「オペラ座の怪人」のことです。ネットを巡ってみると、四季ミュージカルの本作は人気が高いですね。でも私は四季版はちょっと・・・つまらなく感じました。そこでコメントを
原作は一流の駄作
原作はガストン・ルルーが書いた怪奇小説です。女優クリスティーネをプリマドンナとするべく、怪人エリックが奮闘するお話。映画化もいろいろとされていますが、本作の見どころは怪人の心理表現にあると思います。かなわぬ恋、伝えられぬ愛情、果たしたい独占、そして・・・女優大スターへ着けること。
しかし怪人の気持ちもどこへやら、クリスティーネは幼なじみの男爵にゾッコンほれてしまいます。怒り狂った怪人はクリスティーネを誘拐し、救出にやってきた男爵と対決・・・そして破れて死亡と相成ります。
その奥深い不気味さ、設定の巧みさ、描写の精緻さ、いずれを取っても一流でありながら、駄作と呼ばれるのは怪人を正しく評価していない意見だと思うのです。
ブロードウェイ版における怪人
ブロードウェイ版は、クリスティーネとラウル男爵のハッピーエンドを中心に据えています。そしてクリスティーネが可哀相な怪人に父親のイメージをダブらせた愛情を抱くものの、男と女の愛には昇華しないという設定になっています。あくまで怪人は頭のおかしい変人というわけです。ボックス席の要求も、給与の請求も、オリジナルナンバーの上演を押し付けることも、クリスティーネを誘拐することも、全て怪人の我が儘勝手として描かれています。
原作では、対決に破れた怪人を見て(クリスティーネが抱きかかえるのだったと思うが)、クリスティーネも怪人の愛に気付くのでありまして、怪人も一応報われるのです。ブロードウェイ版では怪人が身を引いて消えてしまいます。哀れの一言に尽きます(ブロードウェイ版で貰えたキスにしても、同情のキスでしたしね)。
本当なのは・・・誰の愛?
ガストン・ルルーが本当に書きたかったのは、やはり怪人の愛ではなかったかと推測します。ブロードウェイ版のように結局は恋のキューピッドに終わる道化役ではなく、彼の歪みながらも純粋な愛を描き表すことが主題ではないでしょうか(と独断と偏見)?
優れた才能を有しながら、醜い素顔であるためにオペラ座の地下深くに住まざるを得なかった怪人。その彼が、ただ一人の女性を愛しました。コンプレックスを意識して、その感情を伝えることができない故に、形を変えて尽くそうとする怪人。歌を教え、ライバルを蹴落とし、オーナーを脅迫してまで主演を与えさせ、そして自らのベストナンバーを提供する・・・涙ぐましいまでの愛情表現ですよね。貴方や貴女には、そんな気持ちが伝わりませんか?
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