東京にも劇場街を作ろう(1)

 東京都内には、大小合わせると200を越える劇場&ホールが在ると言われています。NYで「オン・ブロードウェイ」を名乗れる300客席以上の劇場も、40ほどあります。それなのに、観劇人口は少なく、未だにローカルです。それはきっと、劇場街が無いからなのでしょう。

昔の映画館は・・

昔の映画館は、街中に1つというのが当たり前でした。1スクリーンの映画館が多くありましたが、2スクリーンの映画館も結構ありました。1つのスクリーンでは、呼べる客数に限度がありますし、同じ作品を長く上演できません。このため、2本の映画を交互に上演したり、昼間は子供向け・夕方から大人向け、というタイムスケジュールであったりもしました。しかし、できることなら同じ作品を一日何回も回して、元を取りたいところです。

映画人口の減少が叫ばれています。レンタルビデオ店や、有料TVチャンネルの普及が一つの理由でしょう。それでも、映画館のスクリーンや音響に叶う家庭用TVはなく、逆説的に言えば、TVで見れば足りる作品しか上演してこなかったことが、本当の理由ではないでしょうか。高い入場料、人気作に集中する待ち行列、当たりはずれの大きい輸入作品、金太郎飴な宣伝文句(全米大ヒットとか、何とか賞受賞とか、興行収入や動員観客数など)が並ぶ、本音の評論がメディアに載りにくい・・等々。

色々な理由があるにせよ、街中に孤立して散在する映画館では、他の娯楽に太刀打ちできないということです。何だか、演劇の劇場についても同じことが言えそうですが。

なぜ、映画館は集中するか

しかし、繁華街に複数のスクリーンを設置することで成功している、複合映画館が増えています。洋画・邦画・子供向けなどバリエーションを増やした、超人気作を避けるとほとんど待たずに見られる、発券所が集約され整理券システムを導入しやすい、ロングランが打ちやすく国内人気に合わせられる、リピーターを呼び込みやすい、スケールメリットが出て割引しやすい、等々が理由でしょうか。

このためかどうか、地元の孤立した映画館は次々に消え、繁華街に映画館が集中するスタイルが増えています。他の娯楽設備のある場所に寄り合って、相互に集客効果を生んでいるケースも見られます。破綻した某大手スーパーは、ショッピングセンターに映画館を設けて集客を目論みましたが、スクリーン数が少なかったことが敗因でした。東京では、新宿・有楽町・渋谷などに集中していますが、圧巻は13のスクリーン(3,000席)を一カ所に集めた、お台場のシネマ・メディアージュでしょう。

3,000席と言えば、オン・ブロードウェイ並みの換算で6〜8個分です。500席クラスを2つ、300席クラスを3つ、150席クラスを5つ、70席クラスを5つという配分にすれば、ざっと15劇場に相当します(1,000席を越える劇場は、むしろ邪魔です)。もちろん建設費や設備コストは全く違うわけですが・・・一カ所に15劇場も集まれば、演劇を見る人も増えるのでは・・というのが今回のシリーズの原点です。

 「劇場街」を英語で言うと、「シアター・ディストリクト」です。NYには文字通りのディストリクトが存在し、これがブロードウェイという道路に面しているために、通称「ブロードウェイ」です。ロンドンにも「ウエストエンド」という劇場街があります。
 でも・・東京にはまだ無いのですよね。

  • 複合映画館は、シネマコンプレックス(通称、シネコン)と呼ばれています。どこの系列もシネコンの増設に躍起で、激しい競争が繰り広げられているようです。現在のところ、経営破綻したマイカルグループの「マイカル・タイム・ワーナー」が先行しているそうです。ご参考まで。(2003.04.27)