内輪ネタみゅーじかる

小劇場系では、困ったときの「内輪ネタ」が多いようです。とくに劇団員が脚本を書く場合、奥行きの深い新ネタは難しいためか、身近な演劇ストーリーを描くことが多いようです。

コーラスラインに続く?

演劇ストーリーの超有名作といえば、「コーラスライン」です。ブロードウェイ最長ロングラン記録を「キャッツ」に抜かれましたが、それでもブロードウェイ不朽の名作です。ラインダンサーの一人に選ばれるためのオーディションを題材にしていますが、人種問題や差別問題を深くえぐり出し、見事なミュージカルナンバー&ダンスがあってこその評価です。

これを「演劇ネタに、多くの観客が共感した」と誤解したかどうかはともかく。「コーラスライン」亜流の作品が少なからずあります。「42ndストリート」などヒット作もありますが、結局は中身が勝負です。むしろ多くの観客に馴染みのない演劇ネタは、作品内容を伝えるだけでも大変です。

勝負は、劇中劇と主役の出来

演劇ネタと一口で言ったとしても、パターンは二つ。周囲の人に反対され、あるいは非難されつつ、素晴らしい作品を世に生み出すパターン。難しいオーディションにエントリーし、苦労の末に主役を射止めるパターン。いずれもハッピーエンドのサクセスストーリーです。巧く運べば、観客に感動を与えることができますが、本当らしさを出せないと、思いっきり外すことになります。

まず課題は、劇中劇の出来。超ヒット(という話の展開になる)作品が必要ですが、脚本がヘボいと、当然劇中劇も詰まらないです。そうなると「こんな作品でヒット作?」ということで、全然感動がわき起こりません。最後にそのカットを削る作品もありますが、あまりに拍子抜け。最後のワンシーンは、それだけ力を入れて欲しい。格好いいフィナーレでもぶつけて欲しいです。

次の課題は、主役の出来。超ヒット作を演じるからには、それに見合う技量が必要です。とくにオーディションネタでは、ライバルとなる他メンバーのグレードも問われます。なので小劇場系では、リアリティを全く欠くケースが少なくありません。演じている役者さんが、成りきるのは良いのですが・・実力を伴わないと調子外れになることも。

コーラスライン」は作品の良さもあることながら、B.WAYのキャスト達が現実のオーディションを勝ち抜いた実績を持つから成り立つ作品。その苦労と感動が実体験であるからこそ、リアリティもあり共感も得るのです。
綺麗な衣裳を着て、舞台でスターと呼ばれてみたい!!」という理由だけで、舞い上がって内輪ネタに徹しないで欲しいです。亜流作品を作るぐらいなら、もっと別の脚本を生み出した方が良いと思うのですよ。