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政治の研究No.171
消費税率アップ の 現実度

 消費税率アップの議論が、再燃しています。橋本内閣において、わずか2%アップさせただけで景気低迷を招きました。その反省も踏まえずに、またも議論先行です。検討中だけでも景気低迷に直結するというのに、政治家の安易な発言が目立ちます。財界からも10%だ、16%だ、と元気な声が出ていましたが、今では沈静化。中小企業の会員から、激しい突き上げがあったことが理由とも言われます。小泉首相は、在任中のアップは否定。財務省も、静観の構え。

 消費税アップの議論があるとき、必ず持ち出されるのが「直間比率の是正」です。日本の間接税は安すぎるという論ですが、間接税を引き上げるのでなく、直接税を引き下げることでバランスするという議論は出ません。日本は、家計における「税負担に対する恩恵」が少ないと言われます。
 確かに、消費税は5%に過ぎないです。しかし、ガソリン税、酒税、タバコ税など他の間接税(中には二重課税もある)があり、結構な負担。将来のために積み立てたはずの年金は、消費税アップを実現しないと支給不能の畏れ、とは笑わせます。今の超低金利政策による、生保リスクも預金リスクも、一種の税金です。株式や不動産の価値低迷による資産目減りも、ある種の税金です。
 さらに、世界で一番に高い、国内物価。とくに東京の物価は殺人的で、不動産は割安になり、世界トップを抜かれても未だ高水準です。そして、あらゆる商品の物価が割高で罷り通っています。高度成長期においては多少の物価高も仕方がありませんが・・デフレの叫ばれる現状でも是正される様子が見られません。東京への一極集中もあることながら、東京を始めとする大都市部の税金が、大都市部のために使われていないことが原因でしょう。さらに消費税を引き上げても、一大消費地の大都市部のために使わなければ、悪化するばかりです。

 直接税の引き下げも、片手落ちな議論ばかりです。証券税制改革のドタバタで決まったキャピタルゲイン課税の実質引き下げ、贈与税の軽減など、金持ち優遇ばかりです。その減税の原資が無いので、消費税で代替しようという姿勢が見え見えです。また、今の財政難は不況の影響ばかりでもありません。ハコモノ、ヒモつきODA、肥大化した特殊法人、ゼネコンや大銀行救済など、企業や銀行のために費やされた税金であり、その穴埋めを法人税でなく消費税で埋めるのは、勘定が合いません。
 自民党は、企業献金の厳格な運用を緩めることを条件に、財界の支援を受けようとしました。これも変な話で、目的もなく企業献金がされることは無いので、将来の「消費税の山分けに加わりたければ、献金しろ」という乱暴なものです。さすがに財界からも反発を受けたようですが、厚顔ですね。長引く超低金利政策で、企業年金が立ち行かなくなっています。これも負担だから返上したい、という声が大きく・・結果的に国費負担になりそうです。ツケは、全て国民に。。。

 つまるところ、政府・自民党が税金に対する考えを改めない限り、消費税の引き上げは時間の問題です。「まずは、財政改革が優先だ」と発言する政治家もありますが、ごく一部の声。国民の多くが望んでいない「大きすぎる政府」を運営してきたことが原因なのですから、これを機会に「小さな政府」に変わって欲しいです。大企業や大銀行だから潰せないというのは、真っ赤なウソ。「小さな政府」である方が、日本経済は正常に機能すると思うのですが。
 個人向け国債の販売は、予想以上に好調だったようです。これで国債発行のし放題と考えるのは、早計です。自ら誘導している超低金利政策が崩れれば、国債は大暴落します。そのとき、どこの資金で財政出動するつもりなのでしょうか。経済混乱期に消費税率アップは・・不可能です。

 この2・3年間に「消費税率アップ」が実施される可能性は高く、その機会を逃すと当分実施できない、というのがポン太の予想です。

03.02.02
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