愚者のための暗転

 電車に乗り遅れたりして、劇場への到着が開演後になることがあります。多くの場合、劇場ホールのTVモニターを眺めて、キリの良いタイミングまで、スタッフの誘導を待つことに成ります。

ペンライトは、心許ない

大きな劇場ではとくに、ペンライトによる誘導が怖いです。スタッフは歩き慣れていて、スタスタと歩きますが・・思わぬ段差や、観客の手荷物などに妨害されます。蹴躓くと、階段で転んだりして・・危ないですね。自分が先客の立場では、遅刻客に気を遣います。

また通路まで誘導された客は、最終的に自席に座ります。何人もの客の前を通って進むのは、一苦労です。前を開けてくれずに四苦八苦。後ろの客に気遣って前傾姿勢、かがみ気味。逆に、前を開けるためには席を立たざるを得ませんが、後方席に気遣って立つのは、何度やっても難しいですね。ときには、スタッフの誘導した座席が違うというケースも。スタッフだって、ペンライトを十分使えていないかも。

愚者のための暗転

小劇場で待機は少ないですが、大劇場では、TVモニター前の待機が日常茶飯事です。演出効果の妨げよりも、誘導回数の効率化かなと感じます。多くの場合、二重に扉を設けてあり、ホールや通路の明かりが劇場内を照らすことは無いですから。それとも、旧い名残でしょうか。

ブロードウェイ作品などでは、「愚者のための暗転」が設けてあるそうです。一幕にも二幕にも、「このシーンだったら、遅刻客を入れても良い」という暗転です。逆にいえば、そのシーンに到達するまで、遅刻客を待たせなさいと言うこと。派手なオープニングを終え、本題に流れ込む前の準備に費やす暗転は長い方が良いので、敢えて設定されるようです。中には、開演後30分しないと暗転が訪れず、その間ずっと、TVモニターを与えるという強者もあります。

 確かに遅刻するのは、良くないこと。自分が遅刻すると恥ずかしいですが、他人が遅刻すると腹立たしいです。開演時間になってもダラダラと開演しない劇団もありますが、少し遅らせるのなら許されるでしょうか。
 それにしても、この暗転は開演10分程度で入れて欲しいものです。それ以降だと、遅刻客には流れが掴みにくいでしょうし、一般客の感情移入を妨げますから。