舞台で人を殺すこと

明るく楽しいミュージカルでありながら、何故か登場人物が死んでしまうシーンを使いたがる脚本家が多いようです。離別と並んで暗いシーンを表現するための一技法として使われるようですが・・・

難しいのは、理由付け

ストーリー全体を見渡した場合に、「何故、ここで登場人物が死ななくてはいけないのか」がはっきりしない作品を多々見掛けます。登場人物が劇中には登場しない架空の人物であることもありますが、あまりに意味もなく登場人物が死んでしまうことがあります。それまで上手に話を繋いできたものが、ムードが一転して詰まらなくなってしまうことがあります。もちろん、恋や愛を表現するためにやむを得ず殺してしまうものや、ストーリーに見事に溶け込んでいるものもありますが・・・。

難しいのは、タイミング

上手に盛り上げてきたところで水を差すわけですから、そこへ上手に登場人物の死を持ってくるのですが、あまりにもご都合すぎるものが多いです。全く伏線もなく、脈絡なく、そして必然性が無かったりします。観客が戸惑ってしまうほど唐突なものは、繰り返しになりますが、詰まらない作品というイメージを植え付けてしまいます。突然の交通事故・・・というのも安直に使われ過ぎているような気がします。

難しいのは、役者の演技力

登場人物の死を知らされれば、誰もが何らかのリアクションを見せます。ところが、これが難しいですね。何度も練習するとはいえ、その人物との関係を明示・暗示する表情や動作を自然に見せなくてはバランスを欠きます。また、ムードが急変するために、かなり気合いを入れないと、中途半端な演技になってしまいます。そして、その死を乗り越えて新しい場面展開を演出する必要から・・・これまでの演技よりも力の入ったものを見せる必要も出てきます。なかなか、そこまで演じきれる役者は少なく、中途半端で終わってしまうものが多いように感じます。

脚本家の趣味に過ぎないか?

作品に必ずラブストーリーを入れたがる脚本家がいます。どんなに強引でも、どんなにバランスを崩してでも、入れようとするのは趣味だと思います。同様に、登場人物が死んでしまうシーンを入れるのも趣味なのかも知れません。ストーリーのそこに入ってくる必然性が見えないのも当然かも知れません。たとえば、忠の仁氏。この人の脚本では、登場人物がよく死んでしまいます(とくにスイセイ作品では、最低1人ずつ死んでいます)。しかも、演出過剰なものが多いように思います。たぶん趣味なんだろうと思ってしまいます。