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政治の研究No.35
二代目 の 不 幸

 ちょっと話題がヤバいので、肝心な話は省略して書きます。また例によってアバウトな意見を書きますので、細かな点ご指摘を戴ければと思います。

 さて、初代は第二次世界大戦中、パルチザンを組織して戦い抜いた救国の英雄です。バックには二つの共産系宗主国があり、帝国主義真っ盛りの日本軍を撃破した後に共産国を作ったのは当然の流れでしょう。もともと此の地は古くから農業主体の民族でしたが、必ずしも耕作に適する土地柄ではありませんでした。干ばつと洪水が交互に訪れ、常に食糧難、そして経済難に喘いでいました。しかし共産国であることが幸いし、二つの宗主国が争って援助してくれたお陰で、国民が最低限の生活ができてきました。しかし同一民族ながら分かれてしまった片割れと、一時は大喧嘩もし、双方の大物バックが互いににらみ合ったこともあって、軍備増強を最も優先する不幸に遭いました。
 その後一方の宗主国は空中分解して、穀倉地帯と不凍資源の多くを手放したため援助を呉れなくなり、もう一方の宗主国は敵対する片割れのバックと協調路線に転じて同じく援助を呉れなくなりました。不幸は重なるもので、偉大な初代は亡くなり、国際的には無名な二代目がかろうじて跡を嗣いでいます。政治的に無力とも言われた二代目が、現在もっとも国家元首に近い位置を占めていることは、現在では衆目の認めるところであり、そのパワーの源泉は圧倒的な軍事力にあります。それは賢明だった初代が築き上げて無事に二代目に譲り渡せた優位力でした。

 この国の初代は偉大でした。建国前には敵国と闘ってこれを排除し、建国後は大国に互した外交を繰り広げて国力を実力以上に見せかけました。その伝説とも言うべき高いカリスマと、外交上の成果による多額の援助を背景として、初代は内政に専念しました。内情を外国に見透かされないこと、国民に外国との格差を気付かせないこと、を目的として鎖国を実施し、本来で有れば計画経済の下で近代化が図られるはずでした。しかし不幸にも工業を興す技術力が不足し、宗主国から現金物資は得られるものの本当に欲しい物は得られませんでした。結果として軍備増強と軍事開発とに専念することになりました。近頃では精度の良い遠距離ミサイルも開発されたようです。
 強固な政治基盤と強力な軍隊。この二つを掌握すれば、ほとんど何でもできます。前者を維持するには情報をトップが独占することが必須で、大多数の政治家と一般国民は情報バカにするのが簡単な方法です。後者を維持するには絶対的な忠誠心の植え付けと、兵士を満足させるための食料支給が必要です。さらに国内産業の発達の遅れから、農家のあぶれ者を軍隊が吸収せざるを得ず、結果的に国家が面倒を見ることになりました。軍隊は雇用維持政策でもあったのです。初代は生涯二つを守り通したために、比較的穏便に二代目に権限継承させることができました。

 しかし宗主国が大幅な軌道修正をし、充分な援助を与えなくなったことが、二代目には不幸でした。彼の下に集まる政治家たちはイエスマンであるだけでなく、外部情報から隔離されてきたために世界情勢を正確に把握することが出来ません。したがって、政治上の強力な競争相手が出現しない反面、現状の問題を打開できる政治家も不在になりました。つぎに雇用対策として100万人以上抱えた軍隊は国の予算を大きく圧迫する以外、何の能もありませんでした。しかし解雇もできませんし、彼等を飢えさせることもできません。国民を餓死させてでも、兵士を食べさせる義務を負ってしまいました。それが一層国の体制を歪めてきたと言えます。初代はそこまで考えてくれなかったのです。少なくとも宗主国が二つとも資本主義経済に移行することが分かっていたなら、初代も何らかの手段を講じていたはずですが、まさに予期せぬ時代を招きました。
 一時期は鎖国の一部を解除して経済特区を作るなどして諸外国に理解を集め、当時は世界的に経済も安定していたために宗主国に代わって莫大な援助を受けることに成功しました。しかも原発の査察問題、ミサイルの試射事件などで、何度か危機に陥りましたが、辛うじて人道的な範囲の援助を受けることに成功しました。むしろ両問題をちらつかせて援助を引き出したと言うべきでしょう。ところが、ここへ来ての世界不況が再び援助中止の可能性を孕んでいます。もしも援助が停止すれば、兵士は飢えて暴動を起こし、国民は累代の農地を捨ててしまうでしょう。その結果、政治的優位も軍事的優位も消滅し、二代目の地位は危ないものに変わります。

 そこで、やむを得ずミサイルの試射事件を再度引き起こして、世界の耳目を集めました。これから破綻する国が遠距離ミサイルを持っているということは、非常に危険な話です。少なくとも射程圏の国々は質に取られたも同然です。とくに自前の軍隊を持たない国は、そうです。しかし目論見は外れて、軍隊のない国までが援助の無期延期を打ち出しました。完全に裏目に出たことになります。彼等にとっては威圧外交こそが最上策であるのに、今の国際政治ではもっとも下策であることに気付かなかったようなのです。二代目本人も知らなければ、とりまきも誰一人知りません。
 初代が残してくれた情報管制システムが、結果として有能な情報分析能力を持つ軍人や政治家を育てなかったという皮肉な結果となりそうです。二代目の不幸は、あまりにも初代が完璧に残したシステムを万能であると信じてしまったことに始まるようです。。。鎖国を止め、資本主義経済に移行することを考えてみてはどうでしょうか。しかしカリスマのないトップが大きな軌道修正を行うと、政治家や軍人、国民の強い反感を買ってしまうことも否定できず、二代目の命を縮めてしまうかも知れません。しかも世界経済は、この国の経済再建に手を貸す余力を既に失っている感があります。

 くれぐれも追いつめられた二代目が、周辺国を巻き添えにする一大軍事行動に転じないように、注意を払って下さい。ただし、週刊誌などの言う対日進駐はあり得ないでしょう。その軍事行動を起こすだけの資金が既に無く、日本を管理統治するだけの知恵も人員もカネもないのですから。やって略奪でしょうか。しかし、脅しを掛けて一層の援助を引き出す程度が限界ではないかな、と思います。

98.09.03

補足1
 二代目はミサイル発射ではなく、衛星打ち上げの失敗だったと言い張っているそうです。しかし衛星を打ち上げるロケットはミサイルと一緒なのだが、日本を狙うつもりは無かったという言い訳なのでしょうか。そのミサイルですが、二代目が事実上の国家主席になることの前祝いとの観測が濃厚であるそうです。ただし「国家主席」の名称は初代に与えたまま廃止をし、自身は国防委員長として国家を牛耳るのだそうです。やっぱりパパの否定はできないの?

補足2
 6月に片割れから贈られた牛500頭のうち15頭が死亡し8頭が瀕死の状態であるそうです。二代目の国では、牛を解剖してみたらビニールヒモや麻ロープが体内から見つかったから、片割れの陰謀だと主張しているそうです。「何のための陰謀なの?」って気がします。片割れ側もその主張は相手にしていないそうですが、農耕用に贈った牛を食べてしまった言い訳なのか、エサの手当が要らないような援助が欲しいと言っているのか、二代目からのシグナルが読めない・・・と悩んでいるそうです。

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