着 倒 表 ・ 香 盤 表

日本の演劇界では、本当に意味不明な用語が飛び交います。英語や仏語・独語を適当に使い分けたり、日本の古典芸能の用語も混じっていて、わけが分かりません。今回もそんなお話です。

着倒表

久しぶりに「チャクトウ」使ったよ、なんて聞いたりします。軍隊用語では、着倒(到着のこと)というのがあり、思わず頭に浮かんだのです。××の着倒を待って、○○を行うとかと使います。しかし一般用語ではないはずです。

ところが、どうやら同じ意味らしいです。要するに小屋入りして、誰が来ていて、誰が来ていないか、一目で確認できる出席ボードと考えてください。白(あるいは青)い札が出席、赤い札は欠席または遅刻、と確認するわけです。正しくは、「着倒表」と呼ぶそうで、中劇場クラスには提供されているようです。

ピンを刺して表示する場合も有るようですし、鉄製のボードに磁石で現在の行き先やスケジュールを明示するものもあります。便利で、誰にでも分かりやすいものが良いですね。くれぐれも帰る際には、元に戻しましょう。いつまでも小屋に居ると思われてしまうと、捜索隊が出ることも・・。

香盤表

どこかの補足で書いたと思いますが、出演者一覧表のことです。歌舞伎用語ですか・・? ちょっと分かりませんが、たまに洒落で書いている劇団があります。こちらはダブルキャストがあったり、代役の出やすい作品では重要です。模造紙に手書きで書く原始的なものもあり、プレートを挿入するものもあり、名札の後ろのピンを突き刺すものもあります。

キャスト表とか書いてあるのもありますが、正しくないそうです。キャストには、ダブルキャストやアンダースタディも本来含むので、その日の香盤表とキャスト表は違うわけです。PLAYBILL(劇団四季のプログラムもね)には、キャスト表が記載されています。当日の会場では、香盤表の前に「本日のキャスト表」なるものが置かれてあります。その日限定のキャスト表なら、問題は無いわけですね。

香盤表でも着倒表でも、問題になるのは掲示順だとか。こんな些細なことで・・と思ったりしますが、役者の世界で序列は絶対です。扱いが低くなっていると、機嫌を損ねる方もあるそうなのです。

  • 蛇足ですけれど。「着倒」はもっと古くて、戦国時代(!)にも使われていたそうです。課せられた軍役分だけ兵士を連れてきました・・っていうのを記録したのが「着倒表」。う〜む、奥が深い。そういえば「しばい」も室町時代に始まった用語だそうですけれど。(2002.02.10)