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政治の研究No.12
国鉄債務23兆円の行方

 行政は安易に借金をするものらしいです。今年冬季オリンピックに莫大な予算をつぎ込んだ長野県と長野市は莫大な地方債の返済に四苦八苦しそうです。県では県民一人当たり30万円の債務負担増だと聞いています。

 話は変わりますが、旧国鉄の債務は23兆円もあり、勤労人口当たり40万円の債務です。国鉄債務は3年ほど前に17兆円でしたが、資産処分が遅れて逆に6兆円も膨らんでいます。読売新聞の試算では一日60億円の金利だというので、ざっと年利1%強でしょうか。しかし財政投融資の金利は5%以上払うからもう少し高いでしょうか。揉め続けた丸の内・八重洲の国鉄跡地が売却されたものの、その売却額は計2,000億円程度(これは1ヶ月の金利にしか成らない!!)でありました。問題の解決を5ヶ月先延ばしにすれば1兆円増える計算の巨額借金です。
 如何に低利でも資産処分では追いつかず、抜本的な改革が必要です。手頃なところで自己破産、債務不履行宣言を出すことです。意外に国民の負担は少ないのです。困るのは郵貯・厚生年金などの財政投融資、政府系金融機関、農林系金融機関だけです。郵貯は以前に約束した高利が払えなくなって、最悪取り付け騒ぎが起きます。郵貯に日銀特融は使えませんので、誰が資金を貸すのでしょうか。政府系金融機関はいくつか連鎖倒産するでしょうが、この後始末は国庫からするのでしょうね。ただし、無駄な政府系金融機関が軒並み消滅し、責任をとるべき人々は責任を取るので、スッキリするはずです。しかも負債額は彼らに支払う金利相当分少なくなるので、国民の負担も軽くなります。債務繰り延べを提唱した議員の首も斬れますから、一石何鳥でしょうか。

 そもそも国鉄債務が返済できないことは明らかです。どんなに頑張っても、売却可能な資産は7兆円程度だそうです。今日全てが現金化しても16兆円の負債が残る計算です。極論してあと3年資産売却に要すると資産はゼロなのに、債務は23兆円なのです。全く冗談ではありません。
 そんなに無謀な計画だったのでしょうか? 国鉄清算事業団が設立された直後のバブル時代、汐留跡地だけで10兆円以上の価値があったそうです。このとき売却すれば問題はなかったのですが、自民党のお偉方が跡地の安価払い下げを望む企業につつかれて、売却時期を逃した経緯があります(言い分は政府が地価高騰を煽るのはいかがなものか、だったそうです)。バブルが崩壊して価値が下がった上に、高額な買い物ができる企業も居なくなりました。たぶんバブル崩壊で跡地の買い手企業は資金繰りにあえいだことでしょうが、それは民間企業の話です。5年前に清算事業団の資産を全てJR各社に払い下げて、残務は国庫負担という手もありました。多くとも10兆円程度の国庫負担で済んだはずだと言われています。
 当初から不動産売却で赤字を埋める発想に問題がありました。今から言えば、新幹線のレールは清算事業団の固定資産にして、JRにリースをさせれば良かったのです。返済目処に応じてリース料を調整すれば済むのですから。清算事業団の払う固定資産税は別枠でプールして赤字補填準備金としても良かったでしょう。おそらく国民の納得する手法だったはずですが、歴史にイフは許されないのです。

 簡単な方法があります。ひそかに日銀で円札を大量に印刷することです。政府は多額の赤字国債を増発して、その現金で日銀に買わせます。政府は手に入れた現金をすかさず国鉄清算事業団、政府系金融機関、債務超過の外郭団体などにブチ込んで紙幣流通量を一気に増加させます。一過性のインフレが生じて物価は二、三倍いやそれ以上に跳ね上がるでしょう。急激なインフレは借金漬けの一般企業を救済するに違いありません。輸入関連企業は大きなダメージを喰うことと思いますが、金融機関のダメージは小さいはずです。金額ベースでは担保割れ債権が一気に減少し、健全化するでしょう。困るのは個人の預貯金でありますが、老人にはインフレ率に応じた年金増額を支給し、サラリーマンには即時の賃上げで乗り切ることを期待するしかありません。その代わりに、住宅ローンは大幅な負担軽減になります。さらに間髪を入れずに1/100デノミを実施し、市場の混乱を収拾させます。
 しかし外国の批判は大きいでしょう。日本の国債を持つ外国企業が多いとは思いませんが、外貨準備で円を持つ国は多いでしょうからダメージは大きいかも知れません。国際的批判はやむを得ないと思います(東南アジアの事例もあることです)。また政府と共謀してインフレを招く日銀に対する批判は大きいでしょう。我が国の中央銀行である日本銀行は店頭市場の上場企業ですが、大蔵大臣(大臣個人ではなく、正確には大蔵省、つまり国有です)が55%の株主なので可能ではないでしょうか。

 一つ問題を忘れていました。金融機関は、保有資産規模が目減りしますから、日本経済に対する支配力を弱めるかも知れません。しかし、国鉄問題・赤字国債問題・不良債権問題も片づくのだから良いでしょう、橋本首相。ちょっと強引な結論だなぁ。

98.03.28

補足1
 ポン太が言い出すまでもなく、国鉄債務がデフォルト(債務不履行)されそうです。旧国鉄債務処理法案では、国鉄清算事業団を1998年10月1日をもって解散し、債務を国の一般会計が引き継ぐそうです。ところが金融再生関連法案の成立が遅れているため、処理法案の成立が9月内に成立しない可能性が高まっています。事業団はすでに解散を前提に10月以降の資金調達を行っておらず、一歩間違うとデフォルトになる危険があるそうです。政府筋は法案成立へ全力を尽くす姿勢を崩さずに、国家機関による債務不履行という珍事を巻き起こす可能性が高いです。(日本経済新聞9月20日朝刊記事)

98.09.21
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