アスペクツ・オブ・ラブ

劇団四季の「アスペクツ・オブ・ラブ」を観てきました。う〜ん、四季劇場は綺麗ですね〜。公演は少し物足りませんでしたが、ストーリーは良かったのです。主観を交えて書き連ねてみると・・・

少年の恋

ヒーロー役のアレックスは、徴兵を目前にしてヨーロッパを旅行中。南仏の場末の劇場を通りがかり、3週間の公演予定だった一座が6日で公演打ち切りになる機会に出会った。17歳の少年だった彼は、そのプリマであるローズに憧れ、彼女をピレネーの山荘へと誘う。ヒマを持て余していたローズも、別段抵抗することなく山荘へ出掛け、すっかり恋人気分に。。。

ストーリーには出てこないが、ローズの年齢は30歳前後だろう。ちょっとした大人の女性・・・15歳ほどのギャップに抵抗を持ちつつも、少し大人っぽい彼を愛し、楽しい時間を過ごす。辿り着いた山荘は彼の叔父ジョージの別荘だった。恋のためならと、鍵も窓も壊し、アレックスはローズを導き入れた。そして、人目をはばかることなく逢瀬を楽しむのだった。

ロマンスグレーの恋

山荘の管理人から、ジョージ叔父へ急報が。叔父はアレックスと同年のジュリエッタを愛人にしている。ロマンスグレーのジョージは結構寂しがりやさん。推定40歳後半の設定。25歳近く離れた愛人を振りきって、自分の山荘へと向かう。山荘の管理人はアレックスの仕業と伝えており、その甥が行きずりの女を連れ込んだことに怒ったのだ。

ジョージが現れた山荘。そこではローズとアレックスが芝居に興じている。ジュリエッタと違うローズの円熟さに惚れたジョージ。山荘は亡妻と楽しく暮らした想い出の場所・・・ローズが余興に着飾った亡妻のドレス姿に、ジョージは恋を抱いてしまう。そしてローズもロマンスグレーの恋に魅力を感じるのだった。アレックスを騙しつつローズを呼び寄せたジョージは、熱い恋人生活を過ごす。

怒れる少年は、青年になる

そうとは知らないアレックス。軍役に就いて、2年ぶりの特別休暇。ジュリエッタと結婚したと思っていたジョージの家には、ローズが居た。裏切りを詰るアレックス、彼に抱かれて心が揺らぐローズ。しかしローズは、アレックスの若さよりもジョージの暖かさを選び、アレックスを追い出そうとする。逆上したアレックスは銃でローズを負傷させてしまった。

失敗を悟らされたジョージは、自ら身を引いてジュリエッタの下へ。ジュリエッタは暖かく昔の恋人を迎え入れたが・・・アレックスを振り切ったローズが追いかけてきた。そして不思議な三人の共同生活が始まる。やがてジョージは投資に失敗して破産。ローズは結婚を申し出て、娘ジェニーも出産。自ら女優に復帰して家族を養う決心をするのだった。

大きなショックを受けたアレックス。二度とローズに会うまいと誓ったものの、戦場で結婚と出産を聞いた。それから12年・・・ひたすら軍務に打ち込んだ彼は立派な青年になった。

少女の恋

ようやく軍役から開放されたアレックスは30歳前後。再び劇場で、大スターとなったローズの公演を見た。楽屋で再会したアレックスとローズ。ローズも久しぶりに山荘に引き揚げるというので、同行したのだった。ジョージは暖かく二人を迎え、ジェニーは12歳の素敵な少女に成長していた。ちょっぴりローズの面影も??

ジョージとローズの勧めで、3年間も山荘に滞在したアレックス。いつしかジェニーに好意を抱かれ、まとわりつかれる関係に。ようやくローズへの恋慕を振り切ったアレックスは、ジェニーの15歳の誕生日の夜、ついに手を出しそうになる。以前から疑惑を持っていたジョージは、自分の所行を棚に上げて、アレックスを詰問しようとする・・・しかし、持病の発作で急死した。

少女は大人になり、ヒーロー退場

ジョージの葬儀は、ジュリエッタの弔事で締めくくられた。自分と同年のジュリエッタに好意を持つアレックス。以前からジョージを介して噂を聞いていた二人は・・・恋に落ちた。アレックスは、ジュリエッタに昔のローズを重ねたかも知れない。山荘を抜け出して、二人での生活を志すことに・・・。

アレックスに見捨てられて泣き悲しむジェニー。夫を亡くして失意に沈むローズ。ローズはかつてのジョージの歳に近づき、アレックスが恋しい。しかしジェニーも、ローズも振り切って・・・アレックスは山荘を去っていく。少女ジェニーは大人へと脱皮するが、ローズに引き留められてしまう。ずっと大人になろうと背伸びを続けたジェニーの「待てないの・・・? 時は流れてるのに・・・」というセリフはジーンと伝わってくる。

訴えるのはジェニーの心?

年齢差を均等に配置したジョージ、ローズ、アレックス&ジュリエッタ、ジェニー。ジョージもアレックスも、結局は全員を同じように愛したのだ。表面に現れる愛情は違ったかも知れないが、その描き分けは見事なものです。その前にローズは霞んでしまうし、ジュリエッタは付け合わせだ。結局はアレックスが歳を経るごとに変えていく愛情表現を描きたかったのか、とも思うが、全編を通すとやや弱い感じがする。17歳に始めた少年の恋。2年後に再燃した大人の恋、30歳で訪れた少女との恋、そして落ち着いた同年との恋。アレックスには、これからが本当の恋なのだろうか、と。

本当はジェニーの心を訴えたかったのでは、と感じる。アレックスよりも2歳早くに訪れた少女の恋。ジョージによって遮られてしまった自由な恋愛。彼女がこれからどう成長していくのか・・・大いに含みを持って世界が拡がる。「待てないの・・・? 時は流れてるのに・・・」というセリフに全てが凝縮されているような気がする。

もう少し待ってくれれば、大人の恋ができると信じるジェニー。長い間追い求めて、遂に目先に現れた、ありふれた恋を追うアレックス。いつかはジュリエッタと別れて自分の下へアレックスが帰ってくるかも知れないと、ジェニーは淡い期待を持ち続けるのでは・・・と。さてアレックス、ジェニーが大人になったらどうするのだ、とジュリエッタも最後に問いかけるが、アレックスは黙って出発する・・・

ストーリーは名作なんですよね。でもウェバーの音楽と演出は今ひとつです。誰か新たにミュージカル化をしてくれないかな〜、現代劇風に。期待してますよ、日本の名演出家さん。