いずれもステージの進行役のことです。場面解説やナレーションを入れるという役割に収まらず、自ら登場人物としてステージに参加する存在です。舞台進行を助け、観客を上手にシナリオ展開に引き込んでいくはずですが・・。
狂言回し
読んで字のごとく、「狂言」に由来しています。狂言の発祥は、室町時代に誕生した猿楽で、滑稽さや卑俗さを表現した伝統芸能です。舞踊的で象徴的な美しさを持つ能も猿楽から派生していますが、おかしみを前面に出す狂言は、独特の世界です。
狂言は、単独で舞台を構成する本狂言、能と能の間で演じられる間狂言、歌舞伎の演目とされる歌舞伎狂言に大別されるそうです。狂言回しは、とくに歌舞伎狂言で用いられる手法で、登場人物として、作品の進行に重要な役割を果たします。主役(シテ)に絡んで終始登場しつつ、舞台展開等を分かりやすく表現または説明してくれます。単なるナレーターでは、ありません。(耳学問なので、ちょっと違うかも・・)
日本では、普通の芝居にも使われています。TVドラマやアニメ、漫画でも狂言回しと読んでいますので、もはや歌舞伎狂言に限りませんね。劇団四季のミュージカル作品では、「ミュージカル李香蘭」の川島、「夢から醒めた夢」の夢の配達人が、狂言回しを務めています。
MC(Emcee)
米国で狂言回しに相当するのが、MCです。正しくはEmceeで、ショーの司会者が元々の由来だということです。単なる司会に留まらず、ショーの出演者の手助けをしたり、積極的に相方を務めたり、ショーに絡んで盛り上げる役割をしています。
ミュージカルでは、「キャバレー」に登場するMCが有名です。黒子の役割を果たすかと思えば、主人公然として舞台を主導し、展開を進めていきます。道化を演じたり、観客を挑発したり、冷ややかに舞台を見下ろしたり・・という独特の存在感を持たせています。日本に輸入されているオン・ブロードウェイ作品の中では、珍しい部類に入ると思います。オフ作品では、「ファンタスティック」のエルガヨが相当します。
脚本が非力気味な作品では、狂言回しを積極的に使っているのを見掛けます。前説(あるいは、口上)レベルなら良いですが、あまりに諄いのは困りものです。とくに断片的なシーンとシーンを繋ぐために活用するのは、論外でしょう。スマートに舞台進行を務める役として欲しいです。
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