コメンテイターはいるか

演劇のコメンテイターといえば、劇評家とでも訳せましょうか。しかし、論評家なのか批評家なのか、どっちでしょ? 論評家はとりあえず学術的にコメントするので、作品の良否を述べなくて済みます。しかし批評家なら、シロクロを付けないと・・・。

NYのコメンテイター

この12月、NY行きの計画が潰れてしまいました。行けば、確認できたのですけれど、某劇団の座長から聞いた話で書きます。

NYブロードウェイで新作が発表された場合(リバイバルも含む)、翌日のNYの新聞は、競って劇評を載せるそうです。ニューヨーカーはその劇評を参考にして、自分で観に行くかどうか決めるそうですね。もちろん有名な演出家、有名な俳優の出る作品は、前評判でも観に行かれるのですが、なにしろ上演作品数も多いことですから、劇評を参考にすることも多いようです。

またオフ・ブロードウェイの作品が昇格することもありますが、これも新聞や雑誌にコメンテイターが載せる劇評が、大きく影響します。それだけに、劇評は歯に衣を着せないそうです。間違っても太鼓持ちなんてしませんし、細部だけ褒めたりしないで、全体的に「あ〜でもない、こーでもない」と厳しくコメントするとのことです。もちろんながら、評価の甘いコメンテイターは・・・読者に相手にされません。

日本に、コメンテイターはいるか?

日本にもコメンテイターは大勢います。しかし映画や小説には厳しいコメンテイターが存在するにも関わらず、演劇では少ないですね。いわゆる演劇評論家の看板を掲げている方々は、まことに残念ながら、コメンテイターではありません(久世さんとか、例外はあります)。

なぜかといえば、まず作品を貶さないからです。良い作品は素直に良いと褒めるのですが、良くない作品は時代背景とか作品の成り立ちとか、作品と直接関係のないところを述べ、最後にちょっと良い部分を褒めて結んでいる例が多いです。とくに公演プログラムに載せられる劇評、演劇雑誌に載せられる劇評をご覧になるとお分かりですね。

たとえば、有名な評論家にS川さんがありますが、この方は某誌の編集長です。下手なことを書くと、某誌の広告が減ってしまいますし、インタビュー記事などで誌面が埋まらなくなります。したがって、当たり障りのないフワフワしたコメントが目立ちます。それならいっそ、演劇評論家ではなく、某誌編集長とはっきり書いてコメントされればよいのですが・・・。もちろん某誌にコメントを書かれる演劇評論家のコメントも同様です。編集長の厳しいチェックが入っているのでしょう。

あるコメンテイターのご意見

先日、私が「野武士的」と紹介している劇団の代表とお話しする機会がありまして、そこである演劇評論家を紹介して頂きました。コメンテイターと直接お会いするのは初めてですが、演劇関係の書籍も出しておられる偉いセンセイでした。

少しアルコールが入っていたので、十分なお話ができませんでした。ただ印象に残ったのは、「やはり批評はできないな」と言うことです。このセンセイは年間100作品以上(ストレートプレイを含む)をご覧になり、そのうち1/3はご招待だそうです。なかには宿泊費や交通費まで負担して下さることもあり、そうした場合は、まず厳しいコメントは出せないとのことです。

たしかに厳しいコメントをすると招待されなくなるのでしょうが・・・本音を聞くのでなければプロのコメンテイターを招く意味がないことに、招待する側も気付いて欲しいですね。そういう本当の意味で、厳しいコメントを言えるコメンテイターはいないのかも知れません。

ネット・コメンテイター

その点では、私たちネット・コメンテイターは呑気なものです。何よりも、利害関係がないので本音でコメントできます。最近ネットには、コメンテイターが増えてきたので、嬉しいですね。いつかコメンテイターのコメントで、作品の良否が問われる時代もやってくるでしょうか。

しかし難しいのでは・・・コメンテイターの好みでしょう。利害関係がないだけに正直すぎますし、主観的コメントが増えます。別のコメンテイターなら褒めるところを貶したり、感性に合わないことを理由にボロクソに書いたりします。反対に好みの演出家、好みのキャストが出ると、極端にコメントが甘くなったりもします。いやはや。

貶すことは褒めることよりも容易いと言います。しかし褒めるのは根拠がなくても良いのですが、貶すには十分な根拠が必要だということも言われますね。ネット・コメンテイターがお互いに意見を交換したり、もう少し読者を意識するようになると少しずつ客観的になるのかも知れませんが、現状では難しいです。

また、コメンテイターに誤解が増えているのは、それだけ劇団や作品との接点が薄いからでもあります。接点を持つと、どうしても厳しいコメントを控えがちになるので・・・「厳しいコメントOK!」と言って下さる劇団が増えることを望みます。

プロのコメンテイターのみなさま。本当にプロだと主張されるのなら、新聞や雑誌でビシバシ厳しいコメントを載せて下さい。劇団四季や東宝や宝塚歌劇でさえ、不味い作品はあるでしょう? なんでも褒めてしまうと、誰もマジメに読まないですよ。

  • 読者の方の情報です。1980年代までは、日本の新聞でも真面目な厳しい劇評を載せるコメンテイターがいたそうです。しかし、1990年代に入ってのミュージカルブーム以降、褒める劇評ばかりになったそうです。スポンサーの意向が新聞にも働いているということでしょうか。日本らしいです。