スペースシャトル「コロンビア」の痛ましい事故で、シャトル計画は凍結される模様です。1986年の「チャレンジャー」事故のときは、まだ初期段階であったため、むしろ計画推進の原動力となりました。しかし、今回の事故はシャトル計画そのものを問う、厳しい世論に曝されています。
この「コロンビア」は、5台建造されたシャトルの中でも最古参で、1981年4月に初打ち上げされたものです。通算28回の打ち上げに成功し、28回目の着陸に失敗しました。事故原因の分析が急がれていますが、おそらくは耐用年数オーバーでしょう。50回の打ち上げに耐えられると言われ、その6割にも達していませんが、建造から20年も経ったことに主因があると思われます。なお、1991年に耐熱システム強化等のリフォームが実施され、打ち上げの度に厳しい点検・検査も行われているはずです。
しかし、NASAの予算削減を主因とする声もあります。事実であれば、点検や検査が十分でなかった可能性もあります。機体の再利用ができる安上がりなプロジェクトとはいえ、機体使い捨てと比較しての話です。本来であれば、数十度の打ち上げを繰り返し、機体への影響等の分析も必要なところですが、その予算もありません。計画当初とは違って、打ち上げの意義が薄れていることも理由のようです。
NASAは、シャトルを利用した実験を繰り返しました。様々な新素材や新薬の試験、そのための機材等の開発。これらが軍事用や民生用に転用された結果、一般産業への波及効果が多く得られました。それでも、打ち上げコストに見合う水準に程遠いと言われます。米国が独占することによる国益はあっても、人命に関わる事件を起こすようでは、国民の理解が得られないようです。
そもそも今のNASA方式が限界という意見もあります。その技術や情報が流出することにより、第三国の軍事技術等に悪用されることを懸念し、技術の開示を渋ってきました。世界中の優秀な技術者を集めながら、その技術を囲い込む姿勢は、世界に冠たる米国に相応しくない姿です。NASAの技術を自由に使えるなら、日本のNASDAの失敗の相当量はカバーできるはずです。日本の民間が取り組む衛星計画も、大きく進展するでしょう。その結果がフィードバックされれば、NASAも労せず情報を集めることができるはずです。
独占からは、何も生まれません、ブラックボックスであることは、技術の高さや安全性を保証しません。コンピュータのオペレーティングシステムがそうであるように、全ての情報が公開され、誰でも改良や改善を実現し、あるいは提案できる環境が必要でしょう。「オープリソース&オープンアーキテクチャ」こそが、宇宙研究開発にも必要なのだと思います。多くの技術・人・カネを持ち寄ることで、技術は著しく進展するでしょうし、技術者の見込み違いや過信によるミスを減少させる効果も生むでしょう。
NASAは、過去に新型シャトルの建造を断念しています。今後もシャトル計画を継続するとなると、耐用年数の問題もあるため、同型機の新造という話になるでしょう。しかし、その予算は無いはずです。さらには、これ以上の失敗は、勿論許されません。ロボット技術が向上した昨今では、有人宇宙船そのものが無用になりつつあります。本当にNASA単独で計画を続けるのか、検証が必要でしょう。
すでに、宇宙開発の新しいステップとして、有人宇宙ステーション計画が進行中です。NASAが足踏みになれば、パートナーのロシアに期待が集まります。しかし何かとロシアに先を越されてきた宇宙競争・・・米国が無理を言わないことを祈ります。新しいステップに踏み出さないことには、新しい成果は得られません。シャトル計画は、繰り返し利用できることが、新しい挑戦を躊躇わせる結果を生んだとも言えます。
さて、これから米国の宇宙開発が遅れるとして、引き続き閉鎖的な研究が続くとすると、誰もが自由に宇宙へ出掛けられる新時代は、益々遠のいた気がします。今回の不幸な事故を忘れず、犠牲者たちの崇高な使命を糧として、より前向きで建設的なシャトル計画が推進されることを願っています。そして、どうか大国のエゴを振り回すことなく、世界中の技術者の協力を得て、夢の宇宙旅行の実現を・・近年に達成して欲しいものです。
キーワードは、「オープリソース&オープンアーキテクチャ」です。
03.02.02
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