びでお・ぷろじぇくた

 白いスクリーンがあれば、これに映像を投影できるビデオ・プロジェクタが大流行です。投影用ランプが高価で、極めて高級品でしたが・・近頃では10万円を切る家庭用プロジェクタも人気が出ています。つまり、演劇の演出にも使いやすくなったということですね。

大道具が要らなくなる?

例えば劇団四季では、満を持して投入された「異国の丘」で使われていました(舞台装置を見たわけではないので、仕組みは違うかも!)。NYや上海の背景を演出し、大道具はサッパリめでした。背景をペイントするのは大変ですが、ちょっとしたスライドを活用すれば、安く簡単にできるというわけです。「二人のロッテ」では、湖を臨む風景に活用されていました。他の作品でも、ちょっとした投影に使われているようです。

以前は、紗幕にスライドを投影する手法が使われていました。例えば、昔の「夢から醒めた夢」では、子供達の悲惨さを訴えるシーンで使われていました。劇団四季以外でも、スライドが使われた作品が結構ありましたが、旧式のスライド投影機を使った劇団では、薄ぼけていたりして、見苦しいものもありました。光量不足であると、かなり厳しいようです。

またスライドは舞台正面から照らすため、人や物に当たると背後に影が出てしまいます。このため利用は限定的でしたが、プロジェクタ方式では、スクリーン後方から投影でき、人影の問題を解消できます。それだけ照度が保てるようになったのは、テクノロジーの成果です。ランプが切れにくくなったことも、商用で使いやすい理由でしょう。

あまりに使うと、手抜きに。

極論すれば、全てのシーンの背景をプロジェクターのスライドに置き換えてしまうことも可能でしょう。写真を使えば、アッという間に町並みが再現できてしまいます。ちょっと高価ですが、動画を投影できるものを活用すると、移動シーンなども再現しやすくなります。

しかし、バックだけリアルだと・・手前の本物の俳優がフェイク(偽物)に見えてしまいます。そうでなくとも、俳優が立つに際して、実際のセットである場合と、映像の前である場合とでは、映像の前の方が見劣りします。まず、セットに奥行きが無いこと、鮮明すぎても薄すぎても、コントラストが狂ったコラージュ画像のようになります。あくまで、本物のセットのサポートに使うのが良いようです。

場面転換の際に印象づけたい「場所」のイメージシーン、数分間しか使わないショートシーン、舞台装置転換のために下ろした紗幕を活用した演出などでしょうか。先述の「異国の丘」は、巧く使ってありました。演劇舞台の良さは、三次元の世界だと思います。ビデオ映像では、二次元に置き換わるために、どうしても嘘っぽさが目立ちます。

 近頃は、パソコンの発達で3D立体画像も手軽に書けるようになりましたが、こうした技術がビデオプロジェクタと組合わさって来るのは・・もう少し先かも知れませんね。主役以外が全て立体画像の一人芝居なんて、見てみたい気もしますが、見る意味ないかも・・。

  • 劇団ふるさときゃらばん」が、積極的にプロジェクタを活用しています。以前は影絵や紙芝居風寸劇などで補っていた説明シーンを、アニメーションで簡潔に表現するものです。最新作「天狗のかくれ里」では、数シーンで活用されていました。(2003/02/11)