男優さん、いらっしゃい

日本のミュージカル業界では、男優が圧倒的に不足しています。学生はともかく、社会人としてミュージカル俳優を続けている男優は、希少価値があります。ストレートプレイは比較的男優も多いのですが、どうしてでしょうか?

売れないと食えない

俳優に共通の悩みは、中小劇団では食えないことです。中小劇団の公演は、年に1〜数回です。レッスン期間が長い割に公演期間が短く、どうしてもアルバイト等に精を出すことになり、技術をじっくり磨く余裕がありません。中堅以上なら別ですが、ダンスや歌のレッスンは金も掛かるし、成果も出にくい課題があります。20代後半で売れなければ転職するしかありません。

女優も条件は同じはずですが、女優志望者がもともと多いために、そこそこ成果が出ればスクール等で稼ぎつつ、自分の技を磨くことができるようです。一応は結婚するという選択肢もありますし、必要最小限の実入りが確保できれば良いという点で、男優よりはマシであると聞きます。また子供時代からダンスや歌のレッスンを重ねた経験を持つ女性は多く、それだけ女優を務めやすい素質を持っているとも言います。

男優さん、大歓迎

商業系劇団は比較的潤沢に男優を抱えていますが、ほんのチョイ役の男優でも中小劇団では、重宝されています。決して巧くはない人、芝居は巧いが歌・踊りがサッパリの人、マスクは渋いが芝居さえ下手な人、それでも大事にされています。女優の方が技術的に優れているのに、下手な男優が目立ったりもするわけです。客演の男優が多くても冴えない作品が多いのは、惜しいことです。

希少な男優からすれば、そうして歓迎されるのは幸せです。何といっても売り手市場ということで、とても巧い男優は年間に10作品以上に出演しますし、ほどほど巧い男優でも数作品は客演しています。そうはいっても、全くの素人男性をステージに上げる中小劇団も無いようですが・・多少のスキル不足は、大目に見ると聞いています。さすがに実力を伴って成長しないと、長くは使われないでしょうから、厳しいのは厳しいですね。

それでも需要は多いはず

それでも需要は多いはずです。知人のいる複数の劇団から、知人の男優を紹介して欲しいと言われることもあります。どの劇団も男優の調達が儘ならず、脚本で無理をして女優中心のストーリーに仕立てることが多いです。劇団員が他劇団から借りてくることも多いのですが、あまり劇団間の交流が少ない劇団では、余所から調達するのにも無理があります。男優だけオーディションというのも厳しいですし、何よりオーディションは金と手間が掛かります。

劇団員募集・キャスト募集の宣伝を出している劇団HPも多いですが、来訪者が限定されるためか、あまり効果が無いようです。男優の人材バンクとかあれば良いのでしょうけれど・・そもそも利益が出る公演をしている劇団が少ないのも現実ですし・・。とにかく日本のボランタリー主体のミュージカル業界から脱皮し、興行収益が出せるミュージカル劇団が増えて欲しいのですが、これも難問です。そうでなくては、安定してミュージカル男優を確保するというシナリオも、絵に描いた餅ですね。

何人かの男優の話ですが、女優が圧倒的に多い劇団で客演するのは大変だそうです。いろいろ対人関係で悩むこともあるらしく、女優同士のもめ事や噂話に振り回され、嫌気さすことも多いとか。
とある男優曰く「公演がビジネスだと思ってない女優が、日本は多いんだよ」とか。ミュージカルは、ショー・ビジネスなのであります。ビジネス・ライクに行きましょう。