日頃からチケットを買っていて、不満に感じることがあります。その最大のものは、チケットの返品ができないことです。野外イベントで雨天の場合、出演者や興行主に不測の事態が発生した場合、チケットの返金がされますが、これは例外。
なぜ返品できないか。
有名作品で、当日券に良い席が混じることがあります。また完売のはずが、突然に「扱い券あり」に変わることがあります。多くの場合は、関係者チケットの売れ残りです。小規模なチケットブローカーが売り残したチケットである場合もあります。発売後1週間目には、電話予約のキャンセル分が出てくることもありますが、これは発売直後だけの話です。一般客によるキャンセル券が出回ることはありません。
ごくごく当たり前と思うかも知れませんが、航空券や乗車券は手数料を払えば返品できます。遊園地でも返品できる場合があります。にも関わらず、演劇やスポーツのチケットは、原則として返品できません。これまでの慣行というだけで、極めて理不尽なものです。興行の数ヶ月前に販売開始されるチケットなのに、返品できないのは不便です。人気の公演であれば、結局空席になるわけだし、勿体ない限りです。
この慣行の名残りは、ネット普及前のシステムに原因があります。ネットが普及するまでは、チケットがどこに売れ残っていて、どこで売り切れたか把握できませんでした。これに返品が重なると、チケットの売上管理が全くできなくなります。意図しないところにチケットが売れ残ると、それこそ致命的。そのため原則、売切制にしたようです。加えて、粗悪なチケットが多くて偽造を恐れたとも言います。
ネット時代には返品制
今や、ネット時代です。チケットは現物でなく電子の状態。端末で販売されると自動的に発券されて、リアルタイムにチケットの販売状況が把握できます。これならチケットの売れ残りが一元管理でき、良い席から順番に販売可能です。返品を受け付けたとしても、即座に別の客に再販することが可能です。チケットには、様々な情報を盛り込んだ管理コードが記載され、偽造券が紛れる心配もありません。
返品に際しては、当然ながら返品手数料を取るでしょう。せいぜい事務手数料として、額面の5%または200円程度でしょうか。これぐらいに押さえないと、現在計画されている転売防止策が機能しません。オークションを装ったバーチャル・ダフ屋や、劇場前のリアル・ダフ屋を根絶する転売防止策は、返品制と同時に導入されるべきです。「残念ながら行けなくなって・・」などと戯言を言うダフ屋を根絶するには、片手落ちでは片づきません。
先日、大物俳優達がチャリティで開催した「Thank You�」という公演で、7千円のチケットが、5万円以上の高値でオークション売買されていました。限られた公演回数の中で、相当枚数がダフ屋に流れ、彼らの懐を潤しました。どんな先行予約にも割り込んで荒稼ぎする彼ら。彼らの動きを封じる意味でも、返品制を考慮すべき時がきています。
とはいえ・・恒常的に売れ残る作品、開演後の評判が悪い作品では、返品は赤字を拡大させる恐怖のシステムです。でも、それぐらいの覚悟がないと、本当は、商業公演をやるべきでないのでは? 関係者には取り置きして、来場しなくても罰則無し。そんな甘いシステムは、無くすに限ります。
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