金の掛からない選挙をするために導入された、小選挙区制度です。現職にはかなり有利になったので、強力な対立候補がなければ金はあまり掛からなくなりました。ここで新人が勝利を掴むには莫大な金をつぎ込まなくてはなりません。新人が金をばらまけば、現職はそれ以上にばらまきます。そして中選挙区制のとき以上の金権選挙になるのです。一方で選挙区が小さくなり、選挙運動はラクになりました。他方で地元規模が小さくなり、資金吸い上げ、選挙後の資金回収が難しく成りつつあります。
選挙運動費はどこから捻出するのでしょうか? 議員の顔で借りて在任中に返済するのが一般的ですが、当選しても返済できないとなると議員を続ける意味がなくなります。まず議員先生が考えたのは公設秘書の増員でした。議員秘書には公設秘書と私設秘書がありますが、公設秘書2名には国庫から賃金が支給されていました。これを3名に増員して人件費負担を軽くしたわけです。資料がなくて申し訳ありませんが、年収1,000万円を保証したとして任期4年中で4,000万円の負担減となります。
つぎに導入されたのが政党助成金制度です。資金のない政党が、形振り構わぬ資金集めに奔走しないようにと、現職議員1人あたり年間4,000万円が支払われるという助成金です。任期4年中で1億6,000万円もの国庫負担となる計算ですが、これで利権政治が無くなったとは全く信じられません。政党助成金はあくまで政党に支払われるため、新進党の分裂やその後の集合離散のような混乱を生んでいます。支払われる助成金のうち何%が自分の選挙に使えるかに議員の関心は向いてしまい、虚々実々の駆け引きが繰り返されているのです。
そもそも政党は貧乏なのでしょうか? 答えはイエスです。政治資金が潤沢なのは共産党と公明党のみです。共産党は熱烈な支持者が多く、機関誌赤旗などの売上げも大きいです。公明党は創価学会のバックアップが大きいと聞いています。対する自民党は党員こそ多いものの、名目の党員が多いのも事実です。三木元首相の提案で党首公選制を導入した際、三木派河本氏が名目党員を大量に集めたエピソードが知られます。自民党は都道府県連を始めとして支部組織が大きく、人件費負担が大きいです。選挙の際には銀行から百億円単位の資金借入をするなど、台所事情は良くありません。まして他の保守政党は確たる地盤がないために、地方組織化の資金が必要です。日本新党の設立に細川元首相が5億円出資したこと、民主党設立の際に鳩山家の資産が当てにされたことなど記憶に新しいです。
今では党員確保が難しいですね。そもそも党員であることのメリットが少なく、党人ではない官僚出身議員などが幅を利かすことが、人気のない理由です。しかも自民党の党会費は高いそうです。学生や主婦が払える金額ではないようです。要するに応援団という位置づけでしょうか。抱えている現職議員の多い自民党としては、頭割りの収入が得られる政党助成金に拘ったのです。しかし政党助成が目的ですから、その配分権限は執行部にあります。それだけ党執行部の実力が強化され、派閥解消には一役かっているかも知れません。新進党は助成金の配分で、執行部不審に陥って解党しました。
とはいえ、政党助成金は良い制度ではありません。金を使わなくては組織が成り立たないとすれば、組織活動そのものを改革すべきであり、金がないから国庫から引き出すというのはいかがなものでしょうか。歳費を選挙資金に流用するのは論外ですが、個人献金への制約も大きい以上は、合法的な資金集めをするべきです。まず党員の確保が重要ですが、魅力ある党員としての地位の保証が先決でしょう。次に准党員として安い党費を収めるカンパ党員があってもいいでしょう。各議員には獲得党員数に応じた資金配分をし、党員が少ない地域には党全体でキャンペーンを張るなど会員掘り起こしもすると良いのでしょう。
しかし、まず金権選挙を止めること、代議士は儲からない名誉職とすることなどから始めるべきだと考えています。議員歴が長いほど借金が増える仕組みにすれば2世3世議員は減少しますし、短い任期を精一杯務める代議士も増えるでしょう。議員歳費は削り、秘書は公設秘書のみとし、必要経費は領収書と引き替えに支払うガラス張りとするのも一考の価値があります。まず議員改革、そして党改革に取り組むべきです。今の議会でそんな法案通るのでしょうか?
98.03.28
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