも理由にあります。しかし毎年、青少年団体の人数は神戸祭りや海の日のパレード(震災後は一本化されました)へ駆り出され、24時間TVや博覧会、成人の集いなどでも何かと便利に使われています。弁当などは支給されるものの、それ以上の援助は梨の礫です。青少年活動に力を入れているように見せかけていますが・・・使えるだけ使うだけの体のいいパシリであります。
 それでも市内の青少年団体が神戸市に協力的なのは、活動の場として先述の「青少年会館」を提供しているためです。ここには、貸ホールや工作室,視聴覚室,そして複数の貸会議室があります。もちろん市民に開放している施設ですが、優先的に市内の青少年団体に提供してくれています(登録団体の利用は無料、一般利用は有料)。もちろん見返りとして、会館リーダーというスタッフに人員を提供していますし、相談員に青少年団体の指導員を提供しています。また市内の青少年団体の連絡母体として「神戸市青少年団体連絡協議会」という団体があり、これも一室を宛われていますが、代償として会館リーダーの統括をさせられています。このようにバーターながらも活動の場を与えられるが故に神戸市に協力しているに過ぎません。

 しかし、神戸市の青少年活動への仕打ちは酷いものです。「青少年会館」の入居する神戸市勤労会館ビルは、震災の影響を大きく受け、薄い外壁に巨大な亀裂が入りました(築15年の近代的ビルなのですが)。このとき初めて手抜きビルであることが判明したため、震災後かなりの期間、閉鎖されました。この際、ビル建て替えであれば「青少年会館」の廃止を打ち出していた言われ、「協議会」以下は戦々恐々としていました。そして、先述の「若者の家」の閉鎖も発表されました。もともと山中の不便な場所にありましたが、「協議会」の調整の下でまずまずの稼働率を上げてきました。しかし一般利用が極端に少ないことや、上下水道施設の未整備などで維持費が嵩み、閉鎖が決定されました。「協議会」は抗議しましたが、結局登録団体の協力を得て自主管理することに決まりました。神戸市の言い分としては、施設の立地場所が市有地でなく、施設の建て替えができないのだと主張して譲らず、代替施設の提供もありません。ほんの1億円程度を青少年活動に使わないのです。
 さらに言えば、青少年課が青少年活動を行う能力を失っているのも問題です。かつては青少年活動に理解のある職員が配属されていましたが、最近では活動に理解を示そうとしない職員が増え、予算獲得や活動アピールに一切協力をしなくなったのであります。活動に理解を示す職員を配置すると煩いという考えが働いているのでしょうか。このため青少年参加イベントも激減してしまったものと考えます。

 自治体によって、青少年団体への理解には温度差があるでしょう。横浜市は比較的熱心だと聞いていますが、やはり少数派でしょう。その割には「少年教育の場としての青少年団体の活動には理解を示している」とか、「少年の閉ざされた心を取り戻す」とか、口先ばかりは格好の良いことを言っています。イベントになれば、何かと挨拶に来たがる首長もありますが、やはり行動を伴わないのは残念です。次回は国政レベルの話を少し論じてみます。

99.01.16
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