ファンサービスの一種ですね。お客様をネタに使ったり、客席に話しかけたり、客席に降りたキャストが何か仕掛けたり・・・がグレードアップしたもののようです。
お客様を巻き込む
宮本亜門の出世作「アイ・ガット・マーマン」では女優の1人が客席のオヂサンに絡むシーンがあります。抱きついたり、キスを求めたりした後、客席に引っ張り上げたりしました。これはサクラ相手とも見えず・・・大丈夫なのでしょうかね。ノリの悪いお客様なら、怒られちゃいます。
マリアートの新作「ザ・ゲストショー」ではショットガンを振り回す立て籠もり犯人が、お客様をステージに誘拐し、誘拐の記念写真を撮ります。ファンで来ているお客様が多いので、問題は少ないかも知れませんが、これも唐突でした。役者さんが客の顔を見てもいるのでしょうか。観客を撮影スタジオの客に見立てて拍手の練習をしたりもしました。
劇団クラーナの「ラ・メゾン・ダムール」では、観客をステージの椅子に座らせて、トークを少々。ほるすの「ラバーズ・ファイル」では、ハンドベルを配って演奏させたり、観客に早口言葉などゲームをさせていました。やりすぎると・・・キレる観客もいるでしょうから、慎重さも必要ですね。
お客様参加型ミュージカル
少し趣向は違って、観客全体の協力を求めるのが「お客様参加型ミュージカル」です。STEPSの「ショッキング・ショッピング」は、開幕前にテーマ曲の振付指導があり、作品中何度も出てくるテーマ曲で、観客に振付どおりを要求しました。でもテレがありお客様のノリは今一つでした。「お客様参加型……」と断ったほどには盛り上がらなかったです。
土居裕子さん主演の「ミュージカル 青空」も「お客様参加型……」と銘打ち、さらにアクティブなものでした。開演前に黒子が登場し、「拍手」「旗を振る」「オー(と歓声)」など、プレート(お客様参加型看板と命名)を黒子が出す度に、お客様の協力を求めるものでした。STEPSよりも単純な動作なので、お客様のノリも良かったです。少しずつ調子づいてきますし、やがて同時に複数の動作を要求されたり・・・と一体感が楽しめました。
お客様巻き込まれ型ミュージカル
オフィスHIRAMEの「EAR」は「お客様巻き込まれ型……」を標榜する大胆なものでした。緩衝材に使われるプチプチ(ビニールに気泡を作ったシートね)を、合図に合わせて観客全員で潰しました。ミニペットボトルに短音の弦が張ってあり、観客を「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」の5グループに分けて演奏会をしました。キャストの手拍子に合わせて手拍子を返したり、灰皿など鳴り物も絡めてのステージもありました。。。
ここまでは「お客様参加型」ですね。今度は、客の1人をステージに上げて「空き缶の積み上げ競争」に参加させたり、バケツ・ティンパニーを叩かせたり、携帯を鳴らせた客を檻に閉じ込めたり(本当はキャストでした)、と盛り沢山でした。先に書いた「ラバーズ・ファイル」と似たようなことをしていますが、最大の特徴は「巻き込まれOK!リボン」です。開演前に配布されたリボンを巻いている客だけを巻き込むのです。一歩進んだお客様参加型ですね。
お客様参加の出し物が増えると、どうしてもミュージカルとは言い難くなります(「ラバーズ・ファイル」は、殆どバラエティショーでした)。やりすぎないことを望みます。でも、少しぐらいはあっても楽しいでしょう。お客様の満足度もアップするでしょうから。気を付けるのはお客様に無理強いしないことと、緊張感を解く工夫をすることでしょうか。
ちなみに「EAR」「青空」などを手掛けた演出家は、中村龍史氏です。この人の作品は、昔からお客様とのコミュニケーションを大事にしているそうです。着想が面白く、それを見せ物に仕上げるところが素晴らしいです。今後の新作にも期待します。
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